第37話 p.4
アーシャは頷くと、今度は自身のそばに置いてある籠を指す。
「とりあえず、集めた分を籠に入れろ」
指示に従い、僕は手の中にある冷たい
それでも、僕がAshを籠に収めたのを確認すると、アーシャは、再び顎をしゃくる。
「まずは、Ashを削って、籠に収める作業の繰り返しだ」
「うん」
僕は指示されるまま、熊手のある場所まで戻ると、Ashを削り出す作業を再開した。その様子をしばらく無言で観察していたアーシャは、僕の作業に問題がないことを確認すると、再び口を開いた。
「どうして、さらさらのAshが使えないのか、なんだが……」
「うん」
作業の手は止めずに、僕は、相槌だけで聞いている反応を示す。
「降り積ったばかりのAshには、記憶の残滓がまだ含まれている。だから、温かい」
「記憶の残滓?」
僕は、アーシャの言葉が気になり、顔を上げた。アーシャは、僕の視線を受け止めると、1つ頷く。
「まぁ、いわゆる不純物だ。その不純物を含んだ状態で
アーシャの言葉に、僕は曖昧に頷く。
「う、うん。Ash clockを作るためには、どうして、硬いAshを使わないといけないかは分かったけど……」
「けど?」
僕のはっきりとしない態度に、アーシャは眉根を寄せた。
「さっき、記憶の残滓って言っていたけど、それってどういうこと?……この世界は何なの? Ashは、……Ash clockは、一体何なの?」
僕は声を震わせる。小さな疑問は、口に出した途端、得体の知れない大きな恐怖に変わった。僕の言葉の意味を理解したアーシャは、立ちあがると僕の前へとやってきて、大きな体を小さく丸めた。
「お前の気持ち、なんとなく分かるぞ。たぶん、ずっと昔に、俺も同じようなことを思ったからな。でもこの世界は、お前が思う程、怖い場所でも、変な世界でもない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます