かなもりゆうき(仮)との関係

 次はもう一人の親友であるかなもりゆうき君(仮名)とのお話です。まゆこちゃんとは一対一の思い出はそこまで多くないと書きましたが、かなもり君とは一対一の思い出がとってもたくさんあります。


 あと、家族ぐるみの付き合いがあるとかお互いの家によく遊びに行った、二人だけで語らうことが何度もあったなどの関係性を含めて、かなもり君との関係の方はいわゆるテンプレ幼馴染に近いかもしれません(笑)。


 彼と出会ったのはまゆこちゃんと同じく小一の頃ですが、彼の家に遊びに行くようになった時のエピソードで、彼が今でもたまにネタにするものがあります。


 当時、まだ小一で社会常識も知らないわんぱくな子どもだった私は、かなもり君の家にばたばたと突入するなり、バーンと家の冷蔵庫を開けてジュースを取り出そうとしたのでした。で、そこに居た彼のお母さんは顔を歪めて「何しとんのー!」と一喝。その後、人の家の冷蔵庫を勝手に開けるのは礼儀知らずであるとか色々説教を食らったのでした。


 ともあれ、官舎の2Fにある我が家に彼を招いたことも、豪華な分譲マンションの一室に住んでいる彼の家に遊びに行ったことも数知れずです。その分譲マンション自体が実は彼の祖父が設計したものだそうで、1Fと2Fに謎の小部屋があって、当時の私にとってはある種の秘密基地でした。他の友達と一緒にその秘密基地でゲームをしたこともあれば、二人でなんかよくわからない遊びをしてたこともあります。その謎の空間について今年、彼に聞いたところ「あれなあ。建築基準法的にはあかんのやけど、じいちゃんが持ち主やし。まあ、あのマンションも今はないし時効よ時効(笑)」と笑っていました。


 夏には「戦争展」という、なんか戦争を語り継ぐという名目だけど子どもにとっては単なるお祭りに過ぎない催しが近くの公園で開かれていましたが、彼とは毎年のように行って楽しんでいたものでした。この時のグループになんか女子がいたようないなかったような……まーよく覚えていませんが、そんな感じなのでした。


 小学校高学年になってからは、私もかなもり君も知恵をつけ始めるのが早かったのか、一早く科学や社会、お金といった物事に興味を持ち始め、日韓問題をはじめとする隣国との政治問題やお金の話について、二人きりでガキなりの拙い見識で偉そうに語っていたのでした。彼は商売人の家庭に生まれたのでそういうお金に直結する話には人一倍目ざとかったのじゃないかなと今では思います。


 当時、一部で流行っていたGS美神(古い)なんかも、お色気より「お金にがめついヒロイン」という観点で二人とも見ていた記憶があり「お金は重要よねえ」みたいな語りをしていました。まあ、ギャグ要素が強いとはいえ着目点がそういう現実味のあるところに行く辺り、気が合う仲だったのかもしれません。


 小学校の間、特別に仲良くしていたかなもり君との間柄ですが、やっぱり私のが進学に伴って少しずつ機会は減っていきました。ただ、そんな中でも私が大阪に帰って来たときには官舎に招いてゲームをしたり、日本橋電気街をかなもり君たちとめぐったのも懐かしいです。


 高校になると実家ごと京都に引っ越したので、さすがにやや疎遠にはなったのですが、たまに京都駅に遊びに来てくれたので、案内したり京都駅付近を巡ったのを覚えています(ちなみに、この頃の記憶を今年語ってみたところ「そんなことあったかなー」とさっぱり覚えていないようでした)。


 そして、関東の大学に行った私にとって、今の縁があるのはかなもり君が大阪の方の成人式に出ようと誘ってくれたことでした。このおかげでまゆこちゃんや他の同期とも再会出来たわけなので、ほんと感謝してもしきれません。やっぱりこのことを今年頭に話題にしたら「そーやろ。どーや、もっと崇め奉れ(笑)」とドヤ顔をしていましたが、彼が照れ隠しをするときはあえてこういう態度を取るのもわかっているので、なんていうか可愛いものです。


 そんな仲ですから、社会人一年目で色々苦労していた私でも、彼の結婚式だけはと結構無理を押して彼の結婚式には参加しました(てのがあるので、今思うとまゆこちゃんの結婚式より学会優先した私はアンポンタンだなと思うのですが)。会社には重要な友達の結婚式だから、平日だけど参加させて欲しいことを言って無理に早上がりにしてもらいましたし。途中でスーツ忘れてたことに気づいた時は青ざめましたが急遽大阪の現地でスーツを買って事なきを得ました。


 以降も彼が東京に来る機会があれば飲みに誘ってくれましたが、逆に彼が住んでいるところに私が赴くことがあれば機会を作って会ったりして、お互いなんだかんだで仲良くしてきました。彼の実家に泊めてもらったり、家族ぐるみのイベントに何故か私が誘われたりということも含めて、幼馴染らしい幼馴染(笑)な関係が今でも続いています。


 滅多に喧嘩もしない仲の良さがあった私たちですが、彼も大人になって一緒に会う機会も減ったからでしょうか。私との友情に不安を持つことはあったようで、去年の春の飲み会で


「なあ、真一。お前は俺のこと、親友と思ってくれとるんか?それとも、ただ単に色々頼める便利な奴と思っとるんか?」


 かなり深酔いした様子のかなもり君にそう言われたのを覚えています。ああ、こいつも俺が親友と思ってくれてるか気にしてたんだなと心の中で少し嬉しく思いつつ


「もちろん、親友と思っとるって」


 と返したのも印象深い思い出です。今年の夏に彼が博多へ引っ越しするときに、何故か下見について行ったのですが、


「なんかさ。小一以来やろ。付き合いももう30年超えるんよな。感慨深いわ」

「おう。俺の嫁さんよりずっと長いわな(笑)」


 エアコンがあんまり効いていないホテルの部屋で語らったのを覚えています。

 

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