楽しい郊外演習

第9話 演習開始

僕たちはチームに分かれて、時間差で演習場所まで出立の準備をしていた。僕のチームは三番目の出発で、地図と各チーム毎に違う、必須経由地点を確認しながら待機していた。


ケルビンは僕に会うなり、ニヤけた顔を顰めて苦々しげに言った。


「くそっ、先手を打たれたか。そこまで用意されちゃ、手も足も出ないぜ。」


僕には何を言ってるのか分からなかったけれど、いつもの様にしつこく絡んで来なかったので、ちょっと気が抜けてクスッと笑って言った。



「ケルビン、いつもそうやって突っかかって来なければ、僕君のこと嫌いじゃないのに。君って案外リーダーシップは有るし、実力もあって有能だからね。


今回の演習でも宜しくね。あ、ミッキーとテディも今回の演習宜しく!」


僕がそう言うと、ケルビンはポカンとして、いつもの傲慢な雰囲気を引っ込めて大人しくなった。マッチョなミッキーと、僕の様に細マッチョなテディは普段あまり交流はなかったけれど、彼らの特技は凄いと思っていたんだ。



ケルビンの偉ぶった態度が無ければ、このチームは優勝を目指せるかもしれない。僕がみんなに優勝するからって言うと、僕のやる気が移ったのか目に見えて皆のやる気も上がって見えた。


「ふふ、噂通りなんだね。パトリックは嵐の目だって言われてる訳がちょっとだけ分かった気がするよ、僕。」


そう言って、テディは地図の上に手をかざした。テディの特技は地図の立体化や緻密なプランニングだ。チームにこうやって細かなことを考えてくれる人がいると攻略もスムーズだ。



僕がテディの特技に見惚れていると、ミッキーが言った。


「俺は細かけぇことは全然わかんねぇ。テディに任せるから、力関連は任せろ。」


そう言ってミッキーはブンブンと自分の鉄の棍棒を振り回した。僕は顔を顰めてミッキーに言った。


「ミッキー、こんな狭い場所でそんなトゲトゲしたぶっとい棍棒振り回さないでよ。…ふーん、でもよく見たら、オークとか一発で二、三頭は仕留められそうだね、それ。


ちょっと持たせてくれる?…うわっ!何これ。凄い重いんだけど。…本当にこれ持って行くの?」



僕がしげしげとミッキーの棍棒を検分していると、ケルビンが僕の側に来て言った。


「お前が一番オークに攫われそうだな。そんな時は俺が一発で仕留めてやるさ。」


そう言って腰からデカいサーベルを抜き出した。うわ、ギロチンの刃みたいだ。しかも無理矢理持たされたら、ミッキーの棍棒に負けず劣らず重い。


僕は引き攣った顔で、ケルビンとミッキーに言ったんだ。



「ねぇ、結構な強行軍で山登りだけど、本当にその重い武器持っていくつもり?」


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