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唐傘人形

第1話

 迫りくる多脚兵器。

 黒い巨大な蜘蛛にみえる。

 左右に取り付けられた機関銃が火を吹く。


 それに立ちはだかるように立つメイド服の女が居た。

 それは戦闘ドールである。

「ひゃっはー、獲物が来やがった!」

 戦闘ドールはミニガンを構えると乱射しながら走る。

 弾丸を辺り一面に撒き散らすように激しく。

 蜘蛛型兵器が踊るように弾け飛ぶ。


 後方からロケットが飛んでくると、大爆発が起きた。

 紫のメイド服を着た小柄な戦闘ドールが走ってくる。

「カンナ待って下さい~、私の分も残してくださいよ」

「この敵は私の物、ニーナにはやらない。

欲しいなら実力で取ってみな」

 たった2体の戦闘ドールによって数十もの兵器が粉砕されることになった。

 それは30分足らずの事だった。

「いいね、久々の実戦は」

「はい、これでご主人様も大喜びでしょうね」


 

 そんな二体のドールの主、ユウは真っ青になっていた。

「いやいや、何だよ。

あの弾全部打ちつくしたのか?」

 カンナは誇らしげに胸を張った。

「ああ、快感だった。

確実に敵を全滅させたんだぜ、感謝してくれよな」

 ユウは絶句した。

 想定していた量を遥かに超える消費だったからだ。

 それが理解できない事に呆れる程だ。

「半年ぐらい購入しなくても良いだろうと思っていた。

これからの戦闘でどうするんだ?」

「また買えば良い。

今度は倍勝っておきな、祝砲打てなくて少々物足りなかったぜ」

「くぅぅぅぅっ。

もう良い、おいニーナ」

 ニーナはビックとして気まずそうな表情をする。

 ドールの癖に人間みたいだ。

「あの何か問題でもありましたでしょうか?

消費は最小に抑えまし、無駄は一切無かったと思います」

「俺達の仕事は何だ?」

「それは兵器の破壊でしょうか」

「それはお前達の役目だ。

仕事はその兵器から部品を回収して売ることだ」

「はい……、何が問題なのでしょうか」

「爆発で何もかも壊れてるんだ。

部品は全滅、くず鉄としてしか売れなかった」

 ユウは頭を抱えていた。


*


 数日前のことだ。

 金属回収で小銭を貯めていたユウは、中古屋のオッサンに声を掛けられた。

「兄ちゃん、いいドールが手に入ったんだが見ていかないか?」

「ドール?

そんな物いらない」

「知らないのか。

ここらで稼いでいるエースって奴はドールを12体も侍らせているらしい」

「俺にはそんな趣味はない」

「ドールを使って稼いでいるって話だ。

今よりずっと儲けられる」

「食べるものに困らない程度には稼げているし、

それならオッサンが使えば良いんじゃないか?」

「代々受け継いできた店がある。

ここを捨てる訳にはいかない」

 なんか胡散臭い話だとユウは思いつつもドールを見ることになった。

 精巧に作られた造形は人間にそっくりだった。

「人間じゃないのか?」

「ちっちっち……、間違いなくドールだ。

スカートをめくってみな」

「……いや、そんな恥ずかしいこと出来ない」

「ガキだな。

ほれ、太ももの所は金属がむき出しになっているだろう」

「本当だ……、スカートの裏側にも金属版が貼ってあるのか」

「それは冷却板だ」

「でも何で人間そっくりに作ってあるんだ?

蜘蛛型とかの方が移動場所を選ばなさそうだし」

「旧時代に作られた物だからな。

詳しいことは記録に残ってない」

「それでこれは高いのか?

値札には要相談って書いてあるだけなのが怖いんだが……」

「いつもパーツを売りに来てくれているからサービスするぜ。

1体買ってくれたら、もう一体オマケしてやろう」

「どういう風の吹き回しだ?」

「姉妹機らしくてな。

別々にすると不機嫌になって暴れる困った性格らしんだ」

「読めた。

不良品だと突っ返されたんだろう?」

「不良品ではないだが……。

まあそういう事だ」

 そして武器や弾薬をサービスしてもらい買い取ることになった。

 所持金では足らず借金することになったのだ。


*


「うあああぁぁっ。

これじゃあ返済に百年掛かる」

「もっと単価の高い奴を狙えばいいじゃん」

 カンナはミニガンを磨き始めた。

「そいつは使用禁止だ。

次からはリボルバーを使ってくれ」

「はぁ? そんな玩具であの兵器を殺れって言うのか。

冗談じゃない」

「安心しろ、次の場所はもっと雑魚だ。

無難に稼ぐことにした」

「見た感じ、弾がなさそうだし。

金欠なご主人様、様、に拾われたの運の尽きって事ね」

 ニーナはホッとして、その場に座った。

 ユウはそんなニーナに冷たく言う。

「お前も爆発物は禁止だ。

斧を使ってくれ」

「えっええ……、斧ってこれですか?」

 火事になった時に扉を壊すための斧だ。

「接近戦は出来るんだろう?」

「まあ、その出来ますが、

相手が火器を使ってきたら一方的に攻撃されてしまいます」

「そこにシールドがあるから、それで防いでくれ」

 カンナは笑い、ニーナの頭を撫でた。

「ご主人様に感謝しろよ。

2つも装備を貰えたんだからな」

「カンナ……、だったら交換して」

「嫌だね。

プレゼントを交換なんてありえない」


 

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