第64話 渡部部長の末路

 ブチっ


 「クソ! 切られた!!」


 先ほどまで浅羽と通話をしていた彼。

 

 彼は社長自らスカウトした人材をなんの確認も取らず、彼の弁明を無視し活動休止までし、ラピスベリーの副社長にいいように利用され、会社の技術を渡すつもりであった。


 それを枚田に露見され、今危機的状況に陥っている。

 今は操り人形のように扱われていた浅羽にも見捨てられ、社長からの処遇を待つ身である。


 「ど、どうすれば……このままだと降格……最悪クビになる可能性も……」

 

 どうすることもなくブルブルと醜い体を震わせ、親指の先端を齧りまくっている渡部。


 そんな彼の元に人がきた。


 「わ、渡部部長……“豪堂社長(ごうどう しゃちょう)がお呼びです。」


 裁きの時が来た。



 ****



 「………はははは、枚田くんが教えてくれなければ大変なことになっていたよ」

 「も、申し訳ございませんでした……」

 「謝られたところでなんだがな……」


 渡部は社長室の椅子に座る剛堂社長の前で頭を下げていた。


 「……聞いておこう。なぜ向井くんをクビにした? 彼はぐらぶるダクションの配信者の中でも一番勢いあったじゃないか。なぜだ? 答えろ」


 威圧がぱない。ヤクザの前に引き渡されたような情景が頭の中でよぎった。


 「そ、その……知らなかったんです! 社長のお気に入「私のお気に入りとかそんなのどうでもいいんだよ゛!?」す、すみません!」


 だめだ。殺される。今すぐにでも指を切ってここから脱したい! ……いや! やっぱ指切りもや!


 「え、えっと……うちの配信者より大手のラピスベリーとのコネクトが切れないことを優先しました……」

 「……君はぐらぶるダクションのトップとしての自覚さえはあるのかぁ゛!? 君はラピスベリー側の人間なのかあ゛!? 同じぐらぶるダクションで働く向井くんを信じなかったのはなぜだぁ゛!?」

 

 恐怖で全てを話してしまう……口を閉ざすなんて、社長の前ではできなかった。


 「信じる以前に゛……美味しい話が彼女から来たので乗ってしまいましだぁ……」

 「美味しい話って……我々の武器を売ってる時点で完全に裏があると気づかないのか……ハァ」

 「申し訳ございません!!」


 完全に呆れている豪堂社長。無理もない、まさか後先も考えることができないバカな奴が自分の会社にいるは疎か、部長を務めていたのだ。

 このバカのせいで危うく、自分達の武器を明け渡すことになっていたのだから。

 

 「……人事部も見直さなければならないな。」

 「あ、あの……私はこれからどうなるのでしょう?」


 長時間の説教に耐えきれずアホ狸は自分の処分の急かす言葉を放った。本当にバカである。


 「ほぉ〜? そうかそうか君はそんなに私の気分を損ねたいかーーーーー」

 「い、い、いえ! そうわけでは!!!!」


 豪堂社長は額に手を置き天を仰いだ。完全に呆れている。そんな姿を見て察したのだろう。

 自分の愚かさに。


 「君はクビだ!!!!」

 

 や、やっぱり……これから私はどうすればぁぁぁぁぁあ!!!!


 「と勢いで言いたいのだがな……」


 あ、あれ? 言い“たい”ってことは……クビじゃない!!!???

 よっしゃぁぁぁぁぁぁあああ!!! やはりそうですよね!? 俺ほどの人材をクビなんかにしないよな!? 

 ウヒャぁ〜わかってるわ〜この社長!


 有頂天になっている渡部。内心安堵に満ち溢れている彼に豪堂社長は会心の一撃を告げた。


 「君は“警察に通報した”」


 















 「へ? 通報?」


 え、このヤクザは何を言っているんだ? 通報なんてして警察に捕まるのは外見的にはあなたでは?


 「君がもし、本当に我々のメタバース技術をラピスベリーに渡していたら確実にエターナルに害をもたらしただろう。

 だから“背任罪”として通報した。もう警察もこっちに向かっている」


 背任罪とは、そのままの意味。

 刑法に規定された犯罪類型の一つ。他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときに成立し、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処せられる。


 そして“未遂も罰せられる”。


 今回枚田が調べ上げたものが証拠として完璧すぎるものだ。

 

 



 もう? 向かってる? 警察? こいつは何を言ってるんだ? 

 

 うっすら聞こえた警報らしい音を聞きすぐに社長の後方にある窓を覗いた。


 外にはパトカーが数台泊まっており、そこから何人もの警察官がこのエターナル株式会社に入ってきていた。


 「君をクビするだけなら手っ取り早い……だがな……君をクビで終わらすなんて生ぬるい。お前に潰された向井くんに申し訳がたたないんだよ。

 お前は罪の意識を持ち、反省しろ」

 「ま、待ってください!? や、やりすぎですよ!! 私がもしこのまま捕まったら! それこそ会社に泥を!!」

 「別にいい。これは私としてのけじめでもある。……向井くんを潰してしまったわけでもあるからな」


 長々と話していると警察が入ってきた。

 そのまま渡部を連れて行ってもらった。


 「………ふぅ……とりあえず処分は終わったな。これからのマスコミ対応が大変だな」

 



 ーーーーーーーーーーーー


  

 渡部終了のお知らせ〜終了のお知らせ〜


 最爽は話進めていくうちに終了のお知らせをしようと考えてます。


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 本当に皆さんの応援のおかげです!

 これからも頑張ります!!!

 

 





 

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