異世界転移しています! ー不器用木こりとひきこもり姫にゲームの世界は救えるかー
砂漠の使徒
第1話 おや、彼はナイトみたいだね
「ん……」
セイルが目を覚ますと、そこはお城だった。
しかし、姫様が長年籠っていたあそこではない。
(いったい眠っている間になにがあったんだろうね)
賢者は楽しそうに語り掛ける。
彼も初めて見た場所の様で、心を躍らせているようだ。
「……」
青年は思い返す。
昨晩は野宿をした。
彼は堅物な騎士と交代で見張りをしていたのだが。
(いつのまにか寝てしまったようだね)
本来あってはならないことだ。
そして、その間に誘拐されたと考えるのが筋だろう。
ガチャ。
考え事をしていると、近くで扉の開く音が聞こえた。
誰かが来たようだ。
さて、相手はこの前みたく盗賊か。
はたまた……。
(おや、彼はナイトみたいだね)
言われずとも、それはわかった。
知り合いのうるさい騎士と同じく、銀色の甲冑に身を包んでいるからだ。
そいつが、ガチャガチャと音を立てながらこちらに歩み寄ってくる。
(それにしても、あんな紋章は見たことが無い。かなり辺境の国なのかな?)
賢者が好奇心を抑えられない声色で語る。
だが、セイルは気を抜かずに警戒態勢を取る。
やがて、騎士は目の前でピタリと止まった。
「チュートリアルを開始します」
冷たく、抑揚のない声が吐き出される。
「……」
無口だからというよりも、返答に窮して黙り込む。
相手の意図がまったく読めない。
(チュートリアル……か)
「どういう意味だ」
(練習ってところかな? なにか君を試したいんじゃ……)
と、ここで賢者の言葉が途切れた。
「ぐふっ……」
胸に深々と剣が刺さったからだ。
(セイル、セイル! 大丈夫かい!?)
さすがの賢者でも、予測できなかった一撃だ。
いや、仮に予測できていなくとも、避けることはできたはずだ。
厳しい訓練を積んだ青年が、みすみす急所を捧げるはずがない。
しかし、現実は違う。
まるで、初めからそうなることが決まっていたかのように、剣先はきれいに胸に吸い込まれている。
「……」
反撃の暇すらなく、木こりは短い一生を終えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます