第6話 スキルと仲間
スキル。この世界の誰もが持っている特殊能力、と言いたいが、誰しもがその恩恵を受けているわけではない。
スキルを獲得するには条件がある。
一つ、冒険者になること。
一つ、スキル必須の職業に就くこと。
一つ、自らに眠る力を引き出すことか、外部からの強制付属。
以上の四つ。基本、本人にスキルは知らされない。
稀に一人で二つのスキルを持つ者もいる。そのような者は『
ただし、『闇』は例外中の例外であるため、名称無し。
「…………」
「ヨイヤミのこと、まだ後悔してるか?」
とある広場にて、柊人は蓮にそう尋ねた。スキルについて書かれた本を閉じると、蓮は首を縦に振ってぽつりとこぼす。
「私のスキルって、スキルが見えるスキルでしょ。戦いには役に立たないけど、こういうのには役立っちゃうんだなって……」
「俺達は悪くない。でも、ヨイヤミも悪くないんだよ」
勇者一行は、これからも旅を続けていく。
「やあ、可愛いお嬢様たち。僕はヨイト。しがない旅人でね、良ければ君たちのパーティーに加えて欲しいんだが――」
レイルの裏拳がヨイトの急所にクリーンヒット。ヨイトはうめき声をあげて倒れた。
「な、なにをするんだ……」
「ナンパ師ぴょん。旅人なんて嘘つきぴょん」
「同感だ。ついでに心臓も潰しておくか」
二人から発せられた言葉に、ヨイトは震えながら返事をした。
「や、やめてくれ……」
ヨイヤミはギルド指定の病院で検査を受けているため、しばらく家を空けるという連絡を受けたレイルとファルンは食材の買い出しをしていた。その時市場で出会った貴族の服に海賊が被るような帽子をつけた男こそ、ヨイトだった。
だが、ヨイトの分のご飯を作ったことにより、食材を使い果たしてしまった。
「いや~満腹満腹。ありがとうお嬢様たち」
ヨイトは二人に礼を言うとベッドに腰掛けた。
「なんか気に入らない奴。お前何人ぴょん?」
「失礼な兎さんだ」
レイルはその発言にイラッとした。だが、ヨイトは続けざまにこう言った。
「僕は共和国出身の第二王子にして、エルフとダークエルフの当事者。そしてハーフエルフでもある男だよ」
「共和国の男……まさか貴様」
ファルンの何かに気づいたような言葉を指パッチンで遮ると、ベッドから降りて二人の前に立つ。
「そう! 僕の名前はヨイト・レンスール・フォーカス。かつて『共和国の魔人王』と恐れられたカイルズ・レンスール・フォーカスの息子さ!」
「共和国……どこの話をしているのかわからないぴょん」
レイルの言葉に肩をガクリと落としたヨイト。懐から紙とペンを取り出すと、この世界の大体の土地を書き上げて二人に見せた。
「いいかい、ここがハイネスト。北にあるのがレウシア大国。南はクルスット共和国。西がエルフの里と吸血族、マーメイド族、ドワーフが暮らすカイロン帝国。東はわからない。未開拓の地だ」
適当な地図だがわかりやすい。ファルンはそれをもぎ取るとまじまじと見つめる。その間、レイルはヨイトに自己紹介を済ませていた。ついでにファルンも紹介したみたいだった。
「ファルン嬢、これで僕は旅人だと証明出来た。さあ、仲間に入れてくれないか?」
「兎に聞け」
ファルンは簡素に言葉を返す。ヨイトがレイルに顔を向けると、レイルはヨイトの頬を耳でぺちぺち叩いてきた。
「な、なにするんだっ! 僕は王子だぞ!」
「気に入らない人間だから」
「僕はエルフだ! エルフとダークエルフのハーフなんだぁー!!」
その言葉に反応したファルンは、ヨイトの胸ぐらを掴むとベッドに押し倒した。
「本当か、それは?」
強い怒気を孕んだ言葉に、ヨイトの顔は歪んでいた。
「ああ、本当さ」
その言葉の後、ヨイトはファルンにこんな言葉を投げかけた。
「僕の妻になってくれるかい?」
勇者一行は、東にある未開拓の地を訪れていた。
「はやくテント広げてよ。寒いって」
「はいはい。ここは時間の流れが早く感じるよね~」
帆乃香の文句をあしらいながら蓮がテントを広げていく。正確な時刻はわからないが、夜なのは確かだった。
「柊人」
「ん?」
柊人に話しかけたのは小峰だ。小峰は少し間を置くと、こう聞いてきた。
「ヨイヤミをなんで追放したのか知りたい」
「……蓮」
テントを広げ終えた蓮を呼ぶ。帆乃香が寝袋の準備をしている間で話すのがいい。
そう思った柊人は、近くの丸太に座って口を開いた。
「ヨイヤミを追放したのは、ちゃんとした理由があるんだ」
「自分が目立ちたいとかそういうわけじゃないんだけど、とにかく、原因は私」
蓮が自分を責めるような口調で話すが、柊人はそれを補足するように話を進める。
「蓮のスキルは解析。スキルがわかるスキルって言えばわかりやすいか」
「ヨイヤミくんのことが気になったんだ。役に立たないなんて思うけど、本当はすごい力を持ってたりするんだろうなって。だから調べた」
寝袋の準備が終わった帆乃香。今度は火を起こすため、燃えるものを取りに行ったようだ。
それを横目に、柊人は話を更に進める。
「蓮が調べたら、ヨイヤミ……とんでもない力を持ってたんだ」
「それは、なに?」
小峰の質問が後押しになったのか、柊人は答えた。
「あいつは、数百年前に勇者が倒したとされた『闇』の全てを受け継いでいた。そしてもう一つ、スキルを授かっていた」
柊人は一呼吸置き、スキルの名を口にする。
「全知全能。それがヨイヤミのスキルなんだ」
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