第30話 もう一度、あなたに恋をする。

「美優、早く早く!」




「なんか恥ずかしいよ///」




「巧君の復帰記者会見、美優にも見て見守ってほしいって言われたんでしょ?」





「だけど、こんな大学のカフェテリアで…」




そう、ここは大学のカフェテリアのテレビ――




巧にプロポーズされてから1週間




巧と美優は今までどおりの自分たちの生活に戻った。




それで今日は記者会見で久々に仕事復帰で緊張するから、美優にも見てほしいと巧が頼んできたのだ。




テレビにはたくさんのカメラとカメラマン、記者で巧が囲まれているのが写った。




あれだけの人がいたら私だって緊張する――




『では、日向巧さんの復帰記者会見を行います。質問をどうぞ。』




『体調はもう大丈夫なのですか?』




『はい、大丈夫です。ファンの皆様、関係者の皆様にご心配をおかけして申し訳ございませんでした。本日から現場に戻らせていただこうと思います。』




『噂されている彼女ですが、記憶喪失って本当ですか?巧さんのことだけ忘れているとか…』




『はい、そうです。僕のことだけ覚えていません。』




『ネットの噂では、その彼女にもう一度結婚を申し込んでいたとありますが、それは事実ですか?』




『はい、事実です。』





『ご自分のことだけを忘れられるって辛いことではないですか?』




『…』




巧は一度目を閉じ、今までのことを思い出しているかのように見えた。




“カシャカシャカシャッ…”




巧の一つ一つの表情を少しでも逃がさないとばかりにカメラのフラッシュ音が鳴り響いた。




『正直にいえば、これが二度目で…なぜ俺だけなのかと思ったこともあります。』




「巧…」




テレビ越しに美優がつぶやく。











『だけど、彼女に…同じ人に三回も恋愛ができるのは中々経験できるものじゃない。もう一度、彼女と一から恋ができるって幸せなことだって今では思います。』










「ヒューッ」




大学のカフェテリアでテレビを観ていた人達が美優をひやかした。




美優は顔から火が出るぐらい恥ずかしくなった。




「いいなぁ巧君。美優を愛してるって感じでさぁ~」




愛がアヒル口にしながら呟く。




『ところで今日はどうして片目がブルーなんですか??』




巧はいつもブルーの目が茶色になるようにカラーコンタクトをしていた。




「今日はありのままの自分を皆さんに見ていただきたくて、コンタクトせずに来ました。母も同じ目をしています。」




『母親というのは引退なさった真田楓さんですね?』




『楓さんはお元気なんでしょうか?』




『はい、元気にしています。表舞台に立つことはもうないけど、皆さんによろしくと伝えて欲しいとのことでした。』




巧の記者会見の様子は大学のカフェテリア




ビルに備え付けられている大型テレビ




色んな所のテレビでその様子が流れていた。




人気俳優ということで



各局で記者会見を流していたのだ。




街中の大型テレビの前にショートヘアの女性が立ち止まる。




「…え!?」




女性はガラス越しのテレビをくいるようにみる。




「この目…」




女性はテレビの端に書かれてある文字を読む。




「日向巧….?復帰記者会見?」














「もしかして……たくちゃん?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る