第47話 ゴーゴン(蛇じゃない方)

 そのあと野外にではあるが『竈(かまど)』も作り、一応の生活基盤を完成させたので今度は本格的な拠点を定めるべく近辺の探索をする俺とナターリエ嬢。

 もちろん荒野でデートなどではなくただの護衛なので念のため。

 てかマップの不確定領域(黒い所)が削られてゆく作業ってどうしてこんなに楽しいんだろうか?

 荒れ地ってくらいだから植物関連はそれほど多くないんだけど岩山と言うか岩肌?はいっぱいあるからそこに露呈してる鉱物が大量にあって実にありがたい。


 鉱物資源のある場所、普通の人が見てもただの岩山にしか見えないんだけどね?

 なので俺及び『コロニーの住民』が掘らないと資源の採掘も出来ないという・・・今のところ『住民1(俺だけ)』だからなぁ。

『知識』ポイントの追加のためにもここにちゃんとしたお家が出来たらリアちゃんを誘ってみるか。

 近辺をもっと全体的に、遠くまで見渡すために結構な苦労をしながら近くの岩山を登っていく俺とナターリエ嬢。


 もちろんロッククライミング的な登り方じゃなくてキツめの傾斜の場所を徒歩で登ってるだけだからね?

 小一時間かかって山頂に近い所――とはいっても標高で四、五百メートルくらいなんだけど――から見渡した景色はちょっとした西部開拓時代のアメリカ。

 歪な岩山に囲まれた凸凹した地面を吹く風が砂煙を舞いあげて、丸いコロコロしたヤツ(枯れ草の塊でタンブルウィードって言うんだぜ?)が転がってそうな、いかにもって感じの荒れ地だな。


 あ、昨日掘ったお家の反対方面に数十頭で固まって草食ってるヤツ、ここからでも頭の上に曲がった角が見えるしあれが『大牛』かな?

 てか想像してた牛、バッファローと違うんだけど?角がでかいんだけど?何なの?あいつ、石化能力とか無いよね?

 特殊能力がなかったとしても、その角だけでもちょっと攻撃力と言うか殺意が高すぎではないだろうか?


 ・・・牛、食いてぇなぁ。

 もちろん日本に居た時もバッファロー肉なんて食べたことないんだけどどんな味なんだろう?いや、そもそも食えるんだよね?


「ナターリエさん、あそこに見えるのって大牛ですよね?」

「うん?ああ、大牛だな。私も何度か討伐に出向いたことがあるが、なかなかに危険なヤツだぞ?」

「討伐・・・まさかの魔物扱い・・・やはり牛の方のゴーゴン・・・ちなみに食べたことってあります?」

「もちろん討伐したからには食べるに決まっているだろうが。そもそもこの近辺で食べられている肉はアレを飼いならして家畜にしたものだからな?ヒカルが子爵様の屋敷でチーズを作った乳も大牛の乳だぞ?」


 あ、そうだったんだ?生乳のままだとちょっと怖かったから直接は飲まなかったけど特に臭みとかなさそうだったしお肉も行けそうだな。


「ちょっとひとっ走りして狩ってきてもらえませんかね?」

「一人で大牛の群れに突っ込んで行けとか死ねと同意語だからな!?」

「えー・・・そんなにいい体してるのにたかだか牛に負けるんですか?」

「お、お前、女性に向かって良い身体をしてるとか色っぽいとか言うんじゃない!!ここからだとわからないが成体だと体高が二メートルを超えるからな?普段は大人しいが仲間を攻撃されると群れで反撃してくるし」

「何それ怖い。俺の知ってる草食動物じゃねぇ・・・確かにそれは狩りじゃなく討伐ですね・・・」


 大牛の『大』は伊達じゃなかったらしい。

 そして色っぽいなどとは言っても思ってもいない。

 んー・・・牛は食べたいけど今は住む所、というか建物を建てる場所の選定中なので名残惜しいが一旦放置。

 女騎士様に突撃を拒否されたので仕方がないのだ。


「このあたりって天候とかはどうなんです?雨はお屋敷でお世話になってる時に一度しか降ってませんでしたけど」

「そうだな、あたりを見ればわかるように雨はそれほど多くないな。かといってまったく降らないわけでもないのだけどな?何にしてもこの回りは土地の水はけが良すぎるから農業にはあまり向いていないのだが・・・お前には関係無さそうだな」

「毎年台風が数十回通り過ぎるとか火山が爆発するとか頻繁に地震が起こるとか竜巻が発生するとかは?」

「なんだその地獄みたいな場所は・・・台風というよりも大雨自体ほとんど降らないし火山と竜巻というのは書物で読んだことくらいしかないし地震も私が生まれる前に何となく揺れた?程度のものだな」


 なるほど。ならお家はカッパドキアみたいな自然城塞にしなくとも大丈夫そうだな。

 でも木材はそれほど大量に無さそうだし・・・岩山を崩しながら石材を集めるのが先かな?

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