第28話 憧れの結婚式
数ヵ月後――
「ヒロ!遅いよ~」
「ごめん!」
「お兄さんの結婚式で遅れる人いる?」
愛が遅れてきたヒロに怒っていた。
「ネクタイ曲がってるよ。」
愛がヒロの曲がったネクタイを直してあげた。
「…来ないのかと思ったよ。」
「え?何で?」
「美優の結婚式だから…よしッ!」
「美優のことは、もういいんだ。兄さんは俺の憧れだから、惹かれるのは無理ないよ。俺が女なら兄さんに惚れるよ。」
「そう?私はヒロのことが好きだから…ヒロと結婚するかな。」
「え!?今好きって言った!?じゃあ、あのキスは…」
「…鈍感。私は好きな人としかキス…しないよ?」
「愛…」
「さ、早く中に入ろう!」
「え!?ちょっと…」
ヒロは愛に引っ張られて美優の家の中に入る。
今日は美優の家のレストランで、二人で結婚式を挙げたように結婚式をあげることになっていた。
あの時は二人きりだったが、今度は大切な人たちに祝福されながら…
「巧、美優ちゃん、おめでとう。今日は本当に呼んでくれてありがとうッ…」
楓が涙ぐみながら巧と美優にお礼を言う。
「二人のこんな姿がみれて嬉しいわ…巧、幸せになって。」
「母さん…俺最初はまだ母さんのこと正直受け入れれなかった。だけど美優に血を分けてくれたとき、母親って感じがした。俺の母親が母さんでよかった。」
楓が涙をハンカチで拭いながら頷く。
「今度…三人で家に遊びに行ってもいい?」
「…三人って…」
美優と巧が美優のお腹に手を当てた。
「……もちろんよ!いつでも帰ってきて。あなた達の家でもあるんだから。」
楓はあふれる涙を一生懸命ハンカチで拭おうとしているが、間に合わないぐらい涙があふれ出た。
“コンコン…カチャッ…”
「沙織さん…」
「結婚おめでとう、たくちゃん、美優ちゃん。」
「沙織さんこそ、今日は素敵なドレス選んでくれてありがとう!」
「当たり前じゃん!たくちゃんと美優ちゃんの結婚式だからね。スタイリストとしても完璧な仕事をしたつもり。」
「これからお前どうすんの?俺が芸能界をやめてしまったから…」
実は巧はあのあと芸能界を引退し、父親と同じ監督の道を選んだ。
もう、自分で演じるのには限界を感じ、美優や楓、ヒロや父親の家族にサポートしてもらい、大きな決断をしたのだ――
“――どこに行っても、どんなことがあっても
私たち二人なら大丈夫――”
今までは巧が美優の自信を与える側だったが、今では美優も強くなり巧が迷っているときに自信をくれるようになった。
「私、海外に行くんだ。もっと服のこと勉強したいから。」
「沙織なら頑張れるよ。」
「うん…たくちゃんも新しい環境で頑張って。美優ちゃん…」
「うん?」
「なんか…いろいろとごめんね。私のせいで色んな嫌な思いしちゃったね…」
「ううん。沙織さんが悪いんじゃない。私が弱かっただけ。」
「…たくちゃんをよろしくね。」
「うん!」
楓と沙織が部屋から出て行き、美優と巧が部屋で二人きりになった。
「美優、結婚指輪なんだけど…」
「うん?」
「作ったんだけどサファイアいれるの忘れて作ってしまって…」
「サファイア?」
「サムシングブルーとして前の結婚指輪にはサファイアいれて作ったんだけど…何か青いものを身につければ幸せになるんだけど…」
「ふふ、サファイアなんていらないよ。」
美優は巧の頬にそっと手をあて、ブルーの目を見つめる。
「巧が私のサムシングブルーだから。」
ねぇ、巧――
結婚って契約だよね?
――え?
だって“あなたを一生愛します”って契約するようなものじゃない?
――もう二度と離さないから、一生愛するから、ずっと俺のそばにいろよ
――うん
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