第85話 この異世界はとてもつまらない世界だったので…。
総力をあげて潰す事にした。
統括神01、2台目技術神、知識神からは、全世界共限定解除通医師免許というものを受け取り、見た目ステンレス製に見える結界を解いてもらった。
まだ、患者を治してないのに、それでいいのか?
神々よ…。
まぁ、治すけどさ。
俺の好きなように
ハッハッハ!
患者共々全員が、とある岩山の平坦な空き地に放置されているのは、イマイチ納得がいかないんだが…。
そして、いつもなら必ず俺の横に控えているはずのイノリは、姿を見せただけで、前線に立とうとはしていなかった。
いつもなら、俺の横がイノリの立ち位置なのに…だ。
その理由とは、イノリが何故か身重になっていたためだ。
(何があった??)
陣痛ならぬ、腹痛を訴えているように見える。
(ぬ!誰かとやったのか!!)
というのは、もちろん俺の勘違い。
そう、子供を身籠ったわけではないのだ。
いろいろあって…いや、何も気にしていなかったせいで忘れていたのだが、イノリの体には、今、魔石がお腹いっぱいに詰まっているのだ。
忘れていたとはいえ、俺がそのように改造したのだから、妊婦風に見えるのは致し方ない。
イノリには、忘れていたとは口が裂けても言えないので、見て見ぬふりをする。
魔石の排出に関しても、設定していないなんて絶対に知られてはならない。
新たに設定したとしても、おそらく、R指定になりそうなので、魔石の排出には関わりあわないように、しばらく放っておこう。
それよりもだ。
問題は、この世界には魔力がないという事だ。
つまり、地球と同じ大気成分なのだと推測できるのだ。
だが!
異世界に魔力がないのは、個人的にはとてもつまらない。
何故なら、魔力がなければ、地球と同じ科学の世界という事になる。
こんなつまらない異世界も珍しい。
いや、他は知らんけど…。
地球と違うところといえば、大陸はあれど国境は存在せず、機械兵士を中心としたミリタリー全開の兵器満載国家と、機械で体をいじりまくった、それこそすべてにおいて科学を駆使し、食料も科学頼り、さらに兵器大国に対抗するため、結界に守られた一見平和な人工国家の両国のみ。
ひっじょーに つ•ま•ら•ん!!
☆☆☆
とりあえずの目標は、この世界に魔力を供給する事。
異世界本来の魔法ありきな世界にする事だ。
それにより、科学+魔法の世界が完成する。
その為に、あえて閻魔を顕現させたのだ。
心臓発作を蘇生させるのは、俺にとっては大した問題ではないのに、わざわざ霊魂を霊と魂に切り分け、閻魔の仕事とする。
我ながら良い方法である。
なんせ、地獄を通して、北半球にある俺の魔力を、この世界に撒き散ら…コホン…供給できるのだ。
しかし、住人に魔法適正がなければ魔法は使えない。
地球に魔力があっても、その活用方法がわからなければ、宝の持ち腐れとなる。
ソレに気付き、魔法を行使できるとするなら、魔法陣を駆使する魔術師。
と、地球に稀な特異体質の、いわゆるESP能力者。
まぁ、もれなく悪いことに使うのだろうが…。
ま、異世界に来た俺には、あまり関係のない話だ。
以前に出てきた地球神、絶対神という、なんとも不愉快な名前の神の存在。
地球とのリンクが切れているのも、そいつらの仕業と考えていいだろう。
しかし、今は目の前の問題に集中する事が妥当だろう。
まず、この世界の連中に、俺たちの力を見せつけて、戦意を喪失させる必要がある。
片方は武力で、片方は科学力で、それぞれがこの世界を統一する気でいる。
実に面倒である。
こちらに有利なのは、地獄から漏れてきている魔力、それぞれの体内に循環している魔力…で、イノリの体内にある魔石…だ。
「さて、まずはイノリの体内にある魔石の排出方法だな」
『どうするんだっち?』
おいおい…チーコ!
語尾がおかしくなっているぞ?
『やり方がわからないにゃ』
『マスター…もとい、ドクターに任せれば大丈夫だコン』
『私に考えがありますよ』
まてまて!
レイコ以外の語尾もおかしく…ん?
「レイコ、その考えとは?」
「ゴニョゴニョ…」
「え?それ、俺に危害がこない?」
「それはなんとも…」
まてまてまてまて!
レイコの案は有効だが、俺自身に危険が伴うのは勘弁してほしいんだが?
☆☆☆
レイコの案、それは…。
魔石を凍らせ、再び溶かして気化させる。
イノリの体は、たとえ凍らせたところで特に問題はない。
身体全体がナノレベルからなる精密な人工細胞でできているからだ。
まぁ、俺自身も大して変わらないレベルの改造を施しているからだ。
この世界に生きる科学文明人間…ナノレベルとはいえ、体内に機械を埋め込んでいるような稚拙な技術とは次元が違う。
だが、体内の魔石を気化させる事は可能であっても、もちろん弊害はある。
人間の体内に蓄積された気体は、あらゆる形で体外に排出されるのだ。
口、鼻、耳…あとは下半身の前後。
イノリのお腹に蓄積されている気化させた魔石が排出されるとしたら…ゴクリ。
これはヤバい。
魔石を取り出さなければ身動きが取れない。
かと言って、ソレを実行しようとしたら、いくら俺でもイノリに何をされるかわからない。
「とりあえず、この世界を俺の魔力で満たしてみるか…何か変化があるかもしれないしな」
そこで、俺は自身の体内からと、地獄経由で供給される魔力を大気に撒き散らし、魔力の満ちた世界にしてみる。
だが、魔力があっても、魔術師の魔法陣、魔法使いの魔力行使ができない世界では、何の役にも立たない。
(魔法や魔法陣を教えるか…)
いや、俺を含め、魔術を使えるものはいない。
いちいち魔法陣を描かなければ発動しないような力は必要ないのだ。
発動時、自然に発現する魔法陣を解析できる奴がいれば話は変わってくるが…。
そんな俺の心配をよそに、レイコがすでに行動を起こしていた。
ブゥゥーー!!
「あちゃー!」
天空に鳴り響くようなおならのような音…。
正確には、お尻からの空気ではないのでおならではないのだが…。
バビュゥゥーーン!!
ほら来た!
速攻来た。
「ドクタァァーーー!!」
顔を真っ赤にしたイノリが、般若のような様相で俺に向かってくる。
レイコは、どこかに雲隠れ…。
見た目はおしとやかな貴婦人系だと思っていたが、やはり寡黙な女には裏の顔がある。
(配下の失態は上司の失態…)
と、イノリの怒りを真っ向から受ける覚悟をし、土下座で叫んだ。
「ごめんなさい!!」
イノリはパートナー。
配下ではないのだ。
土下座で謝ったところで許されるはずもなく、俺はたんこぶを10個ほど貰うハメになってしまったのであった。
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