第27話 もう一度きみと…
次の日、巧は美優の病室のドアの前に立っていた。
自分に何かを言い聞かせていた。
「よしッ!」
“ガララララッ…”
「美優、あのさ…」
美優の部屋に入ると美優はベッドのテーブルにあの古いカバンと三人で写った写真と手には巧があげた靴を手に持っていた。
「あ…」
「…その靴…」
「これ、あなたが私にくれたものじゃない?そうじゃない?」
「あぁ…俺がお前にあげた靴で、二人で結婚式を挙げた時にも履いた靴だ。」
「やっぱり…思い出せそうで思い出せないの…あなたのこと…あなたのこと好きだった自分を思い出したいのに…」
美優は頭を抱え込みはじめた。
巧は椅子に座り、美優の手をそっと握った。
「美優、もういいんだ。もう思い出さなくていい。」
「でも…」
美優が申し訳なさそうな表情をする。
巧は写真をバッグの中にしまった。
「俺も焦ってた。美優に俺のこと思い出してほしかった。だけど、大事なのは、美優が目の前にいるってことだって気づいたんだ…」
巧は美優が手に持っていた靴を手にし、床に靴を置いた。
そして美優の前に跪いた――
「美優、愛してる――」
「俺ともう一度結婚してほしい。」
「だけど…もし私があなたを好きにならなかったら…?」
「お前は俺を好きになるから大丈夫だ。絶対俺を好きにさせる。」
巧は以前美優に契約結婚を迫った時に言った同じ言葉を言った。
巧の真剣なまなざし
自信にあふれる言葉
巧のその態度が
美優の不安をすべて吹き飛ばしてくれた――
巧が微笑みながら美優に手を差し出してきた。
美優はそのまま引き込まれるかのように巧の手に自分の手を重ね、靴に足を通す。
「フフ…」
お互い優しい表情をして微笑みあった。
「ちょっと押さないでよッ…」
「やばいやばいッ…」
ドアのほうから声が聞こえてきて、巧と美優は不思議そうな顔でドアを開けてみた。
「キャッ…」
「え!?」
外にはたくさんの女性患者や看護婦さんが廊下に立っていた。
「すいません!あまりに素敵だったんでつい…」
どうやら最初巧を見にきたファンがどんどん増えていったようだった。
「見られちゃったね…」
美優が巧に話しかけると巧は恥ずかしいのか顔を真っ赤にしていた。
でもこのことがきっかけで、SNSなどで二人のことが話題になり、二人はファンの間で公認の仲になった。
マスコミも二人のことを悪く書く人はいなくなった。
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