第5話 ギャビンside憎めないパトリック

俺の前で連続してパトリックの指から放たれる矢は、吸い込まれる様に次々に的に突き刺さった。中心が矢で埋まるのは、初めて見た。俺は興奮して、パトリックに抱きついた。


「パトリック!凄いじゃないか!本当に腕をあげたな⁉︎まったく夏休みにどんだけ特訓したんだよ。」


俺がそう言うと、ニヤリと唇を持ち上げて少し誇らしげに顔を背けると、何でも無い様に言った。


「まぁ、僕の地元はボウのメッカだからな。これくらい出来ないと、マジェスタの名が廃るだろ?」



そうつれない事を言いながらも、嬉しそうな表情は隠せてない。まったく俺の友達は可愛げがない。とは言いつつも、パトリックは常にひと目を惹く獣人なのは間違いない。


スラリとバランスの取れた身体は、小柄ながらしなやかで妙な色気がある。肩までの明るい紅茶色に1箇所だけ黒が混じった珍しい髪は、キラキラしていて日差しの中では妙に目立つ。



でもパトリックの本当の魅力はその瞳だった。切長で吊り上がった意志の強さが滲む、透き通る様な水色の瞳は印象的だ。そしてその瞳のままの勝ち気な性格は、時々うんざりするけれど何だか放っておけない。


綺麗な髪から覗く、大きめの尖った耳から伸びる羽根の様な黒い飾り毛は、滅多に見られない希少種を示している。ヨードルの領地にしか存在しないオオヤマネコ族で、飛び級で入学してきたパトリックは、この特殊ギルド訓練所でも注目されている。



しかもオオヤマネコ族の中でもパトリックは少し雰囲気が違う。パトリックの兄達は有名なボウの名手だけど、もっと人を寄せ付けない雰囲気だ。それがオオヤマネコ族なのに、パトリックはツンデレというか、時々撫で撫でしたくなる可愛さに溢れてるんだ。


見た感じは同じなのに、人に与える印象がこんなに違うのも珍しい。だからパトリックは一族から溺愛されてるって話も納得しちゃうんだよ。



俺は白鷹族ならではのジャンプ力と握力を格闘で活かしつつも、もうひと技ほしくてボウを修行中なんだ。この2年間の訓練所を終えたら、俺たちは立派なギルド員として、難しい仕事を請け負う事が出来る。


パトリックの昔馴染みのバートは、きっとこいつと一緒にチームを組みたがるだろうな。バートは普段おっとりした風を装っているけれど、実際の所は虎族だから潜在戦闘力は訓練所でもかなり良い線をいくんだ。



なぜかパトリックの前では気が弱いフリしてるのが、見てると笑っちゃうんだけどね。まぁパトリックの負けん気が強過ぎて、平和に側にいるにはそうするしか無いのかもしれないな。


さあ、俺も人の事ばかり心配してないで腕をあげなきゃな。バートも見張ってないから、パトリックに教えてもらおうっと。俺は自分のボウを手に持つと、自慢の年下の友人、パトリックの側へ走っていった。



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