第13話

ダリアとソフィーは 何が何だかわからなくなっていた。


あの小さくてか弱そうなアサミが一瞬のうちに移動してえげつない攻撃で痴漢を瞬殺したからだ。


しかも被害者の女性を自分の前にいつのまにか保護させている?なんかの手品か?


あの子には色々秘密があるのかもしれない。


(まぁ いいさ アサミはアサミだ。しゃべりたくなったら言うだろう。それまで待てばいいさ)


と ソフィーを見ると うん と 頷く。


(フ ソフィーもわかっているようだな。アサミの友達になるなら アサミの事考えてやらないとな)




ちょっとよろけた感じでアサミがこちらに近づいてくる。




「アサミっ!今のは何ですの!?一瞬で違う場所に移動していたようですが?教えてくださいますよね!」




(おいいいいい! 何さらっと聞いてるんだ!秘密かもしれないだろう!さっきの頷きは何だったんだ!)




ソフィーのいきなりの質問に ダリアは 『マジかよ こいつ!?』みたいな顔で焦っている。




「空間魔法の【転移】ですけど?」




と 私達の周りを ピュンピュン 魔法を使って出たり消えたりしている。




(秘密じゃないんかい!)


いつも ソフィーは他の冒険者にヅケヅケ色々いうのでたまに怒らせていた。


なので注意していたのだが アサミ本人は気にしてないようだ。




「転移ですって?!使える人はほぼいないとまで言われてますのよ!私も図書館で知ってるくらいですわ。」




『アサちゃん なんか伝説級魔法みたいな言い方だよぅ しゃべっちゃってよかったのかぃ?』


(もう 開き直る事にした。それ特化ってことにしとけば 他のやばいスキルは隠せそうじゃない?)


『ああ そういえばさっきレベル上がったって言ってたね。何か新しいスキルでも覚えたのかい?』


(完全隠蔽と空間魔法の影縛り だね。 説明見る限り 自分のステータスを完全に隠せるみたい。


私の勇者の称号とか異世界買い物とか色々ヤバイと思うんだよね。そこも隠せるとなると必須だね。


影縛りは 目にした空間の中にいる対象の足を止めさせる事が出来るみたいだね。遠距離からモンスターを倒せたり 犯人確保とか便利そう。)


『アサちゃん これから冒険者登録するわけだけど こんなタイミングで覚えるとか なんか


 ご都合主義ってやつじゃないかぃ・・・?』


(ばあちゃんも思った・・?なんか 私 ほんとにやばくない・・・?加護働きすぎのような・・・)


『とりあえず 嬢ちゃん達が待ってるから 後で相談しようねぇ。』


(了解。)




「アサミ 大丈夫なのか?そんなにホイホイ使って 大変なことだぞ 秘密じゃないのか?」


「そうですわよ!そんな伝説級魔法を空気を吸うように使えるなんてあなた ほんと何者ですの?!」




アサミも そこまで驚かなくても・・ とちょっと冷や汗が出る。


『アサちゃん 二人は心配してくれてるのかもねぇ。厄介ごとに巻き込まれてしまうんじゃないかと思ってるみたいよぉ』


「あはは まぁたまたま生まれ持ってただけですよ。それとも気持ち悪いってもう関わりあいたくないですか?」




その言葉を聞き 二人は頭がカッとなる。


「アサミはアサミだ!どんなスキルを使おうとそんな事思ったりするはずないだろう!」


「そうですわ!人には秘密もあります!そんな事で見限るような人だとお思いですか!?」




(ああ 心配して損した。この人たちならだいじょうぶ・・)




「あはは 私の国の方ではそこまでレア魔法じゃないんですけどねぇ。お二人が受け入れてくれてうれしいです。」




「転移が珍しくないなんて 世界は広いんですのね。アサミ この大陸では珍しい事なんですのよ。それも伝説になるくらい あなたを誘拐して人攫いの道具にしようと近づいてくる人もいるかもしれません。そういう人には近づいちゃいけませんわよ!あなたは私のお友達なんですから!」


「まぁそうだな 厄介な連中もいることだろう。いっそ国に保護してもらうとかどうだ?」


「それこそダメですわ!転移なんてレアスキル 使いようによっては国を亡ぼすこともできそうですもの。」


「そこまでの事なのか?ただ移動することが出来るだけだろう?」


「考えてもごらんなさい?転移を使って要人を誘拐したり 相手の前に大量の仲間を送り付けたり 国中に爆発の魔道具を転移でバラまいたり出来ると思えばどうします?


国が手放すはずがありません。飼い殺しですわ。」




その具体的な使い方でアサミは思った以上に厄介な魔法かもしれないと考えを改めなおす。




(まぁ 便利に旅行できるかな?位にしか考えてなかった。ちょっと反省かな。)


『まぁ アサちゃんは危ない使い方はしないってばあちゃん知ってるからね!ダメな時はばあちゃんちゃんというからね!』


(うん ありがとう ばあちゃん)




「そこまでとは考えてませんでした。まぁ捕まっても転移で戻ってくるだけなんですけどねえ。」




「アサミ!甘いですわ!犯罪者用に魔封じの首輪とかあるんですのよ!もうちょっと緊張感をもちなさい。」


「そうだぞ!私達の前で何かあればすぐに行動できるが いないとこで巻き込まれたら心配だ!」




(ああ この人たちは本当に私の事を思って言ってくれてる。うれしい。)


『いい子達だねぇ。アサちゃんよかったね』




アサミは二人の事を考えるとほわっとした気持ちになるのだった。


 

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