第一話 空への憧憬

 みんなは介護職ってどんなイメージだろうか。


 キツイ、汚い、給料が安い。挙句の果てには、他に職が見つからなかった奴のやる仕事。オーケイ。もう十分だ。


 認めよう。確かに介護の仕事はキツイ。身体の自由が効かない人間を支えるのは大変だし、人間ってのは飯を食えば出るもんは出る。おまけに夜勤手当を加えたって、贅沢のできる身分には程遠い。


 だけどよく聞いてほしい。介護士ってのは専門職だ。看護師の仕事が医療行為なら介護士の仕事は生活そのものを支える大事な仕事なんだ。


 怪我を負っていなくても、足腰は衰える。そんな時に手を差し伸べられるように、専門知識を学んだプロの集団が介護士なんだ。つまり他の仕事につけないんじゃない。この仕事は介護士にしかできないってこと。


 おまけにこっちの世界じゃあ、相手にするのは人間だけとは限らない。


 最初に紹介するのは、年老いた竜のお話。


 彼女は全ての竜の肝っ玉母ちゃんで、かつては竜王なんて呼ばれてた。テメエのガキの世話になんかなるもんかってんで、うちの施設に自分から飛び込んできた強者だ。


 だけどその心根は、目の前にすれば誰でも童心に帰ってしまう優しいマザードラゴンなんだ。


 そんな彼女にも悩みはある。なんと言っても後継者争いだ。あんまり立派な創業者がいると、後継ぎってのは選ぶ方も選ばれた方も大変らしい。


 始まりはそう、雨の降り注ぐ梅雨真っ只中の蒸し暑い夏の朝だった。










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