第60話 小平の制裁

 *小平奈緒*



 「別に鎮火させなくて良いのでは」

 「………は?」


 机に突っ伏していた浅羽副社長があんぐりした表情で顔を上げてきた。


 いや、もう無理でしょ。これ鎮火するとか。


 「もう無理ですよね? この鎮火。配信中に異性の声が入ったとかなら、お父さん、お兄さん、とか対応できますけどもうそれとは異次元の炎上ですよ? 逆にどうやったら鎮火できると思ってるんですか?」

 「ぐぎっ!?」


 確信をつかれた浅羽はまた項垂れた。

 いや、もう無理ですよね? お前も思いついてないから私たちに提案求めてるんだろ? 


 「諦めるしかなくないですか?」

 「黙りなさい! あなたはことの重大さを理解してない!」


 なんか逆上して語り出しました。どうしましょう……ここで全てを明かすのはまだ早いですね。

 もう少し様子を見ましょう♪


 「そうです! あなたの言う通り今回の炎上は異次元です! 会社を巻き込んでいます!!」


 ギリッと江東の方を言いながら話す浅羽。あーあー江東さん苦笑いしかしてねぇー


 「異次元すぎて事例がありません! どう対処すればいいかも!」

 

 そりゃな。隠蔽バレって本当に異次元だよ。アホだよ。


 「個人のミスなら契約切るだけで済みます!」


 ミスしたら契約切るだけって……そう言う使い捨てみたいな考えがね……


 「けど今回は隠蔽に加担した私たちにも飛び火しています! ラピスベリーの名誉は守らなくてはいけません! だから考えてください!」


 もう限界だ。こんな不毛なやり取り。わたしから何も発してないけど……今からはしっかり有意義なやり取りも始めよう。


 一拍置く。スマホの画面を見せながら告げる。


 「今回の炎上を引き起こしたのはわたしです。“計画していたのもね」

 「……は?」


 2弾目浅羽の「は?」いただきました〜

 

 1弾目と同様、あんぐり顔で面を上げた浅羽。そんな彼女に映る光景とは……“あるアカウント”のツウィッター画面。


 「こ、こだいら……!?」


 浅羽は机の横に置いていたスマホを勢いよく手に取り調べる。


 「あなただったのね……この炎上を引き起こしたのは……小平奈緒!?」

 「だからそういっているでしょ? わざわざ画録してずっと待機してたんですよ? この現場を抑えるために」


 【こだいら】のアカウントに一つだけツウィートされている最爽の切り抜きを流しながら答える。


 「な、なんでそんなことを……」

 「決まっているでしょ? 理不尽に消された向井くんのためです。それに……やらかしたこいつが配信していて、向井くんができていないこの現状を変えたいからです!!」


 小平は向井が顔出し配信者として活動しているのは知らない。

 だからなのだろう。向井が配信できていないこの現状を認められないのだろう。


 「……今からでもツウィートを消していただけな……「ない! これをするためだけにこのアカウントは作ったんです」


 この安直でまんまの【こだいら】は本当に適当に作ったアカウント。命名時間1秒という快挙である。


 「……!?……いいんですか小平さん? 今回の隠蔽バレは私たちラピスベリーにだけでなく“ぐらぶるダクション”にも影響があるのでは!?」

 「!?」


 浅羽はこう言いたいのだろう。隠蔽に加担したのはそちらも同じでは? と。

 

 しかしそれは、浅羽にとって1番の悪手となる。


 「なんでそうなるんですか? 私たちぐらぶるダクションは“そちらから”向井くんが最爽の配信する場所で勝手に配信していた……と聞きました。だからそれ相応の対応として狡噛レンの活動休止を発表しました。

 何で我々ぐらぶるダクションにも影響があると? こちらはこちらで謝罪のツウィートもさせていただきましたが?」


 浅羽は焦りすぎてやらかした。ぐらぶるダクションの部長との“契約”は小平は知らない。

 ぐらぶるダクションにも影響があるってのは筋違いな返しなのだ。

 なんなら小平に色々とぐらぶるダクションに根回ししていることを自分で暴露したのと同義である。


 「え、えっと……」

 「……あなたのその発言も気になりはしますが、そちらは私の“役目”ではないと思いますのでスルーします」


 かなりのことを滑らしたのを見逃してくれるというのでホッとした浅羽。

 

 だかそれは束の間の安心だった。


 「こちらでラピスベリーの謝罪ツウィートの台本は考えております。ま、完全に非を認める文面となっておりますのでラピスベリーの評価は落ちるでしょうが」

 「そ、それは!?「もう諦めろや」「……」


 小平の渾身の「諦めろや」を喰らった浅羽は素直に小平のいう台本をそのままツウィートした。

 そこにはオフコラボを詳細、最爽の言動……など全てが書かれていた。

 全てを書くことは文字数制限により一つのツウィートでは完結しないため、メモ機能で書いたのをスクリーンショットし写真として投稿した。

 その写真にはしっかりと副社長の浅羽のサインがしてあった。


 ・最爽エリーの炎上

 ・向井雄馬の冤罪発覚

 ・オフコラボ事件の全容公開

 ・ラピスベリー側の謝罪


 こうして小平の制裁は終わった。



 ****


 「やりましたね。小平さん」

 「いぇーい!」


 制裁が終わり、私たちは3人でファミレスに来ていた!

 ぷはぁ〜! 思いが晴れて飲むのは美味しい!!!


 「あの〜……私まだ全然把握できてないんですが〜」


 あ、そっか。秦李さんにはとりあえず配信しとけしかいってませんでした!


 「見たまんまだよ? 私のやりたいことできたって感じ」

 「そのできた理由とどうしてできたか知りたいんよ! たまたまなの!?」

 「いや、たまたまじゃないよ。必然的に起こした出来事だよ!」


 私は佐川さんと顔を合わした。なんかにやけちゃう///

 すると佐川さんは意気揚々に私の代わりに話した。


 「今回の江東さんの暴露は必然です! そう誘導しましたから!」

 「誘導?」

 「そうです! 彼女はハマったら自分の世界に没入する癖がある! だから没入すれば勝手にポロッと言うと思ったんです! 私との会議とかでも向井さんを卑下する言葉を何回も吐いてました」

 「クソっすね」

 「なので今回のコラボは江東さんが


 ・没入するような企画! 

 ・連想で向井さんとのコラボの話題を出す可能性がある企画!


 この2種を兼ね備える“恋バナ”っていうのを考えました!」

 「なるほど」


 佐川さんに話を聞く限り、最爽は向井くんをガチのガチ恋勢らしかったので恋バナが有効だと思いました!!


 「後は彼女が暴露するのを待つだけ! だったっす!」

 「暴露した瞬間、掘り出せるところまで掘り出させて佐川さんが切り抜き編集してくれたんだ! すんごい早かったよ!」


 今回の暴露切り抜きが多く広まったのは、“編集の速さ”もあると思う。速攻で切り抜いて投稿までが早かったから多くのリスナーの熱を覚ますことなく拡散できた。

 

 「佐川さんの編集技術さまさまだよ〜!!」

 「いや〜それしか取り柄がないので〜えへへへ/// 小平さんも最後ビシッと決めてカッコよかったっす!」

 「えへへへそれほどでも〜////」

 「待って待って! なんも知らない状態で瞬時に名前を引き出した私もすごくな〜い!?」

 「「た、た、確かに!?」」


 なんも計画を教えてなかったのに、一番欲しかった狡噛レンの名前を引き出してくれた秦李さんも神ガカッテイル!!


 「「「みんなの力が合わさっての勝利だぁ〜!!」」」



 *浅羽副会長*



 「クソがぁあ゛!!」


 バッン!!

 

 おもっくそ重い台パンをする浅羽。サ○ヤンの◯ワも驚く台パンである。


 先ほど言われてツウィートのリプ欄はアレに荒れまくっている。

 わざわざ荒らす場所を設けた感じだ。


 「……仕方ない。切り替えよう……まだ“全部”がバレたわけじゃないんだ……まだ舞える」


 深刻そうに目がガン決まってる浅羽のもとに着信がきた。


 「なんでバレてんだよぉぉお゛!?」


 バァぁぁぁぁッン!!!


 さっきとは比にならない台パンの威力。


 また新しい苦悩の種が芽吹いたようだ。話は少し遡る……


 ーーーーーーーーーーーー



次回は枚田のざまぁに入ります!


 昨日更新できずすみませんm(_ _)m

この作品で1番書きたかったざまぁ編で、めっちゃモチベは上がってるんですが、「この設定であってるよな?」「え、どうしてたっけ?」みたいなことでいろいろ考えながら書いてたら日付跨いでました〜\(^o^)/


1日で書ききれないことがございますので、更新がなかったら察してくださいm(_ _)m(出来れば近況ノートに更新今日ないってやります)

ご理解とご協力の方をお願いします。そしてここまで読んでくれてる方々本当にありがとうございます!! 精一杯頑張ります!


 

 


 

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