第56話 事故コラボ配信(前編)
*江東響*
「ガチだるすぎ」
今日は配信。それも興味のない相手とのコラボ配信。ハァ〜ガチだるい。
ほんとにやる気が起きない。マジで早く帰りたいわ。
「えーと誰だっけ? 今日やる配信者」
興味ないからもう記憶にないよ。調べる気もないしな。まーなんとかなるでしょ。
すんごい軽い気持ちでラピスベリーに入った。
これが地獄への第一歩。着々と歩んでいることを知らずに気だるそうに……
****
「改めて説明するっす。今日は鮫島ガブさんとのコラボっす」
へー、今日は鮫島って人とか。初耳だわ。どんな底辺ライバーだよ。
本当にやる気ないわ。ま、引き立て役にでもしたるか。引き立て役でも底辺なら嬉しいでしょ。
「んで、今日の配信内容は“恋バナ”っす!」
「恋バナ!? 何それ!?」
楽しそーじゃん! 配信でそんなことしていいんや。ええやんええやん……ちょっとはやる気出したるか。
「“楽しんでくださいっすよ”。“本音っすよ”」
「当たり前じゃん! 本音で話さないと意味ないでしょ?」
いや〜コラボはめんどくさかったけど、テンションアゲアゲよ〜!!
「ちゃんと鮫島ってやつ恋バナできんの? 心配だわ〜」
「まーまーもう時間過ぎてるんで早くっす!!」
「せっかちだな」
ゆーて30分じゃん。早い方だよ。
そのあと佐川と別れて、配信室へと入った。
佐川がニヤッと不敵な笑みを浮かべたのは知る由もない。今は“恋バナ”のことでいっぱいいっぱいのようだから。
****
「みんなを幸せで包み込む〜最爽エリーだよ〜!」
《こんエリー!!》《こんエリー》《今日も可愛いよぉぉぉお!!》《幸せ感じにきたヨォぉ!!》
「今日はね〜告知してた通りコラボ配信だよ!」
《とうとうか》《エリーも新しく前を向くんだね!》《あんなことが起きなたのに……泣ける》《俺も前を向うかな》
気持ち悪。どんな目線やねんカス。お前らは金さえ飛ばしとけばいいんだよ。
コラボ配信だと一つのチャンネルが得するからって、スパチャ機能オフって決まりあるし……だからあまりコラボはしたくないんだよ……
『おめぇーら!! 姉貴がやってきたぞ〜!!』
《おっすクソマロ職人》《今日もクソマロ読んできた?》《クソマロ作るならガブちゃんだな》《なんかもうしきたりできとるな》《ぐらぶるダクションちょっと色々あったけど、ガブちゃんらはなんも悪くないからな》《それな》《見てて楽しいしな》《最初またぐらぶるダクションかよって思ったけど、今ではめっちゃしてほしいまである》
『変なしきたりやめてもらえるか!?笑 めっちゃ不本意なんだが!? あとコラボ望んでくれてありがとうな!!』
なんだよクソマロ職人って。案外有名なんかこいつ? ま、どうでもいいや。あたしは早く恋バナしてんだよ!
「んで、今日はどんなコラボをするのかな〜?」
『どうなことをするんですかー? こちとらなんも聞いてないんよ』
は? お前からのコラボ依頼だろ? お前がしっかり進行しろよ。使えな。
「もう! 忘れたの〜!? こ・い・ば・な! 今日は“恋バナ”だよ!!!!」
『こ、恋バナ……?』
「そうそう! 今日は本音で恋バナしていくよ〜!! エイエイ! オ〜〜!!」
『オ〜?』
なんかノリ弱いけど、徐々に慣れるでしょ。久々の恋バナだ!! 楽しむぞ〜!!
「まず鮫……ガブってどんな男がタイプなの〜??」
『タイプか〜うちはしっかりと自分の全てを受け入れてくれる人かな』
「そんなかたっ苦しいの無しでさ〜! ぶっちゃけどうよ!? 顔とかの好み!!」
《なんか面白いな笑》《推しの好み知れるってことか〜》《現実突きつけられるなーw》《なんかエリーいつものエリーじゃないw》
恋バナするのに夢中でコメント欄など見ずに続ける最爽。
彼女は夢中になるとコメント欄など見ないのが普通なんだ。
『顔は特に求めてないですねー顔良くても性格悪かったら嫌じゃないですか。エリーさんはどうな……「高身長、イケメン、高収入、イケボ」はや!?』
《バカ流暢に出てきたなw》《アイドルのセリフじゃね〜笑》《なんかギャップあっていいな〜》《こういうのもなんかいい》《これがギャップ萌えか〜》
そのあとも最爽と鮫島は恋バナをし続けた。今までの恋愛、自分の恋愛観、男のどこを見ている、などぶっちゃけた本音を話し合った。
リスナーはアイドル枠の最爽エリーの恋愛観などを知れてかなり楽しんで見ているようだ。アイドル枠の最爽エリーだからこそアイドルらしからぬ言動がギャプ萌えを引き出している。
「マジで出会い系はやめた方がいいよ。みんな加工で盛ってるから。あんま信じない方がいいよ」
『出会い系やってるんですか!?!?』
《おい、アイドルどうしたww》《なんかごく普通の女の子って感じしかしないw》《今のエリーめっちゃ好きだ〜!!》
最爽にガチ恋している人はかなりショックを受けているだろう。だが、面白さの方で考えたリスナーには好感触。最高の一面を見せれた。
だがしかし、彼女はヒートアップしすぎてしまった。最爽の性格は“自己中”、“わがまま”、“気分屋”。
そして……“思ったことをすぐ口に”したり“自分の世界に没入しやすい”。
前の佐川との会議だって、自分の世界に没入してすごい時間をかけた。これが自分の世界に没入しやすい。
して、向井の時だってそうだ。好みの顔、思っていた顔じゃなくても、我慢して何も言わずに配信していたら、もっと違う結果になってたかもしれない。これが思ったらことをすぐ口にするということ。
思ったことをすぐくちにするってことは“気を緩めれば”ポロッとこぼしてしまう”ということでもある。
それが“隠していることも”。
「あ、あとね! 出会い系で思い出したんだけど、あたし前、めっちゃ好きな声のVtuberがいてね。ガチ恋しちゃってオフコラボ申請したんよ! けどさ〜いざ対面してみると全然タイプの顔じゃなかったんよ! んで、めっちゃ気分萎え落ちしたわ!!」
配信中であるにも関わらず、熱中して“自分の世界に入り込み”配信していることを忘れた。
隠していることも、恋バナで気が緩んでしまい“ポロッとこぼしてしまう”。
全て彼女の性格が引き起こした事故である。
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一気にスパート!
明日は日曜で休みなので、月曜に事故配信を終わらせます。
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