第39話 線香花火
“カチャッ…カチャッ…”
食卓にみんなで座りカレーを食べている。
誰も話さないためスプーンの音だけ響いていた。
「ねぇ、何この空気?」
愛がヒロの耳元でつぶやく。
「わかんないけど…なんか重いよね…」
「なんか話してよ。」
「う、うん!みんな、ご飯食べたら花火しない?たくさん用意しているから!」
ヒロが明るく話をふってきた。
「花火?いいね!いいね!たくちゃんやろう!」
沙織が笑顔になると場が和んだ。
(沙織さんって本当太陽みたいな人だな…)
沙織の笑顔は確かに明るくて、可愛らしい笑顔だった。
だけど
その笑顔の裏に辛い過去を抱えていることは
巧でさえ知らなかった――
「キャーーー楽しい!」
「あぶねッ!やめろ!」
沙織と巧が二人ではしゃぎながら花火をしていた。
たくさんあった花火もあっという間に5人でやるとなくなっていた。
「あとは線香花火か…」
美優は線香花火を手に持ち、ひざを抱えて座り海を眺めた。
「何してんの?」
「巧…」
「ねぇ、巧…」
「ん?」
「どうして巧は私と結婚したいの?」
巧は手に持っていた火がついている花火を美優が持っている線香花火に近づけ火をつけた。
「沙織さんとか…すごく魅力的な女性だから。」
“ジジジジジジッ…”
美優の線香花火に火がつき先端が少しづつ丸くなっていく――
「あ…」
だけど綺麗に大きく丸にならなくて、落ちそうになった。
不安定で今にでも落ちそう…それはまるで自分みたいだった…
巧が手に持っていた線香花火を美優の線香花火とくっつけた。
何とか二人の線香花火が交わって、玉は大きくなって綺麗な丸になった。
“パチパチパチ…”
無事に火花が散った…
さっきまで不安定で、今にも落ちそうだった火種が嘘のように綺麗な線香花火になった。
「俺も…」
「え?」
「俺もいまだに愛とか結婚とかよくわかんねぇけど…でも――」
「こうやって、どんな時でも支えて一緒にいたいって、そう思ってる。ずっと一緒に…」
“ジュッ…”
線香花火の火種が砂浜に落ちた。
2本の線香花火の火種がひとつになって――
「焦らなくていいから、そのままの美優でいろよ、な?」
「うん…」
巧は私が不安になるようなことは絶対言わない
だから焦らなくていい
いつも私に安心を――
安らぎをくれる…
そう思ってた――
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