第101話 新たな仲間
「放て!!」
姉であるフィリアの掛け声とともに妹であるメルクーリヤが矢を立て続けに三本放つ。
姉妹の放った六本の矢は全て、魔物の目を射抜いてみせた。
「やるな」
ヒルデガルトが姉妹の様子に感嘆の声を上げた。
「すごい……」
詩織が錫杖を握りしめながら、弓術の粋を極めた姉妹に見惚れていた。
「私達も負けてられないなっ!!」
「行きます、
ヒルデガルトが剣を構え、コルネリアは本気モードに突入する。
「はあぁっ!!」
「喰らえ、なのです!!」
ヒルデガルトは研ぎ澄まされた剣の技を繰り出し、コルネリアは戦狼の名に相応しい乱闘を展開する。
目にも止まらぬ速度で繰り出される二人の攻撃を前に魔物たちは次々と屍へと姿を変えていった。
屍山血河となった一帯は、恐ろしく濃厚な血の匂いに包まれた。
「不思議よね、前まで臭くて近づきたくもないと思ってた魔物の屍に、今は何とも思わないのだから」
「慣れってのは怖いよな」
俺も当初は汚いと思ってた魔物の屍に、今は平気で触れることができる。
「まぁ、それも明後日で終わりよ」
エリスは嬉しそうに言った。
毎日数度はある戦闘のせいで一日の行動距離は大したことは無いが、数日がかりでようやくシュヴェリーン公国の公都ロストックに辿りつこうとしていた。
「そうだな。どれほどの敵がいるのか、想像したくはないな」
勇者パーティも数日後にはロストックで合流しそうだという話が、ケルテン王国の補給部隊から届いていた。
「まぁ何にせよ覚悟を決める必要がありそうだ」
ヒルデガルトは、どこが物憂げな表情でロストックが位置する北の方角を見つめたのだった。
◆❖◇◇❖◆
「随分とコケにしてくれるね」
遊戯を司る神、ヘルメスにいつものような余裕は無かった。
切り札として用意したヴァンパイア・クイーンを奪還され、自身は神殺しの秩序に追われて片腕を失っていた。
「でも君たちが上手くいくのも今のうちさ」
頬をひくつかせながら少年は眼下にいる春人一行を怨嗟混じりの視線で見下ろした。
「何故なら次の君たちの相手はこの僕だからさ」
既に数体の神の持つ秩序を取り込んだヘルメスは、それまでよりも格段に強くなっいた。
それまでヘルメスが意図して回避してきた戦闘も、もう厭わなくてもいいほどだった。
「何しろ僕に人族風情が付け入る隙はないからね」
自ら手を下すという選択肢が、余裕のなさゆえのものであると知ってか知らずかヘルメスは、自らに言い聞かせるように独白した――――――。
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