シビトノトモシビ
はじかみ あおい
第0話 二人の旅路
「さて、そろそろ寝るか」
立ち上がり焚火を処理した後、洞穴の突き当りに用意していた寝床へと向かう。
雨風を凌げる場所で一晩過ごせるのは運が良かったなと思い返す。
「ちょっと!火を消すなら先に言ってよね!」
一緒に旅をしているユカリのやつが、またなんか言うておられる。
「いいからもう寝るぞ」
「なにそよれ、ちょっとはこっちのことも考えなさいよ…」
別にいいだろうそれくらい。
そもそもお前は火なんて自分でどうとでもなるだろうに…。
「俺はお前と違って休む必要がるんだ。もうゆっくり寝かせてくれ」
「…ふん。不便な体ね」
そう言ってユカリは手元に小さな明かりを点けながら、洞穴の入り口へと向かい始めた。
俺が寝ている間は、彼女が外で見張りなどをするのがいつもの習慣だ。
なんだかんだ言いつつも、無防備な時間を護衛してくれるのは非常に助かっているのだが、如何せん性格がアレなせいでいつも悩まされる。
もっとおしとやかで可憐な性格なら楽しい旅になったんだろうなぁ…なんてことを考えつつ、俺は旅の疲れを癒すべく深く眠りに入ったのだった。
彼女の名は『ユカリ』。
苗字は本人も知らないようで、とにかくユカリと呼んでくれればいいとだけ言われている。
歳や家族構成などについても謎に包まれており、今の俺がわかるのは赤みがかった少し長い髪に、そこそこ整った目鼻立ちをした脳筋少女であるということ。
見た目だけなら15、6くらいの美少女と言えなくもないのだが、彼女の中身を知れば知るほど『脳筋少女』という言葉がしっくり来る。
ユカリとは、こちらの世界へ来た時に出会い、まぁいろいろとあって一緒に旅をしているのだが、頼りになる反面かなり振り回されることも少なくない…。
それでも俺は目的のためにも、ユカリや誰の力だって借りるつもりだし、どんな困難でも乗り越えると決めたんだ。
―――絶対にこの世界から生きて帰るために―――
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