勇者と喪失

@mohoumono

第1話 授けられた力

※概要を知りたかったら、

 下にネタバレあります。


ある所に、勇者がいました。

勇者は、世界を救いました。

勇者は、沢山の人に知られていました。

けれど、

勇者は沢山の人を知っていませんでした。

それは、そんな物語。


僕は、商品を卸した帰りに

街の中を散策していた。

その時に、普段ではありえないほど

広場に人が集まっていくのを見かけたので、

僕も広場に行ってみることにした。

何があったんだろうか。

喧嘩にしては、騒ぎが大きすぎるし、

安売りにしては、

屈強な男たちが集まり過ぎていた。

早く答えを確認したい

そんな好奇心のせいか

僕の足は、

いつもより早く前に出て体を運んでいた。


広場に来てみると、

いつも王様の演説の時にいる。

鳥の形をした人間が筒に口を当て

何かを叫んでいた。

周りの声のせいで、

何を言っているか聞き取りづらく、

その上、内容を理解させる気のない

遠回しな言い方をしていたので、

理解するには、目を閉じてまで、

聞くしかなかった。

慎重に聞くと、

勇者を選定するという内容だった。

それは、盛り上がるはずだ。

勇者に選定されたとなれば、

先の将来は、保障され、

数人の親しい人の生活も保障してくれる。

さらに、

今まで勇者が死んだことはなかった。

勇者が役目を果たし帰ってくるたび

凱旋をし、街が今以上に賑やかになっていたのは、昨日のことのように思い出せた。

けれど、一つの疑問があった。

なぜ、

勇者が生きて帰ってきているにも関わらず、

毎回新しい勇者を選定する必要があるのか

それだけは、理解ができなかったことだった。怪しいと思ったが、

僕には、お金が必要だった。

と、いうのも病気の妹がいるのだ。

血は、

繋がってないが唯一の家族だと思っている。

そんな妹が、昨年病気に罹った。

金さえあれば、治る病気だが、

1人で働く僕が、

稼げる額はたかが知れていた。

けれど僕は、

理解できないことがある金稼ぎには、

手を出さないことにしていた。

どうせ、騙し取られる。

過去の経験からそう考えていたからだ。

だが、今回は、違った。

理解できないことはあるが、

勇者が帰ってきているとこは、

何度も見ている。だから大丈夫だろう。

そう考えた僕は、人を掻い潜り

紙を一枚とった。

日程は、一週間後だった。

応募条件は、目を疑うものだった。

何せ勇者の選定なんて

自分の身の丈に合わないと

避けていたものだ。

けれど、この条件なら僕は、

勇者になれるかも知れないそう感じた。

一週間後、

僕は、指定された場所へと向かった。

そこにつくと、紙とペンを渡された。

僕が、指定されたものを書き、

紙とペンを返した。

そうすると、

僕は、白いローブを着た偉そうな爺さんに

奥の部屋へと連れて行かれた。

すると、何重もの円が描かれた場所の

真ん中に座らされた。

しばらくすると、周りが光り始め

僕のことを包み始めた。

何故か僕は、眠気がひどくなり

いつの間にか意識が途切れていた。

そして、意識が目覚めると、

歓声が響いていた。

頑張れよとか、期待してるぞとか

帰ってきたら友達になれよとか

そんな感じだった。

そういえば、

妹に別れの挨拶をしてなかった。

そう気づいた時には、

街から随分と離れてしまっていた。

そして、僕は、豪華な乗り物から下され

複数の馬車と何十人もの付き人と

そして、熟練の戦士たちと一緒に

旅に出ることになった。

豪華な乗り物を、

街に帰さなきゃならないので、

それを送り届ける人たちに頼み、

妹宛に手紙を書き、渡した。

そして、それから一ヶ月くらい経った頃

天を貫くくらい高い塔に辿り着いた。

補給に来た人たちに、

妹からの手紙の返事をもらった。

やはり、妹はセンスがある。

将来は、作家にでもなれるんじゃないか

つい笑みが溢れた。

そして、また帰る人々たちに

妹宛の手紙を渡した。

塔に登り、頂上へと辿り着いた。

その風貌は、人とは、

思えないほど縦にも横にも大きかった。

そして、それを隠すように

黒いローブを羽織っていた。

そいつは、振り返り、何かを唱えた後

手を此方に向けた。

そうすると、

左にいた戦士が壁に打ち付けられ、

力なく地面に倒れた。

それを見た白いローブを着た偉そうな爺さんは、

唱えろと叫んだ。

何を唱えたらいいかわからなかった僕は、

頭に浮かんだものをとりあえず

叫ぶように唱えた。

その瞬間、体から光が溢れ、力が漲った。

そして、剣を振り下ろすと、

黒いローブを羽織った敵は、

真っ二つになり、倒れた。


月は、深海の遺跡に行った。

返事が返ってきた。嬉しかった。

手紙を渡した。


その次は、山奥の秘境に行った。

手紙をもらった。嬉しいものだ。

手紙を渡した。


その次は、天空の島に行った。 

手紙をもらった。応援するくらいなら変わってくれればいいのに

手紙を渡した。


そして、

最後に黒い空の下にある城へと入り、

頭に浮かんだものを叫んだ。

呆気なくそいつは、死んだ。


最後に、凱旋をした。

褒め称えられるのは、嬉しかったが、

この後何もすることがないことに嫌気がさした。

何もないから、生贄のように勇者に選定され

た奴を褒め称えるなんて

どうかしてる奴らだ。








以下ネタバレ

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エンド分岐

縛りプレイをすればするほど

ハッピーエンドになる。


力を使わないエンド

妹の病気も治り、男は、妹を迎えに行き

2人は幸せに暮らしました。


一回力

男は、妹を迎えに行き、暮らしていますが、

大事なことを忘れています。

それが仇となり、2人は喧嘩をして

別々に暮らしてしまいます。


全部から-1力エンド

男が、妹を探し続けるが、

存在以外全て忘れてしまい

すれ違うエンド


全部力を使ったエンド

妹の病気は治ったが、

男の妹に対する記憶は、

全てなくなりました。

男は、不審者だと思い、

妹を殺してしまいました。

その後、自してしまいました。




勇者の条件

幸せの記憶をもつもの

かけがえのない人がいる者

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