第14話 奇妙なデート

「…ずっとそうしてんの?」




「うん…」




「ずっとって…寝てないってこと?」




「うん。」




美優はずっと巧の寝顔を見ていた。




「巧の肌綺麗だから、シミとかないかなって探してた。」




巧が今度は美優の顔をじっと見てきた。




「19歳のわりには肌荒れてんな。」




「もう見ないでよ!」




「自分が先に見てたんじゃねぇか。」




眩しい朝日が部屋中に入ってきて、お互いの顔はライトに照らされたみたいによく見えた。




「今日大学は?」




「今日は休み。巧は?」




「今日夜9時から仕事。」




「そうなんだ…」




美優はシーツに包まりながら起き上がる。




「美優、デートしよ。」




「え!?デート!?」




「そう、デート♪そうと決まったら家出るから早く着替えろ!」




「え!?デートなんてできるわけないよ…橘さんに怒られるよ!」




「いいから来い。」




戸惑う美優を無理やり家から巧は連れ出した。




巧は帽子にメガネで、美優もメガネをかけて出かけた。




「それで…どこ行くの?」




「腹減ったから~あ、そこ右のファミレスで。」




二人は離れて歩いて、電話で会話をした。




「先に座ってて。」




巧に言われたとおりに先に入ってソファ席に座った。




一時するとお店の中からキャーキャーと声が聞こえてきた。




「あれ日向巧だよね?」

「ファミレスにくるんだ!てか一人!?」

「え!?誰かと待ち合わせ!?」




美優は縮こまりラインでバレてるよ!って送る。




だが巧は堂々と中に入ってきて美優の横に来た。




(バレてるってば!!)




美優は他人のふりをしていた。




“スッ…”




「…え?」




巧はそのまま素通りし、美優が座っている席の隣に座った。




隣のソファ席だが向かい合って座っているので、ひとつの席に向かい合って座っているようだった。




美優はホッとしながらも、こうやって外で外食できることが嬉しかった。




美優が注文すると巧も注文した。




「何注文した?」




「秘密。でも一緒だったら面白いね。」




結局二人が頼んだのは、グラタンだった。




「「朝からグラタンって…」」




二人は目を合わせ微笑み合いながらグラタンを食べた。




同じものを同じ空間で食べるって幸せなことなんだなと美優は改めて感じた。




『次どこ行きたい?』




『映画とかって大丈夫なのかな?私は映画観たいんだけど…』




『わかった。じゃあ近くの映画館わかるか?』




『わかるよ~じゃあそこにいけばいいのね?』




『恋愛系とか俺嫌だからな。』




『わかった~』




そんなやり取りをしてファミレスを出た。




「恋愛系嫌だって言ってたけど今の時間恋愛しかないな~ふふッ恋愛にしよう♪仕方ないよね~」




『今の時間恋愛しかないから恋愛にした』




とラインした




美優が席に着くと始まる直前に後ろの席に巧がきた。




「ねぇ、見て!日向巧一人で映画観に来ているよ!」

「しかも恋愛系って…」




気づいた周りの人が小声で話していた。




美優は気まずそうに上を見上げると巧と目があった。




「覚えておけよ!」




口パクで言われて慌てて前を向いた。




「おい!起きろ!終わったぞ!」




「へ!?」




美優は映画の途中で寝てしまい巧に上から起こされた。




巧とは他人のフリで通り過ぎようとしたら「お前マジ今日の夜覚えておけよ。」と言われた。




(怒らしちゃった~まさか寝るなんて…)




外を出ると秋らしい肌寒い風が吹いていた。




『私行きたい所があるからそこにいこう。』




美優のあとを巧はついていった。




「きれ~」




美優は巧と電話で会話をした。




美優がいきたかった場所はイルミネーションがある場所だった。




「時期的にまだ早くないか?」




「ここは秋からやってるよ。カップルがいつも多いから好きな人と見てみたかったの。」




好きな人といっても、隣で見ることはできない。




周りのカップルを見るとみんなくっついて見ていた。




これから先ずっとこんな風にみることはできないのかもしれない…




そう思うとずっと見たかったイルミネーションなのに、もう二度と見たくないと思ってしまうのはなぜなんだろう…





「美優…」




巧が話しかける声が電話から聞こえると後ろから抱きしめられた。




「たく…み?」




美優が後ろを振り返ろうとすると手に持っていた電話を取られた。










「俺ならこうやって堂々と美優と一緒にいられる。」








「ヒロ…」











「宣戦布告のつもりか?」











「お前と同じ土俵にたって、もう一度美優に選んでもらう。」




「俺から奪えると思うのか?」




「もう二度とお前に負けない…」




周りのカップルが巧に気づき始めて騒がしくなってくる。




「帰ったほうがいいんじゃない?美優は俺が送るよ。」




「…」




「美優が嫌がることはしないよ。じゃあ。」




そういってヒロは電話を切った。











「……二度と?」










巧はヒロが言ったことが気になりつつも、周りが携帯で写真を撮り始めたのでその場から去ることにした。




自分の好きな女を好きだという男と好きな女を置いて帰るほど、屈辱的なことはなかった。




何度も立ち止まり、二人の後姿を見た。




巧からみてもカップルのように見えた。




自分にはお金でモノが買えても、普通の人が感じれる幸せをあげれないのか…




美優を幸せにするためには、自分はいないほうがいいのか――そう考えながら、巧はその場から立ち去った。




――撮影現場――




「おはようございます。よろしくお願いいたします。」




ドラマの撮影現場に巧と橘は挨拶をしながら訪れた。




「ッ――」




「どうしたの?」




「コンタクトが…」




「あ、ちょっとここ座って…新しいの持ってくるわ。」




橘が控え室へ走っていく。




「あ、おはようございます、真田さん。」




「今回の回に出演してくださる真田楓さんです。よろしくお願いします!」




ヒロの母親の楓がドラマのゲストとしてやってきた。




「あなたが日向巧さんね?噂は聞いているわ。」




楓が巧のそばにやってきた。




「あ、おはようございます。」




「この間はパーティーごめんなさい。代わりに息子をいかせたけど大丈夫だったかしら?」




「はい、ご子息のおかげで素敵な時間を過ごせました。」




「…あら?あなたどうしたの?」




巧はずっと目を押さえていた。




「コンタクトが合わなかったみたいで…」




「抑えてたら目が傷つくかもしれないわ。」




そういって楓が巧の腕を握り、心配そうに巧の目を見る。




「その目…」




「あ、すいません。気持ち悪いですよね。」




「…片目だけブルーなの?」




「はい。」




「ご両親は?ご両親は外国人の方!?」




「いや…両親はどうたったか知らないです。ただ母親と同じ目だったぐらいしか…」




“ドサッ…”




「真田さん!?大丈夫ですか!?」




周りのスタッフが倒れた楓を介抱する。




「とにかく真田さんを横たわらせれるところへ…」




「え!?巧、真田さんどうしたの?」




「わからない。俺の目をみたら急に…」




楓は立てないぐらいフラフラしていたため、楓の出番はカットし撮影が始まった。

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