第79話 ドクターのいやらしい罠【side 対転生者 2】
スッ…。
スッ…。
(ん?)
何やら違和感が…何でしょう?
スッ…スッ…スッ…。
「おい、どうして敵側の転生者が減っておるのじゃ?」
真っ先に、その違和感に気づいたのは、精霊女王様。
さすが、魔法のエキスパートです。
確かに!
ここに来た時に、拘束されていた敵側の人数が、やたらと少なく見えたのは、拘束されてまとめられていた為の見間違いではなく、やはり3万人という大規模な人数には見えませんでした。
(うんうん…そういう事だったんですね…)
「あー、俺に敵意を向けたやつは、自動的に地獄へ送ってる」
「「「「なんで?!」」」」
驚いたのは、1人や2人ではありません。
(ドクターに敵意を持ったら地獄行きって…)
「まぁ、神族領の大陸に住むやつらは、全員、転生、転移ごっこをしてる奴らだから、最終的に全員、輪廻に返すんだけど、とりあえず、俺に敵意を向けた奴らは優先的に…な」
意味がわかりません!
ドクター曰く、エセ転生、転移者の輪廻返しは、原神達からの依頼でもあるようです。
原神達からしたら、本来、異世界に転生させる予定のない者、転移させる予定のない者は、地球で輪廻転生が行われ、該当者は、正規の手順で転生、転移をさせなければいけない…との事。
いわば、支配神の治める神族領は、本来、ないはずの大陸であり、正規の手順で転生させるはずの者も含めて、横から掠め取られ続けた状態なのが、今の大陸を形成しているらしいのです。
そんなドクターの説明に、誰も信じる者がいるはずもなく…。
そりゃそうでしょ?
ポーション系の飲み物で、細胞に移植手術をしてしまうドクターです。
被害者の精霊女王様以下、側近精霊、獣王様達…ドクターの側近であるヨーコ達、そして、私。
みんなの胸の内は、ドクターに対する疑心暗鬼しかありません。
気を抜いたらやられる!的な空気が溢れています。
おそらく、すでにドクターと敵対しようなんて人達は、この中にいないでしょう。
『こらこら、何を自由にやっておる!お前は本来、こちら側で管理する立場にあるのだぞ?』
「え?管理なんかしねーよ!お前らだけでやれよ」
『ばかもん!そんな事できるものか!貴様は原神2人を取り込んだ人間なのだぞ?』
「あー!それは忘れてくれ!俺は管理には向いていない…というか、やりたくねー!」
『お前がいなくては世界が成り立たん!』
「そんなもん、原神を無限牢獄に封印した奴らに言えよ!好きで原神を取り込んだわけじゃねーよ!」
ちょ!ちょっと待って!
今の会話、誰としてんの?
原神って、いわゆる本物の神様だよね?
タメ口でいいの?
私の頭に、こちらに来てすぐの光景が浮かびます。
「この流れって…まさか…」
「用があるなら、お前らがこっちに来いよ」
やっぱり!
ドクター、原神様を呼びつけている!!
怖いわ…この人…。
☆☆☆
しばらくして、神ゲートと呼ばれる、現世と天界を繋げる空間の穴から、ゾロゾロと威厳たっぷりの神様達が出てきました。
「よっ!おつかれ!」
『『『『『…………』』』』』
「「「「……………」」」」
出てきた原神様達も、ここにいる者達も、言葉が出ません。
その中で、ひとりキリッとした佇まいの、いわゆるエリートメガネと呼ばれる類の人?神様?
まぁ、そんな人が大量の書類を持って1番後ろに付き従っています。
ドサッ。
エリートメガネは、無造作に書類を地面に落としました。
『これが、邪神、死神を取り込んだお前の役割であり、処理しなければいけない事案だ』
こう説明したのは、原神様達の中でも、最高位に位置する
「わかったよ…今すぐ処理する」
ドクターは、ものすごく面倒くさそうに了承しました。
(流石に反論はしないのね?)
「まずは邪神か…」
サクッ…ドバァー!
右手首を切り裂き、大量の血を噴射させるドクター。
「な、何をしておるのじゃ?!」
「まぁまぁ…」
好奇心旺盛で、口が回る精霊女王様が、真っ先にツッコミを入れましたが、意に介さないドクター。
原神様達は、あえて何も口を出しません。
「次は死神っと…」
サクッ…ドバァーー!!
今度は左手首…さっきより出血の量が半端じゃありません。
「まぁ、こんなもんか…」
チクチクチクチク…。
で、自分で切り裂いた手首を、自分で縫合するドクター。
「さぁ、姿を現せ!俺の右腕と左腕よ!」
その言葉に反応し、流れ出した血液から、ドクターそっくりの分身体が姿を現しました。
「お前ら、これからは、邪神代行と死神代行な」
「「俺達に選択肢はないんだよな?」」
「当然!これからは、ドクター邪神、ドクター死神と名乗るといい。邪神成分、死神成分を圧縮して、血液中に入れてあるから、精度は落ちても、仕事はこなせるはずだ」
「「本体のお前は何もしないのな」」
「バカを言うな!これから宴会をするんだよ!さぁ、行った行った!」
スッ…スッ…。
ドクターは、ドクター死神に、死神のカマから作ったメスを一振り渡し、ドクター邪神には、怪我人が出たら閻魔を通じて連絡をよこせ…とだけ伝えて、地獄送りにしました。
『お前、まさか、実務は部下に丸投げか?』
天王神様!もっともな意見です!
「部下じゃねーよ!俺の分身だ!俺には違いない!」
『じゃが、本体はお前だろ?』
「だから、支障のない範囲で邪神や死神の権利をあたえたんじゃないか…何か問題でも?」
問題ありありでしょ?!
とは、誰も口にしません。
(あ、これ、みんな諦めたっぽい)
ドクターの思考やみんなの思考が、ある程度わかるのは、実は私だけだったりするのです。
これも、原神様の加護持ちの効果でしょうか?
☆☆☆
こうして、ドクターが神様としてやらなければいけない仕事は、分身に丸投げという形で解決(?)する運びとなりました。
それから、敵対する転生、転移者を拘束して、今に至ります。
当然、私は過去の出来事を見られる空間から放り出され、みんなと合流することになったのですが…。
ここで、またまた違和感が…。
ドクターが、みんなにお酒の酌をしているのです。
何種類もある酒瓶を、その人達に合わせて、個別に飲ませています。
(嫌な予感しかしない…)
ドクターの情報は、鑑定では見抜けません。
レベル、称号、ステータス、スキル
すべてが ♾️ と表示されるからです。
以前、ドクターから聞いた話によると、この世界の最上級レベルやステータスを限界突破すると、E r(エラー)となり、数値化されないという話を聞きました。
『それ、ドクターが勝手にステータス画面に手を加えたからなんだけどね』
(おい!あんたの仕業だったんかい!)
『そもそも、普通の人間にも限界突破はあるけど、数値は我々で設定してあったんだから…』
と、諦めムードで話すのは天王神様の奥様、
原神様達の紹介は、また改めてしましょう。
何故なら、ドクターがとんでもない事を叫んだからです。
「やったー!これで若返りの不老不死者!大量ゲット!」
『『『『は?!』』』』
「「「「「え?」」」」」
ドクターは、知らないうちに、何やらやらかしたようであります。
ほんと、異世界にきてから、ドクターのやらかししか見てない気がするのは、気のせいでしょうか?
一言言わせて下さい!
あんた!元々外科医でしょーがっ!
異世界に来て遊んでんじゃないわよ!!
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