Re:verse Chronicle【 リバース クロニクル】

空見 青

序章・四皇族の伝説

 月の輝く静かな夜のこと。就寝前の一時、子供はベッドの上で母の腕に抱かれ、

本を読み聞かせてもらっていた。母親が語る物語を子供は興味深い様子で静かに聞

いていた。それは、こんな物語であった。


『むかしむかし、大陸に四つの大きな国がありました。それぞれの王様が国を治め

ていて、人々は平和に暮らしていました。しかし、悪魔が現われたのです。悪魔は

魔物たちを生み出し、人々を恐怖に陥れました。その危機に立ち向かったのが、あ

る国の王子でした。王子は幼い頃から剣術と魔法を学び、他の三つの国の王子たち

と共に悪魔に立ち向かったのです。王子たちは力を合わせ、悪魔を封印することに

成功しました。それから、再び平和な世界に戻り、人々は安心して暮らしました。

王子たちはすべての国から祝福され、この話が今にも語り継がれているのです』

「ねぇ、母上。その話ウソだよ」

 子供は物語を最後まで聞き終えると、その大きな瞳で母親の顔を見上げて言っ

た。

「あら、どうして?」

 母親は毛布をそっとかけ直しながら尋ねた。

「だって、この王子たちは竜を退治したり、洞窟で宝物を発見したりして大冒険し

てる。僕なんか外にも滅多に出してもらえないのに」

「……ギュジー、争いの世はもう終わったのよ。今はもう平和なの。あなたが戦う

必要は無いのよ。あなたは将来の為にお城でお勉強なさい」

「ねぇ、この話は本当なの? 僕はこの王子みたいに旅をしたいよ」

「ギュジー……」

 母親はそっと子供の頭を撫でると、穏やかな微笑を向けた。

「もう、お休みなさい」

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