泡沫とバックローグ

牙鳥

第1連 拝啓

愛するあなたへ。

私はいま、とある国に居ます。

窓の外では雨が降っています。

あなたがいる場所はきっと、太陽が鮮やかに輝いていることでしょう。

この国には、王と神がいます。

王は民を守り、神は国を守ります。

この国には、軍隊がふたつあります。

黒い服に緑色の帽子を被った軍隊は、王の命令で戦争に出ます。

歩兵などは、国民の男子が徴兵されています。

隣の家に住んでいるおばあさんは、10年ほど前、旦那さんを戦争で亡くしてしまったようです。

おばあさんは私にとても良くしてくれます。

今日も彼女は私に、とても美味しいミントティーとストロベリーパイを作ってきてくれました。

酸っぱいものが苦手な私でも食べることができる、優しい味です。あなたにも一度食べてほしい。

話が逸れてしまいました。

この国には、もうひとつ軍隊があります。

その兵たちは普段、真っ白な礼服を着ています。

戦争に出るときは国の色である緑色の軍服を着ていて、なんとそのなかには女性や、10歳くらいの子供も少なくありません。

その軍隊は、黒服の人々と比べて非常に人数が少なく、しかし非常に強いのです。

彼らの瞳孔はスズランのような白色をしていて、それを見た国民からは神の使いとも呼ばれています。

おばあさんは20年前に見た淡い赤髪の少女を、姿形の変わらぬまま3年前にも見たと言っていましたが、まさかそんなことはありえないでしょう。

しかし彼らは一体、何者なのでしょうか。

神の御力であのようなことができるのだとして、それは本当に素晴らしいのでしょうか。

私には到底分かりません。

私は彼らではないのですから。

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