第75話 ドクターの仕事と私達のお私事。

自分の懐を痛めずに、すべての人を掻っ攫ったドクター。

いつもながら、やる事がエゲツないです。


「さぁ!、とりあえず、精霊族領に戻っていろ!俺は仕事だ!」


仕事?

もしかして、さっきの買い付け(?)も、仕事のうち??


「さっきの奴隷は?奴隷商は?買い付け人は?」

「あー!奴隷は魔の森、あとは一部をのぞいて精霊族領に転送した!」


全員、殺すとかの話は、頭が冷めてしまった時点でなかった事になった模様。


『とりあえず、ここは任せて行こう…精霊族領へ』

「わかった…って、精霊族領で何すんの?…」


私達は、奴隷市場が一切合致なくなっただだっ広い土地から、ドクターだけを残して精霊族領に転移しました。


シュン!!


(一応、監視のために、体の一部を残していきましょうかね…)


ドクターの幼馴染と融合した事で、体内の細胞は自我を失っていますが、何かの役にはたつとおもうんです。


「さてと、まずはギルドからの依頼、大陸に侵入した奴隷商に化けた神族領のスパイと、奴隷に化けたモンスターは排除した…あとは、Sランク冒険者の鼻っ柱を折る…か。ずいぶんとめんどくさい依頼なんだが、仕方がない」


あらあら、ドクター、真面目に仕事する気なのね…。


つか、え?

魔の森に転送した奴隷商と奴隷は…スパイに魔物??

通りで、奴隷全員が全裸だったわけです。


で?スパイとは?

こちらの動向を探るための変装?


ま、全員、魔の森に飛ばされたんだから、よほど運が良くなければ、生き残る事はできないでしょうけどね☆


「と、皇帝からの依頼で、この大地を分断せよ…か」


現在の皇帝は、王妃。

王妃曰く、他の国からの侵略を食い止めるために、大陸を分断しているとか…。


支配神が収める土地は、地続きになっていれば、その支配下にできてしまうチート能力。


神を名乗っている割には、転生特典のチート能力である可能性が高い。


何故なら、この世界には、神が多すぎる。

とても不自然なぐらいに。


優秀な転生者に、神の称号を与えて、支配しようとしているのではないかと疑ってしまう。


『とりあえず、奴隷商と魔物を元にもどさないか?』

幼馴染君の言い分も正論ではある。


奴隷が真っ裸だったのも頷ける。

魔族ならいざ知らず、魔物は衣服を着用しないのだから。


「ん?」

気づくと、足元に『身バレ薬』と書かれた瓶が大量に置いてある。


何故に?


☆☆☆


『あー、その奴隷の檻は、そのままにしておいてくれ』

『身バレ薬は、ぶっかけたら、どんな幻術魔法も変装も、強制的に解除させる事ができる薬だ』

『お前らは、精霊領から魔の森の、元魔王城に行ってくれ』


と、いきなり念話が複数頭の中に流れこんできます。


「誰?」

『後で嫌でもわかる…気にするな』


(この物言い、ドクターにそっくりなんだよなぁ…)

とか思いながら、奴隷商だと言うスパイに、身バレ薬を振り撒く私。


シュゥゥゥ。。


あら、不思議!

言われた通りにしたら、盗賊らしき人間に変化しましたよ…驚きです。


と同時に、スパイというイメージが崩れ去ってしまいました。


全国のスパイファンに謝れ!!


精霊女王曰く、サクラと呼ばれる類の奴隷商が、数人混じっていたとの事。

これは、私達が魔の森に移動する前に話してくれた内容です。


つまり、奴隷も奴隷商も罠!

こちらの大陸に潜入しようとした刺客だと思っていいでしょう。


そうこうしているうちに、奴隷に変化した魔物の檻は消え去り、奴隷商に化けた盗賊まがいの輩は、魔の森を逃げ回っています。


まぁ、この森の魔物は、異様な進化を遂げて、通常の魔物とは格段に別物になっているのです。


ギャァァァァー!

とか

たすけてくれぇー!

とか、ありきたりな叫び声はしますが、ま、放っておいても問題ないでしょう。


私達の問題は、謎の声に従って、元魔王城に行く事。

何か、余計なミッションが課せられた感はいなめませんが、ドクターからの依頼をこなした私達には、他にやる事もないので、素直に指示に従う事にしました。


目指すは、元魔王城!

とか言ってますが、当初の魔王城があった場所が見つかりません。


ドクターが以前言っていた、魔の森は進化している…という事と何か関係があるのでしょうか…。


魔物だらけの森で、魔王城の探索??


なんでこないな事にまきこまれてんの?

私達…。


☆☆☆


一方、ドクターは…というと、広い草原に現れた、謎の集団と相対していました。


まるでどこかの合戦場みたいになっています。


ドクターと相対するは、召喚術師、陰陽師、精霊術師など、ドクターが掌握した事により、術が使えなくなった者達。


まぁ、元々、これらの輩には、恨みを買うであろう事は、常々予期はしていたらしい事は言っていましたが…。


召喚術師は、使い魔がいなければ雑魚にすぎません。

精霊術師は、精霊の加護なしでは、精霊を呼び出せません。


問題は、ドクターも危惧していた陰陽師。


陰陽師は、召喚術以外にも、式神を使って魔法に匹敵する攻撃魔法?攻撃術を発動する事ができるのです。


はてさて、この勝負、どちらに軍配があがるのでしょうか?


と、何故、私がそれら術者を見分けられるか…。


簡単です。

各術者の先頭にいる女の子が、チアリーダー風な装いで、術者の名前が入ったプレートを持って、何かの開会式みたく、きっちりと並んでいるからです。


これ、何の団体??

ってなります。


「なぁなぁ、お前らと遊んでる暇はないんだよ…こちらにはこちらの事情があり、あんまり時間が取れないんだ」


とか、余裕をぶっこいて語ってますが、ドクターVSざっくりと見た感じ3万人の軍勢。


でも、気持ちはわかる!


見た目、何かのイベントが始まるような、ゆるい空気を纏っているからねっ!


しかし、人数が人数…。

ドクターは、かなり余裕ですが、どうやって攻略するのでしょう。


「あー、陰陽師、召喚術師には、特別に、召喚能力を返してやろう…精霊術師には、精霊の加護を戻してやろう」


「「「ごくり…」」」


「何か罠でも仕掛けているのか?」

「いやいや、罠はない…が、気合いを入れないと、死ぬって事だけはわすれないでくれ!仮にも、君達は、国土侵犯の犯罪者なんだから…」

「………」


ドクターは、その瞬間、ニヤリと笑い、敵を睨みつけました。


あ、これ、ドクターは、何かやるつもりだ…。


私達は、魔王城探索を一旦中断し、ドクターの言動を見守る事にしました。


ドクターの事です。

間違いなく、良からぬことを考えているに違いありません。


これは心配ではありません。


ある意味、期待です!

ドクター単独の戦闘は、滅多に見られるもねではないからです。


はてさて、ドクターがまともな戦闘をするとは思えませんが、見る価値はありそうです。


なんせ、ドクターの仕事は、大陸を分断して、侵入者を排除する事なんですからっ!


あー!ワクワク感が止まらない!

楽しみぃー!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る