第19話 ラブレター
あれから二週間が経った――
携帯の電源をいれても以前のように着信の嵐は少なくなった。
愛に連絡をしたらマスコミもどんどん減って、今はいないぐらいだと聞いた。
ヒロとは一緒にご飯を食べて、課題をして、夕飯のあとテレビ観ながら話をして、別々に寝る。
ルームメイトみたいに過ごしていた。
「ヒロ…」
「うん?」
「私、家に戻ろうと思う。」
「…大丈夫?」
「本当は怖いんだけど…でもこのまま逃げ続けても解決にならないし、大学卒業したいんだ。」
「…そっか。」
「付き合ってくれて、ありがとう。」
「…ううん。俺のほうこそ、思い出作りありがとう。楽しかったよ…」
「私は…ヒロと小さい頃から一緒にいて、たくさんの思い出作って…きっとヒロだったから楽しかったんだと思う。」
「…そうだな。」
二人は荷物をまとめて、美優から家を出る。
「ヒロ?」
ヒロは深呼吸をして家を出る。
「行こうか、美優。」
ヒロは晴れ晴れとして表情をして美優に話しかけた。
ヒロは自分の想いを、今までの美優への想いを
ココに置いていった。
車に荷物をつめ、美優も助手席に座った。
「美優、巧に会いたい?」
「…え?」
「巧に今すぐ会いたい?」
「う、うん。」
「じゃあ、会いに行こう。」
そういってシフトチェンジして車を発進させた。
「ヒロ、どこ行くの?」
「着くまで内緒。」
「巧に今会ったらまた…」
「帽子かぶってれば大丈夫だよ。美優のことはテレビでは顔も名前もでてなかったから。俺も近くにはいるから。」
「…うん、わかった。」
ヒロはそのまま高速へ乗って空港へ向かった。
「空港?」
「海外に行ってたんだって。今日帰ってくるらしいよ。」
「え!?でもマスコミがいっぱいいるんじゃない?」
「まぁ、だから遠くから見るぐらいになると思うけど、それでもいい?」
「うん…それでもいい。ありがとう、ヒロ!」
想像より空港はマスコミがたくさんいた。
巧のファンもうちわなどを持って帰ってくるのを待っていた。
「美優…そんな遠くでいいの?」
「うん…元気な姿がみれればそれでいい。」
「…本当に好きなんだね。」
「え?ごめん、なんていった?」
「いや、ううん。」
「私にも気づいてほしいけど…これだけ人がいたら無理だよね。」
「巧は絶対美優を見つけるよ。」
「キャーーー!」
ファンの人たちの黄色い声援でヒロの言葉は美優には聞こえなかった。
「美優、もう少し前にいきなよ。俺はもう少し離れるよ。」
そういってヒロが美優の背中を押した。
「巧…」
深く被った帽子を少しだけ上にあげて、久しぶりの巧の姿を見た。
(元気そうでよかった…)
巧はファンの子達にサインを書いてあげていた。
(こういうの見ると本当に芸能人なんだな…)
美優が巧を見つめていると、巧と一瞬目が合ったような気がした。
これだけ遠くに離れていても一瞬目があっただけなのに、好きって気持ちがあふれ出しそうになった。
記者達がいろいろと巧に質問しているが、質問には答えずにファンとコミュニケーションをとっていた。
橘がマスコミと巧の間に入り、巧にそろそろ…と言っていた。
(私も帰ろう…あとで連絡してみよう。)
そう思った瞬間、巧がこちらに向かって歩いてきた。
「え…え!?」
美優は挙動不審になり、とりあえず帽子を深く被った。
(こんな所で近づいてくるの!?)
巧が一歩美優に近づくたび、美優の心臓の鼓動は高鳴った。
“カツン…”
美優は下を向いて巧の足元を見ていた。
巧の足は美優の隣を過ぎていった。
「え…?」
“カサッ…”
巧はそのまま通り過ぎてしまったが、手に何か渡された。
立ちつくす美優のところにヒロがやってきた。
「どうしたの?」
「これ…渡された?」
ヒロと手の中のものをみるとキャンディーの包み紙だった。
「ゴミ?」
美優は包み紙の裏を返してみた。
「これ…」
「…なんかさ…言いたいこととか聞いてほしいこととか色々あったんだけど、これ見たら言えないや…ふふ。」
美優は飴の包み紙を見てニヤける。
「さっきサインしてた時に書いたんだろうな…俺には思いつかないや…」
「私、これでこれから頑張れそう!きっとクリスマスまで会えないと思うけど…クリスマスまで頑張る!」
「クリスマス?」
「クリスマス会う約束したんだ。」
「クリスマスは…」
「ん?」
「いや、何でもない。」
クリスマスは
美優、巧、ヒロの三人にとって
別れの日――
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