第12話 この場所の意味は
三人が座り込んで、それぞれの水筒から水を飲んでいる間に、僕はここが何の場所なのかぐるっと回って調べてみることにした。冷静になって見ると、明らかにここは崖の途中に不自然に掘り込まれたスペースに思えたんだ。
僕は開けたスペースの奥へと注意しながら足を伸ばした。少し生臭い匂いのする奥で僕が見たのは、僕が抱える事が出来るかどうかの大きさの美しい二つの卵だった。
僕はその虹色の卵を知っていた。いや、図鑑で見た事があった。僕はキョロキョロと周囲を見回して、卵の側に落ちていた古い卵の欠片を4つ拾ってマジックバックに入れると、そっと自分のつけた足跡に重ねるように後退った。
僕はのんびり座り込んでいる三人が、僕を見ていたのを確認するとひとつ咳払いして言った。
「…皆さんに、残念なお知らせです。えーと、この快適な場所は、ある方のお住まいの様です。そこで僕たちはさっさとここから逃げる必要があります。」
三人の顔が一気に強張った。ケルビンが周囲をキョロキョロと見回しながらも、顔を引き攣らせて僕に尋ねた。
「おい、まさかアレか?怪鳥ギャロスの巣だとか言わないよな?」
僕は崖から周囲をゆっくり眺めながら呟いた。
「うーんと、ケルビン大正解。今卵を温めてる最中で、たぶん一時的に自分の餌を摂りに出かけてるんだ。丁度出くわさなくて幸運だったよ。
僕が昔読んだギルドの仕事って本には、怪鳥ギャロスは托卵中でも一度巣を離れると、半日戻ってこないって書いてあった。朝から出掛けたとしたら、あと1時間ほどで戻ってくるだろうから、それまでにここから出来るだけ離れないといけない。」
僕がそう言うと、テディが絶望した顔で浮き上がらせたシュミレーションを見つめながら言った。
「そうは言っても、目指す向こうの丘までは、さっきの崖下の道に戻るか、もっと登って山の峰を行くかどちらかしかないよ。でも山の峰に辿り着くまでに、怪鳥に見つかる可能性が高いよね?」
ミッキーはガタガタと震えながら、棍棒を握りしめて言った。
「俺とケルビンで何とかやっつけるとか無理かな…。」
強張った顔のケルビンが僕を見つめて言った。
「…お前随分落ち着いてるな。何か考えはあるのか?」
僕は、深呼吸して空元気を出してにっこり笑うと、三人の顔を見渡しながら勿体ぶって言った。
「…そうだね。無い事はないよ。でも皆には選んで貰わないといけないんだ。この崖から自分で落下するか、それともまごついてる間に怪鳥ギャロスに喰われるか。どっちにする?」
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