学園ごと集団転移!~巻き込まれたけど何のスキルも得られなかった納入業者の俺、どうやら一人だけ『違うゲーム』の能力(システム)が使えるらしい~
あかむらさき
一章 プロローグ、それとも薬師の女の子(殺意高め)
第1話 七転び八起き
こっそりと新作投稿……。
―・―・―・―・―
黄昏時、赤く染まった空の下、葉陰に被覆された薄暗い森の中を漆黒の衣を纏う青……中……青年が木々を避けながらも道なき道を駆ける。
ここ、大切なところだからな?中年ではなく青年!
もちろん黒衣って言っても『漆黒の全身鎧をまとい颯爽と黒いマントを翻す、某呪いがかかってそうな島の将軍』なんて言うカッコいいものじゃなく、ごくごく普通の『くたびれた黒系の作業用ジャンパーとズボン』姿の男なんだけどさ。それほど漆黒でも無かった。
そもそも状況的に『颯爽』じゃなく『遁走』とか『敗走』の方がふさわしい状況なんだよなぁ……。
てかなんなのこいつらっ!!
足元の悪すぎる森の中、体感ではかれこれ二キロくらい走って逃げてるのに超追いかけてくるんだけどっっっぁぁぁ!!
「どああああああっ!?」
恐らくは地面から突き出した木の根っこか埋まった石ころにでも足が引っかかったのであろう、見事に……転んだ。
なんだよ、待ちぼうけしたキン○マンかよ!色んな意味で転がってるよ!
てかこの令和の時代にまさかのキ○肉マンとか誰が知ってるんだよ。ゆで○まごで思いつくのなんてギリ板○英○だよ。うん、どちらにせよナウでヤングな感じのガラスのティーンエイジャーはあんまり知らないよな。むしろ俺も名前くらいしか知らないもん。
体のそこかしこが痛いがそこは化け物に追われる身、そのままうずくまっているわけにもいかず……転んだ体勢からなんとか立て直した俺。いや、足をもつれさせてフラフラしてるから全然立て直せて無いんだけどね?てかそっち、崖ぇぇぇぇぇ!
そのままズザザザッ!と音を立てながら、林の中から踏み固められた道に滑り、転がり落ちていく……。
もし俺が受験生ならトラウマ物だからな?うん、思ったより混乱してないな俺。現実逃避はしてるけど。はたしてどっちの方がマシなのかは不明である。
「いって!!マジ痛ってぇ……」
余計なことを考えながらも地面に打ち付けた腰の痛みと、草や木の葉や小枝で出来たのであろう打ち身捻挫擦り傷切り傷の痛みで涙目になりながらも立ち上がろうとして失敗、上半身をなんとか起こしたその姿、必死に立ち上がろうと必死に頑張る生まれたての子馬を彷彿させる。何それ超感動的なシーンじゃん。そして
「……!」
「……?」
そんな下半身だけじゃなく全身をプルプルさせた俺の目の前にはポカンとした顔の十代後半の、いや、胸部装甲的には前半かもしれないけど……女の子が立っていた。
籠を背負って腰には草刈り鎌とか幅広の鉈とか差してるし農作業帰りなのかな?
「こ、こんにちは?」
「あっ、はい、こんにちは……じゃなくて!大丈夫ですか!?なんか凄い勢いで上から転がってきましたけどもっ!?」
うん、まぁそんな顔にもなるよね。
いきなり『空から美少女』じゃなく『丘の上から普通のおっさん』が降ってきたんだから。
それってもうただの事故だよね?目を見開いてむっちゃ見られてる。
ナニコレ超恥ずかしい……。
そして最近はちょっとアレでソレな感じの女の子しか見てなかったからその素朴な反応にちょっとだけ和む。
……いやいやいや!!恥ずかしがったり和んだりしてる場合じゃねぇし!!
「大丈夫じゃないけどっ、逃げないと!!早く逃げないと彼奴等がっ!!」
「き、きゃつら……ですか?」
「そう、見るからに恐ろしいバケモノが!バケモノが追いかけて……あああああ!崖に!崖にっ!」
「ヒぃぃッ!?」
こうやって見上げた感じ、自分が落ちてきた崖……転がりながら体感した恐怖ほどに高くも急でもないな。
身近な所で言えば若草山くらいの傾斜の斜面か?高さも20mくらいしかないし。
そしてNR県民以外には言うほど身近でもないよな若草山。むしろNR県民でも生涯に二度くらいしか行かないぞ若草山。
それでもそれなりには急勾配な斜面に目をやり山頂(崖上?)を見上げると、追いついてきたバケモノ、俺を恐怖のどん底に陥れた追跡者を視認して……叫ぶ俺。それにつられて驚く女の子。
女の子が『状態異常(パニック)』な原因の八割方は俺の叫び声の責任なんだけどな。他人を巻き込む、災害時に一番やっちゃいけないアレである。
そして崖の上に立つのは、喩えるならば『中華街の雑貨屋で売ってる犬の頭の被り物』、丸っこくてデカくて無表情なアレみたいな犬の顔をした生き物が三匹、それらが並んでこちらを見下ろしている。
怖ぇ……マジで怖ぇぇぇぇぇ……けど通りすがりの知らない少女をこれ以上巻き込むわけにもいかない!!
「こ、ここここは、おれれれにまかかせててて」
「えいっ!」
「キャインっ!?」
「ににげげげ……げ?」
奥歯をカタカタ鳴らしながら怯える俺の目の前の少女が、かがんで拾った小石を投げつけると慌てて逃げ出すバケモノ達。
「えっ?」
「えっ?」
しょぅじょ っょぃ
さて、満身創痍と言っても過言ではない状況の俺を助けてくれたのは地味な田舎娘って感じの中学生もしくは高校生、おっぱいだけなら小学生でも通りそうな女の子。
うん、まったく年齢の特定が出来てないなコレ。でも総合すると『推定十代』だから特に問題はないはず。
俺だって推定年齢は二十代だもんな!……もちろん前半には見えないんだけどさ。最近筋肉痛が翌日ではなく翌々日に来るようになったどうも、二十代後半です。
そして得体の知れない化け物から命を助けてもらっておいてこの言い草、失礼この上ないな俺。
「えっと、旅の人って感じでもないみたいですけど……あ、山から転がり出てくるくらいだからもしかしたら山賊さんですかね?」
「いやいやいや、違う!違いますから!いきなり腰から抜き放った赤黒くサビの浮かんだその凶悪な鉈の様なモノをしまってください!」
「そうですよねー、どう見てもヒョロっとしてますし山賊向きじゃなさそうですもんねー」
とか言いながらもこちらを窺うような鋭い目つきのまま刃物――鉈を腰にぶら下げた木製の鞘に収める女の子。
てか見た目で山賊向きじゃないと思ってなお躊躇無くこちらに刃物を向けてくるとか怖すぎじゃない?
この子、なんと言うか『ポヘー』っとしてそうな外見によらず好戦的すぎじゃないでしょうか?
そして山賊向きの人材ってどんなだよ。装備品的には俺よりも貴女の方が山賊要素高めだと思いますが。その背中の籠、中から血まみれの生首とか出てこないよね?
ちなみに俺が思う山賊向きな職業は……いろんな方面からお叱りをうけそうなのでこの話題はこのへんにしておこう。
てか『バケモノから逃れられた』と思ったら『村娘に斬り殺される、むしろ惨殺される』とかマジで勘弁してもらいたいものである。
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