第七話 謎多きステータス

「ステータス、オープン!」


 俺は、期待を胸に自分のステータスを表示した。



 ~~~~~~


 <廻神 進(えがみ しん)>


 ・役職 ???

 ・職業 未開放

 ・スキル 解呪リフレッシュ(ある特定の状態異常を治す)


 レベル1/10 次のレベルまでの必要経験値1

 体力  1/10

 打撃力 1/10

 防御力 1/10

 魔力  1/10 

 瞬発力 1/10


 ~~~~~~


「「…………」」

「…………」


 しばらくの間、俺たち三人の思考が停止したのか、誰も話さない。


「「ぷっ、ぎゃははは!!!」」


 二人は、我慢できなくなったのか、吹き出すように笑い出した。


「う、嘘だろ……」

「「ぎゃはははは!!!」」


 二人が笑っている中、俺はただ絶望していた。



 全ての能力値が『1』だ。そんなことって、ありえるのか?

 しかも、最大値が『10』ってことは、いくら頑張っても強くなれないじゃないか。

 それに、スキルが状態異常回復って、何もできねぇじゃねぇか……



「あ、あぁ、あ……」


 俺は頭の中が真っ白になり、思考が停止する。

 すると、優羽ゆうが俺に話しかけてきた。


「全部の能力値が『1』って、弱すぎでしょ! しかも、最大値が『10』だよ!」


 全ての能力値が『1』だと言っても、普通の人間よりかは優れている。

 しかし、その差はほぼないに等しい。

 そして、ハンターに認定された時から、この能力値が自身の力として発動されるため、今の俺は女子の中でも特に力の無かった優羽ゆうにも力負けするだろう。


「これって、本当なのか?」

「表示にミスは無いだろうね」


 俺はこのステータスに納得ができずにいた。

 そして、俺のステータスには二つ、変な部分があった。


「この、『役職 ??? 職業 未開放』ってどういうことなんだ?」


 そう、俺には必ず全員に与えられているはずの役職が表示されていないのだ。

 それなのに、職業まで与えられている。まだ開放はされていないが。


「普通に役職が無いんじゃない? 目立った能力値が無いんだし」

「そんなことってあるのか⁉」


 俺のメンタルは次々に潰されていく。


「そこまでは知らないわよ。あくまでも仮の話よ」

「もしかすると、何かの条件を満たした時に現れるとかあるんじゃないかな?」

「それもあり得るわね。もしかしたら、特別な凄い役職だったりしてね」

「⁉」


 愛人あいとの予測を聞いた俺は、一気に元気を吹き返した。


「それだ!」

「「えっ⁉」」

「俺は、選ばれしハンターで、秘められた力でどんどん強くなっていくんだよ! そして…………」


 そして、勝手な妄想を繰り広げる。

 その妄想は限りなく広げられていき、もの凄い速さで話している。


「それでそれで、」

「もういいわよ!」

「え? まだまだ続きがあるよ?」


 俺は、話を止められたが、まだ話したそうな目で二人に訴えかけるが、二人の目は死んでいた。


「大丈夫だから。それに、ただの可能性だから。しかもほぼありえないわよ」

「僕もそう思うね」

「俺は諦めんぞ!」

「まあ、期待していた方が元気ならそれでいいよ」


 二人は、現実を突きつけるかのように厳しい口調で言う。

 しかし、俺はその希望を諦めなかった。


「お腹が空いたわ。何か食べよー」

「そうですね」

「ちょ、待てってー!」


 二人は、軽く受け流してテーブルに並んでいる食べ物を取りに行った。

 俺は、急いで二人を追いかけて行った。




「んー! おいしぃー!」

「そうだな。それに、バイキングだから、いっぱい食べれるな」

「うん! 最高だよぉー!」

「ん? 愛人あいと、なんでずっとこっち見てんだ?」

「ど、どうして平然としているんだい?」


 俺と優羽ゆうが食事を楽しんでいると、愛人あいとが驚いたような表情でこっちを見ていた。


 ―ガブガブガブ!


 ―ガブガブガブ!


 ―ガブガブガブ!


「ああ、これの事か。いつものことだぞ」


 愛人あいとは、優羽ゆうの食べっぷりを見て驚いているようだ。

 優羽ゆうの目の前には、大量のお皿が積み重ねられていた。


「いや、ただの大食いならわかるんだが、なぜずっと同じものしか食べていないのだ⁉」

「ああ、そのことか。こいつ、かなりの偏食なんだ。意外だろ?」

「偏食のレベルじゃない……」


 俺は、意地の悪い表情で愛人あいとに言った。


 優羽ゆうは、顔もスタイルも性格も良いが、彼氏ができたことがない。

 その理由は、オムライスのみを大量に食べるからである。

 優羽ゆうは、朝、昼、夜、三食とも十皿以上のオムライスで、おやつも三皿以上のオムライスを美味しそうに食べる。

 これを見た優羽ゆうのことが気になっている男子は、すぐに冷めるそうだ。

 愛人あいとも同じだろう。

 これは、小学生の時からなので、俺はもう慣れてしまい、そんなことは気にしない。


「間もなく、ハンター認定会が始まりますので、席についてお待ちください」

「おい、そろそろ終われよ?」

「ウン、ワカッター」


 これ、絶対に聞いてないやつだわ。


 ―ガブガブガブ!


 ―ガブガブガブ!


 ―ガブガブガブ!

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