第二話 再現魔法
「まずは『魔法再現』ってのを調べなきゃな」
自分のことを知らなければ何も出来ない。
そう思い近くにある王立図書館に足を向けようとして、俺は気付いた。
俺の体は記憶を含めて創造神エステルの知識と魔力を取り込んだのだ。
仮にも創造神と名乗るのであればそれくらいのことは知っているだろう。
『魔法再現』とは何か。そしてどのようにして行なうのかを自分に問い質す。
すると視界に文字が浮かび上がった。
†『魔法再現』とは《私》の生み出した失われた古代魔法を甦らせるための手段。その手法は簡単で、自身の望む光景を想像することで最もその光景に近い古代魔法を甦らすことが出来る。一度行使した古代魔法の詠唱はその脳裏に焼き付き記憶に残る†
なるほど……かなり便利な魔法だな。
この能力を持ってしても創造神エステルはその想いを遂げることが出来なかったというのか……。
「試しに何か古代魔法を再現してみようか」
とりあえずは脅威から身を守る必要があるから協力な防護が欲しいところだな。
敵の攻撃を防ぐ壁を俺は想像した。
するとその光景はより現実的なものとなり脳裏に詠唱がすり込まれていく。
「その壁は終末の業火をも通さぬ不可侵の盾、
詠唱を唱えると白光が明かりを消した部屋に満ち、真昼のように明るくなった。
そして眼前に不透明の壁が現れる。
「すげぇな……これ……」
この世界に来たばかりで魔法知識なんて持ち合わせているはずもなかったが、不透明の壁の強さのようなものは、なんとなく感じることが出来た。
すると再び文字が浮かび上がった。
†一度行使した古代魔法はその詠唱の末尾を唱えることで使うことが可能†
なるほど……詠唱要らずというわけか。
咄嗟のときでも俺が知ってさえいればいいわけだ。
ならこの調子でどんどん
一度、行使をしなければ行けないから部屋を壊してしまうような攻撃魔法は現状のままでは再現することは出来ないがな……。
いつか来るだろうクラスメイトとの別れの日までには、脱出を可能とするだけの魔法を再現しておくとしよう。
◆❖◇◇❖◆
「お前達、よく聞け。先程、多数の魔物がこの王都の周りに異常発生した。率いる魔族の姿は見えないが数があまりにも多いため、お前達も動員することとなった」
俺達を呼び出してどこか悲壮な面持ちで言ったのは、指導役である騎士団長のインドラだった。
もちろんこういう機会は俺の想定済み。
願ってもない脱出の好機だ。
創造神エステルと交わした約束を果たすためにこんなところで呑気に勇者生活していられる身分じゃないからな。
クラスメイトが挑むのはこの国の危機。
一方の俺がこれから挑むのは世界の危機なのだから。
「お前達は、既に幾らかの攻撃の手段を知っている。その力がどこまで通用するのかを試せ!」
騎士団長インドラがそう言うと、それまで不安そうな顔をしていたクラスメイト達の顔が活気に満ちた。
そして一部のクラスメイト達の視線が俺に向く。
「おいおい、
「連れてったら肉壁くらいにはなってくれるんじゃなーい?」
「さすがに肉壁は可哀想だろ。
最初に口を開いたのは
それに便乗した女子生徒は、
そして二人を窘めるような口調で話しつつも言葉で侮辱してきたのが、クラスのリーダー的な存在である
周囲を見渡せば幼馴染の詩織以外のほとんどのクラスメイト達が俺に侮蔑の眼差しを向けている。
詩織はただ一人、悲しそうな顔をしていた。
「い……行くよ」
気弱で引っ込み思案のキャラを演じながらそう言った。
でもな?俺がこれから救う物の対象にお前らを入れるつもりは無い。
せいぜい、
この四日間、いやこれまでの間、俺は侮蔑の眼差しに晒されてきた。
でもそれもこれまで、さっさとこんなクラスからはおさらばしようじゃないか。
一つ、心に残る傷をお前達に残してな――――。
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