暗い静寂の中、何かを叩きつける不穏な音だけが、小さな家の中を繰り返し響いている。

 

 ガスッ、ガスッ……


 俺は何度も何度もその鈍器を振り下ろしていた。まるで狂ったように。

 もう、砕けるような音はしなくなり、変わりに、ぐちゃぐちゃという湿り気のある不快な音だけがするようになっていた。畳も着物も手も、すべてが真っ赤に染まっている。ようやく俺は、その腕を止めた。

 眼下にあるのは、原型を留めない程に頭部がひしゃげた死体。まるで、身体の上に中身をぶち撒けた石榴がくっ付いているようだ。頭蓋骨は砕け、脳の中身が飛び出し、血と脳漿があたりに飛び散っている。横たわる死体を前にして、俺は荒い息を整える。

 やった。ついに殺った。

 血のついた着物は焼き、凶器は床下に埋め、畳は用意してある新しいものに取り変えよう。あとは、死体を川に投げ捨て、山神の祟りに見せかければいい。そうすれば、すべて完了する。この村の村人たちは、山神の存在を盲信している。誰も俺を疑いもしないだろう。

 何故なら、俺たちは仲の良い双子の兄弟だから。

 ――いや、"だった"から。兄弟二人きりで生きてきて、その片割れを亡くした、誰

もがそのような同情の眼差しすら向けるだろう。

 俺は死体を毛布でくるんだ。夜が更けたら、裏口から死体を運ぶつもりだ。

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