第15話 リッチとの闘い

 俺達は大墳墓の中に入った。そこはまるでピラミッドのような、巨大な建造物になっていたのである。


「ますます、不気味な雰囲気になってきましたね」


 エステルは表情を強張らせる。


「あ、ああ……その通りだな。そういえば、エステル。お願いがあるんだが……」


「な、なんでしょう、カゲト様」


「俺には相手のステータスを読み取れるスキル『解析(アナライズ)』があるんだ。仲間の事を、俺はもっと知らなきゃいけないと思うんだ。だからもし問題なかったら、『解析(アナライズ)』で君のステータスを見せてはくれないか?」


「え、ええ……勿論構いませんが」


「ありがとう、エステル」


 俺は早速、『解析(アナライズ)』のスキルでエステルのステータス及びスキルの類を分析する。

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エステル・リンドブルグ 16歳 女 レベル:30


職業:『剣聖』


HP:300


MP:250


SP:300


攻撃力:300


防御力:300


素早さ:300


魔法力:250


魔法耐性:250


運:300


装備:ミスリルの剣 ※攻撃力+50  ミスリルの鎧※防御力+50


スキル:『攻撃力上昇大』『守備力上昇大』『素早さ上昇大』『精神状態異常無効化中』(上位レベルの状態異常は無効化できないが、それ以下は凡そ無効化)『剣の頂きへと至れし者』※ありとあらゆる剣技を理論上は極める事ができる。全剣技習得可能スキル。『聖剣装備可能』※聖剣などの特殊装備を装備できる。ただし暗黒属性の剣は装備できない。『闘気』※HP30以下で自動発動。全ステータスが向上する。


技スキル:聖光覇斬剣【敵全体に聖属性の大ダメージ】※使用SP50以下の技同様 紅蓮覇王剣【敵全体に炎属性の大ダメージ】水玉覇王剣【敵全体に水属性の大ダメージ】風王覇斬剣【敵全体に風属性の大ダメージ】雷神覇斬剣【敵全体に雷属性の大ダメージ】


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さ、流石は『剣聖』という称号を得ている事もあって、申し分のないレベルと装備。それからスキルを持っていた。近接戦闘や肉弾戦においては問題なく、闘う事ができそうだ。だが、タイプ的に前衛職業に分類される彼女は魔法戦闘を得意としない上に、魔法に対する適正が高くない。


 近接戦闘及び肉弾戦においては隙がない彼女でも、魔法や魔法戦闘に弱点があると言えた。


 だが、LVもステータスも高い彼女は十二分に戦力になりうると言えた。少なくとも現段階では俺の方が圧倒的にLVも低い為、下手をすると俺の方が彼女の足を引っ張りかねない。


「いかがでしたでしょうか? カゲト様」


「あ、ああ……流石、剣聖と言われるだけの事はあるな。頼もしい限りだよ」


「カゲト様のお力になれそうで良かったです」


 エステルはそう言って、微笑んだ。俺こそ、エステルの足を引っ張らないように、気を引き締めていかなければならないと心に誓った。


 俺達は大墳墓内の探索を進める。


 ――その時の事であった。


 高台に、不気味なオーラが集中していくのを感じた。暗黒のオーラの中から、一体のアンデッドが姿を現したのだ。

 黒いローブを羽織った、不気味なアンデッド。解析(アナライズ)など使わなくても、瞬時に察する事ができる。今まで闘ってきたゾンビやスケルトンとは比べ物にならないような、格の違うハイレベルなアンデッドであるという事は、見た瞬間に理解する事ができた。

 それほどまでにそのアンデッドは不吉な闇のオーラを放っていたのである。


 間違いない。あれがリッチだ。


「貴様達、何用だ……なぜ、我が根城に足を踏み入れた。墓荒らしか? 墓荒らしの代償は高くつくぞ。何せ、代価は貴様達の命なのだからな。クックック」

 

 リッチは笑みを浮かべる。


「お前がリッチか?」


「左様だ。私がリッチだ。この大墳墓の主である。貴様達はあれか、金の為に何でもやると言う、愚かな人間達の集まり——冒険者とかいう奴か? この前もその冒険者達が墓荒らしにやってきたが、命カラガラ逃げ出していったぞ。クックック」


 間違いない。あの時、酒場であった冒険者の連中だ。リッチと闘ったが、尻尾をまいて逃げ出してきたみたいな事をあいつ等は言っていたな。


「俺達は冒険者ではないが……同じようなものだ。俺達は単に自分達の私利私欲を満たす為に、お前を倒しに来たんだからな」


 俺は剣を構える。リッチを倒す事で得られる経験値。そして金(ゴールド)。もしかしたら得られるかもしれないレアアイテム。俺達が……少なくとも俺が欲している物はそういった類のものだ。冒険者と大差ない。私利私欲の為に命をかける。そういう愚かな連中と同じ程度の存在だった。


「愚かな人間達よ。その罪、命を持って償うがよい」


 リッチの力により、その場には幾体ものゾンビとスケルトンが出現する。


「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」


『『『カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ』』』


「行くぞ、エステル」


「は、はい! カゲト様!」


 こうして、俺達と大墳墓の主——リッチとの闘いが始まったのであった。



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