第6話 郊外演習のお知らせ
「パトリック、行くだろ?」
僕はギャビンに声を掛けられて、掲示板に貼り付けられたお知らせを見つめていた顔を上げた。周囲の訓練生たちが興奮気味に盛り上がっている。
一学年だけの郊外演習は自由参加だけれど、ほとんどの訓練生が参加するのでほぼ行事と言ってもさし使えないだろう。僕は肩をすくめて言った。
「これって行かないなんて選択出来たっけ?…それよりこのチーム分けって誰が決めたの?」
僕は眉を顰めてチーム一覧表を見つめた。四人ひとチームで5つに分けられている。僕のチームにはバートもギャビンも居ない。代わりに僕に付き纏いがちのウザいケルビンが居た。
これには流石に僕も、ため息をついた。そんな僕に後ろに居たバートが言った。
「これ決めたのは先生だけど、…狼族のバロン先生だ。」
「そうなのか?全然知らなかったなぁ。よう、パトリック、宜しく頼むぜ?仲良くしてくれよ。」
そう後ろから声を掛けてきたのはケルビンだった。妙に嫌らしい笑い方をするので、僕はちょっとゾクっとしてしまった。あいつと一緒のチームだなんて、幸先が悪い。
一歩前に出たバートはニヤついてるケルビンに、低い声で言った。
「ケルビン、パトリックに変な事するなよ。」
するとケルビンは肩をすくめて、バートを揶揄うように言った。
「変な事って何?具体的に言ってくれないと俺には分からないな。大丈夫、お前がパトリックを守ってやれない分、俺が代わりにたっぷり面倒見てやるから。な?パトリック。」
黙り込んだバートの後ろ姿を見つめながら、僕は言った。
「演習は遊びじゃないんだ。僕はケルビンがちゃんと演習の役割を果たしてくれさえすれば、文句はないよ。」
ケルビンはニヤッと笑うと、恭しく僕に答えた。
「仰せのままに、役割はきっちり果たしますとも。ははは、楽しみだ。マジで。」
そう言うと、後ろに控えていた仲間たちと立ち去ってしまった。僕は彼らを見送ると、前に立ち塞がっているバートの背中を手で叩いて声を掛けた。
「そろそろ次の実習が始まるから行こう。」
ギャビンは僕とバートを交互に見つめながら何か言いたげだったけれど、終いには諦めたのか、ため息をついて歩き出した。
「パトリック、バートの心配ももっともなんだ。お前気づいてないかもしれないけど、ケルビンはパトリックを押し倒そうって狙ってるんだよ。気づいてた?」
僕はチラッと心配そうに僕を見つめる二人を見ると、ため息をついて言った。
「…ああ、そういうこと?大丈夫。あいつも馬鹿じゃ無い。演習中にどうこうするほどね。」
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