密かに悩んでいたようです。


季節が巡ってCちゃんが入社して一年と少し経った頃。

休憩時間にMさんと私はこんな話をしてました。


「みてみてこの子、まつ毛ばっさばさでイケメンですよね!」

「おおー、すごいまつ毛長いね!」

「そうでしょ!」


そこにひょっこり現れたCちゃん。 

この頃は殆ど休憩室に来ないので、珍しい。


「なんの話ですか?イケメンとか言ってませんでしたか、あ!ちよさん(私)の兄弟の話ですか?」

「新しい家族なんだ、見てみて!」


わくわくしているCちゃん。

私は自分の携帯の写真を見せました。

それは白い柴犬のアップ写真でした!


「新しく子犬飼い始めたんだけど、よく見てたらまつ毛ばっさばさだから見せたくて。あとほら、耳だけ茶色なんだよこの子!」

「へ、へえ。カワイイですね…」

「うちも犬を飼っててさ、二人でお犬さま自慢してたのよー」


Cちゃんは笑ってましたが、私達の犬トークにちょっと引いてました。なんか……すみません。

じ、自慢したかったんですよ!


この頃の彼女は、Nさんともあまりくっついてこなくなったそうです。

Mさんが「最近Cちゃんどう?」とNさんに聞いても、「俺もわからない」と言ってました。

お昼もあまり来ないから話してないそうです。

ちなみにHさんとの話も、あれからさっぱり無いので、進展しなかったんだなということで噂に上がってこなくなりました。

(今となっては、お付き合いしたかもですが、恐らく些細な事でHさんがCちゃんにキレたのかなーと思ってます。

当時は忘年会の一件はなんだったのだろうと思ってました)


お昼休み、皆で話していた時に一緒に仕事をしているU先輩が言うには、

Cちゃんから「仕事の部署を変えたい」と相談されたと言ってました。


「仕事も大丈夫だし、せっかく慣れたのに」


とMさん。私もそう思いますね。

U先輩とCちゃんのしている仕事は、当時の私の担当していた場所から少し離れていて、実情がよくわからないです。


「…Cちゃんあまりパートさんから良く思われてなくてさ」

「そうなの?」

「Uさんとこのパートさん、お局様いるもんね」


確かに怖いお局パートさんがいましたが、あの人は仕事で一緒にやる事がなければ、まだ大人しいです。一緒にやると怖いですが…(新人いびりで有名な人でしたので)

あとは、エアコンの温度をめっちゃ下げられるだけだから……。

CちゃんもU先輩が嫌なら相談しないと思いますので、仕事に馴れてきた頃特有の辞めたくなるやつなのかな…と思っていました。


「……ならBさんに聞いてみるわ」

「Bさん?」

「いや、最近Cちゃんと話してるって言ってたからさ」


マジですか。

どうやらBさん、彼女の悩みにのっていたのでした。

Mさんが聞いてみたら、BさんはCちゃんに相談されていることと、何処かの部署に移動出来るように掛け合っているんだ、と話してたそうです。

ただ、会社側も中々難しいようだとも言っていたと。

ブラック企業ではないのですが、この時期売上が伸び悩んでおり、人員削減をし始めていました。なので人員もギリギリでやっていたので……会社も慎重になっていたんだと思います。


ここで、Bさんをざっくりと思い返してみます。

BさんはMさんと同じ部署で働いているシルバーさん。私達やU先輩達とはまた違う部署の人です。

Yさんの話では、顔が広くて色んな部署にも顔が利くそう。

ベテランのYさんとEさんとも顔見知りで、うちの部署にふらっとやってきては二人と話していくくらいの関係性ですね。

パートさんには優しいです、というより可愛げのある女の子に優しい。


そんなBさんが最近Cちゃんを気にかけている。

彼女の今までの事を考えちゃうと、冗談まじりで「あれ、もしかしてBさん、彼女と何かあった?」と思いたくなってしまうくらいにべったりでした。


「ねえ。Nさんさ、最近元気無いねぇ。何かあったのかい?」


あ、Eさん。

この日は朝一の仕事がすぐ終わってしまい、私は次の準備が終わるまで雑用をしていました。


「うーん、それがね」

「俺の事はいいんだよ!」


Nさんも一緒でした。

うるせえ!と言いたそう。


「あれ。Bさんだ。何だか忙しそうだねぇ」


Bさんは、この頃いつにも増して忙しそうでした。Cちゃんの相談の件もあるのかもしれません。

このときの私は、Bさんは年齢差も離れてるので老婆心もあってCちゃんに世話を焼いてるんだろうな、と思ってました。


「そうだNさん、Bさんと煙草吸ってたらCちゃんがいたんだけどさ」

「あー…、それがCちゃんな、Bさんに色々相談してるらしくてよ」

「え、相談…?」


ですが、そう思ってなかったお方が一人だけいたのでした……。


それからお昼休み。

この日は一緒にご飯をしているMさんが仕事中だったので、私は人の寄りつかない休憩所でこっそりご飯を食べてました。

何で食堂に行かないのかって、まあ…色々あるんですよ、ええ。

お昼ご飯も、コンビニおにぎりかパンでしたし、ゴミも少なかったですしね。

で、こそーり食べていると、


ばーん!

結構な勢いで誰かが入って来ました。

凄い顔をしたEさんでした。

思わずびびってると


「Cの奴はいるのかい?!」

「いないです…」


いや、Cちゃんが何したの?!


「全く!急に私に突っかかって来て…Bさんとよくいると思えば……私にはなんも関係ないだろう!なあ!」

「そ、そうですね…?」


何でキレてるのか、よくわからないままEさんはまた出ていってしまいました。

Eさん、鬼の形相だったんだけど?!

何だか分からないけど、怖い!!


というか、Eさんが後輩に怒ってる姿を見たことがなかったので、何があったのか飲み込めてませんでした。

ご飯を食べた後、仕事が終わったMさんにこんなことがあったんだけどと話すと、Mさんは、ははーんと言った後にこう言いました。


「あー、それはあれよ。ヤキモチ」

「焼きもち」

「Bさんが最近Cちゃんと一緒にいたから、ついにEさんが爆発しちゃったんだよ」


聞くと(関係は終わってるらしいですが

)昔々、BさんとEさんがとても仲良かった時があったようで、もしかして二人…不倫してる疑惑があったらしいです(Mさん曰く『あれは不倫だった』)。

なので、Eさんが昔の不倫相手(?)に若い子がくっついていて面白くなかったんだろうと。


「ちよちゃん(私)は知らなかったっけ」

「知りませんでしたよ。Eさんの勢いがすっげぇ怖かったですよ!」


Mさんも噂に関しては半信半疑みたいだったようで、「本気だったんだね…Bさん相手に。まあびっくりだわ」とぼやいていました。


「何事かと思った…」

「Eさん、Cちゃんに突撃してないか心配だわ…」

「…大丈夫ですかね」


しかしCちゃんが何処にいるか、分からんし…

それに仕事中に二人がドンパチ始めたら怖いしなあ。

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