キャンセル勇者
北の山さん
第1話
「!!、」
ある日のこと、突然 足元が輝きだした。
歩道を歩いている人たちが驚いて騒ぎ出す・・
なんて事は無い。
他の人には見えないのだ。
おっと、周りを気にしている場合ではない。
俺は持ち前の高いステータスを生かし
一瞬でその理不尽な魔法陣を飛び越えた。
そして
誰一人、その異常なオレの動作に気付く者はいない。
ピコーン
『勇者召喚ヲキャンセル。経験値ヲ獲得。
敵対者陣営ノ魔導士一名ノ死亡ヲ確認』
機械的なアナウンスが耳元で響く。
これは魔法による陰謀を仕掛けられた時、状況確認と共に瞬時に魔法経路をたどって情報収集することが出来る魔法だ。
そう、魔法だ。
厨二病をこじらせた訳では無い。
陰謀渦巻く宮廷闘争にウンザリした事で作り上げた魔法である。
ここまで聞いた優秀なる善男善女ならすでに察していよう。
今の足元の光は オレを勇者召喚という名目で誘拐しようとした魔法陣であり、
それを察知したオレが回避しただけの事。
そう・・よくある光景だ。
なんせ、過去二回も勇者として誘拐されてたからな。警戒もするさ。
見えない落とし穴である魔法陣がオレにだけ光って見えるのは その為のスキルが働いたにすぎない。
本来は必要の無い能力だし、多少は疲れるのだ。
回避出来るとは言え 迷惑極まりない話だよ。
ともあれ、召喚には何人もの魔導士が命がけで魔力を使い果たす。
今回は一人の魔導士が死んだらしい。
これで暫くは平和に暮らせるだろう。
それから三か月くらい経っただろうか、性懲りもなく足元が輝きだした。
当然また回避する。
ピコーン
『勇者召喚ヲキャンセル。経験値ヲ獲得。
三名ノ犠牲者ヲ確認。過剰召喚ヲ確認。
敵陣営ノ魔導士ニ対スル負荷ノ増大ヲ確認。
魔導士20名ノ死亡ヲ確認』
・・誰かが災害に巻き込まれたようだ。
後ろを歩いていた男子高校生だろう。
えっ。おまえのせいだって??。それは違うぞ。
車が自分の方に突っ込んできた時、可能なら回避するだろう。
後ろに居た運の悪い人がその車に跳ねられたとしても回避した人が悪い訳ではない。
自分も被害者だからだ。
ほら、オレは悪くない。ないったらない。
しかし・・
三人召喚しただけで20名の魔導士が死んだのか?
修業が足りんな。レベルが低すぎる。
召喚したのはどこぞの異世界の国家だろうが、勇者という戦力が必要ということは戦争でもしてるんだろう。それが魔族か人間かは知らないが、一度にそんな数の魔導士を失ったらヤバイだろう。
誘拐された三人を救助しないとな・・。
だが、今はダメだ。
きっと勇者召喚された事に浮かれて舞い上がっているだろう。
うん・・経験者は語るだ。
彼らが現実を知って目が覚めるのを待たないとならない。
オレが召喚された時、敵は魔族や魔王などではなく・・人間だった。
二回ともだ。
最強で無双? 無い無い。
それどころか適当に魔物と戦わされ、少しのレベル上げしただけで戦場に駆り出された。
意図的に物語りの勇者のように強くはさせない、というべきだろう。
最強になって反逆されたら困るからね。
適度に強くなって敵に打撃を与えたら死んでほしいのだ。
ヨウスルニ、
オレは侵略戦争の捨て駒として呼び出されたのだ。
勇者?何それ、である。
ふざけるな、と言いたい。
分かるだろうか?・・剣と魔法で血吹雪と臓物が飛び交う戦乱の恐ろしさが。
ロマンなんて一欠けらも無い生きるか死ぬかの世界である。
幸いにも覚醒したスキルが転移だったおかげで戦いの混乱に紛れて逃げ出すことに成功。
その後は死なない為にひたすら魔獣を狩ってレベルを上げ強くなった。
ラノベで学習してたからね。
やがて、苦労の果てに転移スキルが進化し地球に帰還することができた。
何はともあれ・・
三人を誘拐した下衆な国の場所はハッキリした。
彼らを救助するついでに また、その国の召喚するための設備を破壊し、関係する文献を燃やし尽くし、魔導士達から記憶を消し去ってやらないとな。
こうしてオレは自分をエサにして誘拐犯を誘い出し、一つ一つ叩き潰していく。
やれやれ・・・(溜息)
キャンセル勇者 北の山さん @ofsfye
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます