第7話 契約結婚!?

「じゃあ…お世話になりました。」




美優は最初着ていたワンピースを着て巧にお礼を言う。




「それ…持ってけよ。」




「それってこれ?」




美優が着ていた赤のドレスやアクセサリー、靴やバッグのことだった。




「誕生日プレゼント。」




「え!?こんな高価なのもらえないよ!私は料理とケーキしかあげてないし、お世話になったのに…」











「お前の料理はそれだけの価値があるって言ってんだから貰っておけ。」










巧は美優に背を向けながら言った。




“ドキッ…”




まさかそんな台詞を言われるとは思わなかったし、ときめくとも思わなかった。




(今ときめいたのは夜景のせい、夜景のせい、夜景のせい…)




自分に言い聞かせていた。




「…うれしいけどさ、やっぱり~」




「お金、困ってるんだろ?いらないならそれを売ればいい。」




「え…」(誕生日プレゼントを売るなんて…いやでも少しでも借金の足しになったら…)




ゴクリと唾を飲み込みながらよく考えた。




「じゃあ…ありがとうございます。」




「あぁ…」




「じゃあ…」




「下に車呼んでいるからそれ使え。」




「いいの?」




「あぁ…」




「ありがとう。」




そういって美優は部屋を出て行った。





美優が部屋を出て行ったのを確認すると、巧はニヤリと笑った。




「良いことを思いついた…」




そう呟いて携帯を手に取った。




「これから面白くなりそうだ。」










なんで私はこのときこの誕生日プレゼントを持って帰ったんだろう…




これをもって帰らなければコイツと結婚することになんてならなかった…













コイツの罠にどっぷりと嵌った











契約結婚への道のりへーー









「はぁ…久しぶりのお家だ。お父さん、お母さん、ただいま。」




美優は仏壇の前で手を合わせる。




「嫁入り前に男とホテルに泊まってごめんなさい!」




そういってチラッと巧からもらった服やアクセサリーを見た。




「本当に売っていいのかな~なんか気が引けるな…」




特にネックレスやイヤリングは輝きが綺麗だった。




「でも確かにこんなドレス持っていてもこれから着る機会もないしな~借金の足しになったら…査定だけでもしてもらおう!」




そういって巧からのプレゼントを広げた。




「靴…」




美優は靴を手に取り、巧のことを思い出す。




あの日王子のように手をさし伸ばしてきてくれたこと、こけたときすぐにお姫様抱っこで助けてくれたこと、靴を履かしてくれたこと――




「はッ…うっとりしている場合じゃない!」




靴を丁寧に箱にしまう。




「……でも靴って一度履いたものだから買う人いないかも!」




自分に言い聞かせるように大きな声で独り言を言ってクローゼットにしまった。




次の日




ドレスとネックレスとイヤリング、そして鞄を売りにいった。




「お客様…こちらどうされたんですか!?」




「え…誕生日プレゼントって言われて…」




鑑定士は箱などもじっくりと見る。




「こちら買取価格こちらでいかがでしょうか?一日しか使っていないんですよね?」




「はい、そうです…えーー!桁多くないですか!?」




「いえ、こちらネックレスだけでも1千万相当のものでございます。ブランドものなのでそういう価格です。」




「イヤリングも同じブランドです。全部で500万でいかがでしょうか?」




「500万…」




(借金が半分返せれる!)




「お願いします!」




その500万でお店の借金の半分を美優は返済することができた。




だけど残りの500万と大学、生活費があった。




「大学は奨学金で、借金と生活費はバイトで…」




美優は家に帰って電卓をたたいて計算していた。




「やっぱり大学辞めて働いたほうが…」




美優が凹んでいると




“ピンポーン”




「え?」




インターホンがなった。




インターホンの画面をみると帽子を被った男性が立っていた。




「…どちら様ですか?」(めっちゃ怪しい!)









「一日で顔忘れるのかよ。」






「…はい?」









「俺…」




そういって帽子を巧は脱いだ。



片目がブルーの正真正銘の巧だった。




「え!?何で?え?何!?」




「…とりあえず腹減った。」




「はい?」




「何か食わして。」




「はいぃぃぃ??」




「マジでうまい!!」




美優が作ったチャーハンを口いっぱいに頬張って巧がいう。




(何で結局作っているんだろう…はぁ…)




「なんかさ、美優のご飯食べたら、今日どんな高級なお店とかで食べても味しなくてさ…」




「そ、そう…?」(また喜んでしまう、自分!)




「ご馳走様~お腹いっぱい。美優、ありがとうな。」




「いえいえ…」




改めて巧の顔をみると、睫毛が長くて目が大きく、鼻はスッと高く、色白で唇はキスされたら気持ちよさそうな弾力のある…




「ハッ…!」




美優は自分が今思っていたことが恐ろしく感じた。





「え…っと今日はどうしたの?てかどうしてここわかったの?」




「あぁ、運転手に聞いた。」




ホテルから送ってもらった運転手にここを聞いたらしい。




「あとさ…返してほしいものがあって。」




巧がニコニコしながら美優を見つめる。




イケメンのニコニコの笑顔に美優はドキッとする。




(やっぱりかっこいい!)




だけど次の一言でかっこいいって思った自分が情けなくなる。









「アクセサリー返してほしんだけど。」








「………え?」




「ネックレスとイヤリングを返してほしんだけど。」




「どう…して?」




「ドレスや靴は購入したもんなんだけど、アクセサリーはレンタルなんだ。」




「レンタル?」




「そう…ああいうのレンタルできるんだよ。結構な高級品だから今日返却しなくちゃいけなくてさ。」




美優は血の気が引いていくのが自分でも感じた。




「持ってきてくれる?」




「…まさか売ってないよな?」




イケメンのニコニコと笑っている顔は本当カッコいい。




だけどコイツの笑顔は本当に悪魔の微笑みにしか見えない。




「あのアクセサリーも私へのプレゼントだと思って…私売っちゃった…」




「…売った?」




「まだあるかどうか確認してみる!」




美優は急いでお店に電話するがすぐ完売したといわれた。




「私お金頑張って返すから!本当にごめんなさい!」




「…元がいくらだか知ってるか?」




「うん…」




「そのお金に、レストランの借金、大学のお金とか払えるのかよ。」




「それは…」(さっき残り500万でも苦しいって思ったのに…)




美優が困った顔をしていると巧はニヤッと笑った。




「俺が全部払ってやるよ。」




「え!?全部って全部!?」




「別に対した額じゃない。大学もこれからの生活費も払う。ただし…」










「俺と結婚しろ。」










「………………はい!?」









「はいってOKってことだな。」




「そのはいじゃなくて、どういう意味っていうこと!」




「う~ん、結婚したら妻になるわけで、妻の借金や生活費は夫である俺が払う…」




「いやいや結婚しなくても、お金貸してくれるっていう関係でもよくない?」




「あ、あと美優のご飯もずっと食べたいし。」




「それなら家政婦で私を雇うっていうことでいいんじゃないの?結婚って好きな人とするものじゃないの?私のこと好きなの?」




「ん~」




「美優、お前はどうなんだよ…」




離れて話していた巧が美優に近づいてくる。




「え?私?」




「俺と結婚するってことどう思う?俺のこと嫌い?」




美優は迫ってくる巧から後ずさりするものの、壁にぶつかって逃げ場がなくなった。




「嫌いじゃないけど…」(でも好きでもないような…でもイケメンでお金持ちと結婚できるチャンスなんてもうないかも?)




「じゃあいいじゃん。」




ニパっと笑って巧は座っていた場所へ戻る。




「でも好きでもないし!」




「俺は好きだけど…」




「え…?」




「お前の料理。」




料理といわれ少しショックを受ける。




「お前の料理ほかの男にもう食べさせたくないんだよ。」




「…」




そんな風にいわれてうれしくなる自分が少し嫌だった。




「お前が料理を作ってくれれば、俺は残りの借金とこれからのお金を払う。どうだ?」




「借金がなくなるのは嬉しいけど…なんか契約結婚みたいな…」




「契約結婚?」




「だって感情とかないじゃない…」




「…それいったら昔の人たちはどうなる?見合い結婚はどうなる?」




「今は昔じゃ…」




「最初は契約結婚だとしても、そのまま契約結婚になるかはお前次第だ。」




「わたし次第?」




「お前が俺を好きになればいい。」




上から目線の発言にカチンときた。




「なんでアンタなんか!」




「アンタだぁ!?」




“バンッ!”




巧は机に紙を広げて叩いて置いた。




「じゃあこの結婚の契約にひとつまた条件をつけてやる。」









「お前は俺を好きになるから大丈夫だ。絶対俺を好きにさせる。」









この自信はどこから来るのだろう。




巧が広げた紙を見ると婚姻届だった。




もう巧の部分はすでに記入してある。




「どうする?」




本当にコイツのこと好きになれる?




これからの生活は保障されるけど大丈夫?




「もし…私がアンタのこと好きにならなかったら?」




「…その時は離婚してやるよ。」




その時はすぐに離婚できるそう思っていた。




だけど現実はそんな甘くなくて





すぐ離婚なんてできない人と結婚しようとしていた。





19歳の箱入り娘で育てられてきた私にとって





社会の厳しさがわかっていなかった


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