異世界に転生したので冒険者を目指そうと思ったが俺のクラスは生産系の修理工。これって戦闘に向かないのでは? だが、前世のある俺だけ2つ目のクラスがあった。やれやれ。これなら何とかなりそうだ。

くろげぶた

第1話 俺の名前はシューゾウ・モーリ。この年5歳のナイスボーイである。

俺の名前は森田 修造。30歳のナイスガイである。


今日も元気に工場での流れ作業。

ベルトコンベアを流れる商品に手元の部品を組付け、再びベルトコンベアへと流していく。修造にとってはもはや手慣れた作業である。



そんな1日の仕事を終えた帰宅途中、駅へ向かうべく歩く修造の前を1人の少女が歩いていた。


背中のランドセルから見て小学生だろうが学校帰りには遅い時間。塾の帰りだろうか?


小学生も大変だななど思いながら歩いていると、突然、横道から飛び出した大男が少女を抱えあげる。大男にとって少女など軽いもの。口を塞がれ声も出せないまま、少女は横道の暗がりまで連れ込まれ──


などと呑気に見ている場合ではない。

とっさに携帯を手に俺は男の後を追って駆け出した。


プルルル……


「はい110番です。事件ですか? 事故ですか?」


「あー。事件だと思うのですが……」


ドカッ!


横道に駆け込んだところで、俺の後頭部に棒状の物が叩きつけられていた。


迂闊っ! 仲間がいたのか!?


「どうしました! 何か音がしましたが大丈夫ですか!」


携帯から聞こえる音が遠くなるにつれ──


「パトカーを手配します! そのまま動かないで──」


俺の意識もまた暗闇へと落ちていくのであった。





俺の名前はシューゾウ・モーリ。この年5歳のナイスボーイである。


いきなり何を言っているのかと思われるが、俺には前世の記憶がある。

かくいう俺もつい最近、5歳となって思い出したばかりの記憶だが、前世の俺は森田修造。生まれは日本の30歳のナイスガイであった。


森田修造として生きた記憶、その死の瞬間までも鮮明に思い出せるので間違いない。


どうやら一度死んだ俺はシューゾウとして転生したわけだが……ファック!

まさか前世の俺が少女誘拐犯にぶっ殺されようとはな。


せめて少女が無事であれば前世の俺も浮かばれるというものだが……

まあ死ぬ前に110番はしているのだ。GPSの逆探知もあるわけで警察が何とかしただろう。したはず。というわけで前世の俺は無事に成仏、めでたしめでたし。もう思い出すのは終わりである。


今、俺が考えるのは今世の人生をどう生きるか? にある。


この世界は剣と魔法と魔物の中世風ファンタジー世界。


俺が生まれたのは正統アウギュスト帝国にあるダミアン村。

農業を主要産業とする人口800人程の村で、俺が生まれたモーリ家もまた農業を営んでいる。


モーリ家の家族構成は6人。

父 レオン (28歳)

母 アグネス(32歳)

長男 アイン(10歳)

次男 イザーク(9歳)

三男がこの俺 シューゾウ(5歳)

妹 カルフェ(3歳)


自宅が農家ということもあって裕福ではないが食べるには困っていない。

では将来は安泰かといえば、決してそういうわけでもなかったりする。

実家の農業は長男であるアインが継ぐことから、三男であるこの俺シューゾウはいずれ家を出て自立する必要があるというわけだ。


では、村で結婚相手を探して農業をやるかといえば、そうとは限らない。

この異世界には神の力が色濃く残っており、ステータスもあればレベルもスキルもあるという。


そして10歳の誕生日を迎えたその時、人は神からクラス職業を授かる。

クラス職業はその者の将来を決定づける指針。


「ステータス・オープン」


そっと呟く俺の目の前にウインドウが表示された。


-------------

名前:シューゾウ・モーリ(5歳)

LV:1


EXクラス:九死一生

スキル  :火事場の馬鹿力(F)

スキル  :消費成長   (F)


HP  :5

MP  :5


攻撃  :5

防御  :5

敏捷  :5


魔法攻撃:5

魔法防御:5

-------------


前世の記憶が残っている影響か?

俺は5歳になったその時、前世の記憶を思い出すとともにクラスを授かっていた。


クラスは【九死一生】

一般には「九死に一生を得る」と言われることわざで、死を避けがたい危険な瀬戸際で、かろうじて助かることを言う。


異世界で生まれ変わった今の状態が、助かったと言って良いのかどうかは何とも言い難いところであるが……


問題はこのクラスが、普通のクラスではないことにある。


両親にクラスの種類について聞いてみたところ、農民、商人、鍛冶師、修理工、戦士、神官、魔導士といった名称を聞くことはできたが、九死一生などという名称は出てこなかった。


そもそもがクラスではなく、EXクラスなのだから普通でないのは明らかというもの。


【九死一生】の職能は、危機的状況から生還すると戦闘系スキルの熟練度を得る。

くわえて、スキル【火事場の馬鹿力】【消費成長】を習得できるとある。


スキル【火事場の馬鹿力】は、危険な状況になればなるほどパワーアップする。

ピンチからの一発逆転スキルというわけだ。


そしてスキル【消費成長】は、HP、MPの消費量に応じて最大値が成長する。


これまた両親から得た知識によると、ステータスは20歳となるまでは誕生日を迎えるごとに成長するが、それ以降はLVアップでなければ成長しないという。


そんな世界で俺はダメージを受ければ最大HPが、MPを消費すれば最大MPが上がるのだから圧倒的アドバンテージ。


となれば、田舎村でおとなしく農業をやっている場合ではない。

剣と魔法、魔物もいればダンジョンもあるというのだから冒険に出るしかない運命。

俺は将来の冒険に備えて、5歳の今からHP、MPを増やしていくことにする。

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