第20話 山賊だよ、ワンピース 俺は頭領。
バルカ帝国の内乱の元凶バラキ公爵が率いる王弟派が内乱を起こし、国内を二分して王子派貴族達と戦いをしている頃、ナルト王国の王城ではバルカ帝国の内情が報告されていた。
「なんとっ。我が国への侵略を主導したのは、王弟のバラキ公爵だというのだなっ。
その上に敗戦の責任を問われ、内乱を起こしたとは、呆れるばかりじゃ。」
「父上っ、もしバラキ公爵が勝つようなことがあれば、再び我が国を侵略しかねません。
この内乱に乗じて、我が国の軍勢を派兵し、王弟派を討伐致しましょうっ。」
「待たれよトリアス殿下。バルカ帝国は広大な面積を持つ国ですぞ。長期間の戦いになれば、糧秣や兵站の問題があり、我が軍の相当の犠牲を覚悟せねば、なりませぬぞっ。」
「う〜んジル、どうなのかな。我が国は侵略されたままで、帝国の内乱を傍観して、ただ防衛に徹するしかないのかな?」
「
先手必勝、攻撃は最大の防御です。それに、俺達の敵は、王弟派全軍ではありません。
バラキ公爵、一人だけ倒せばいいのです。」
「そうじゃの、ジル。よしわかった、皆の者。
この国を侵略し、数多の国民が犠牲となった仇討ちじゃ。バラキ公爵を排除せよっ。
作戦はトリアスとジルに任せる。シルバラは城で大人しくしておるのじゃぞ。」
「そんなあ、父さま嫌いっ。ジル、なんとか言ってよっ。私だって海賊の姐御なんだから。」
「姫様、確かに王国を救ったのは姫様の功績が大きいですが、戦場に姫様が出向くのはお転婆が過ぎますぞ。ご自重くだされ。」
「うちの海賊の皆んなは、シルバラ姫を姐御と慕って、俺よりシルバラの言うことを聞くからなぁ。必要戦力かも。」
「なによ、絶対必要戦力だわっ。父上、死ぬかも知れない戦場へ行く、ジルと離ればなれにするなんて、一生恨みますからね。」
「うぬぬ。ジルっ、シルバラを頼む。」
✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢
バラキ公爵は、バルカ帝国の中南部を拠点とする貴族で、その領地は海から遥かに遠い内陸にあった。領都の居城の名は、黒バラ城だ。
さすがに隣国との防衛拠点の城だけあって、
二重の堀と三重の防壁に囲まれて、堅固な城となっている。
領地の南西はレムリア王国に接し、南東には魔の森がある。海はというと、北の最短の海岸線でも400kmも離れている。
これでは、船で攻めるのは無理だ。飛行船を使うのは、俺が戦争に使用するなとトランス国王に言っている手前、使う訳にはいかない。
そこで俺はまた、漫画の知識を駆使した。
俺は、今回は『山賊王になるっ。』
「皆んな、今日から俺のことを、
「じゃあ、私のことは、副頭領でお願いね。
でも、ジル。どんな作戦なの?」
じゃんっ『魔物火炎スタンピード大作戦。』
その名のとおり、魔の森から魔物達を追い立てて、バラキ公爵の居城を襲撃するのだ。
参加するのは、トランス王子指揮下のナルトレンジャー部隊500名と、シルバラ王女指揮下の『リザくの一部隊』200名である。
王子のレンジャー部隊は、鉤縄や縄梯子を巧みに使い、城壁を登ったりロープを伝って堀を渡ったりする特殊部隊だ。
対して、シルバラの『リザくの一部隊』は、リザ母さまの侍女や、不埒な男どもを撃退するための護身術を習った門下生の女性達である。
護身術の中に何故か、忍術が入っているのが謎だが、煙玊や火炎玉、撒菱に手裏剣、その上合気道に薙刀まで、身に付けているのだから、女達だけとは言え、あなどれぬ者達なのだ。
作戦を実行するのは、新月の闇夜の日だ。
俺はその準備に、魔の森の中央部の山麓から黒バラ城に向けて巾20mの直線道路を作ることにした。
魔の森の中央部には、山麓の盆地があって、魔牛や魔狼達の群れがいるのだ。
そして、作戦の実行部隊レンジャー部隊と、くの一部隊を、俺の『転移魔法』で運んだ。
一回じゃないよ、それまでは自分一人しか、使ったことがなかったから、最初は10人しか運べず、何回も運んで最後は200人まで運べるようになった。
それから、くの一達には、闇に潜んで秘密裏に出口から城門までの直線に松明を立て、また門に焙烙玉を山と積んでもらった。
レンジャーの隊員達には直線道路に松明を立てることと、魔の森の魔獣の誘導を頼んだ。
合図で松明に点火してもらうと最後に魔牛や魔狼の群れを直線道路に誘導するように盛大に爆竹をばら蒔いてもらう。
すると、およそ500頭の魔牛と200頭の魔狼の群れが直線道路を暴走して、黒バラ城を目指した。途中、何頭かの魔獣熊や地竜が加わったようだが、特に気にしてない。
慌てたのは黒バラ城の警備兵達。闇夜に突然松明の灯りが一直線に現れたかと思うと、もの凄い地響きが聞こえた。そして、魔の森に向いた南門が何か解らない武器で攻撃され、あっという間に吹き飛ばされたのだ。
「公爵様、公爵様っ。起きてくださいっ。夜襲にございます。」
「なんだとぉ、何者だっ。城門を固めて対処しろっ。」
「城門は、既に破られておりますっ、魔獣が、魔獣が、城内になだれ込んで、城兵が次々と倒されて、お逃げください。ここは危険です。」
「どこへ逃げろと言うんじゃ。外は魔獣がいるんじゃろう。」
「天守の、天守の最上階へお逃げください。」
急いで二階の居室から、五階の最上階へ逃げたものの、それは最悪手だった。
最上階には、トリアス王子とレンジャーの兵が待ち受けていたのだ。
慌てて最上階へ掛け登ったバラキ公爵は、すぐにレンジャー達に取り囲まれた。
「初めてお会いする、バラキ公爵。ナルト王国の王子、トリアスと申す。我が国の民を亡き者にしてくれた礼に参った。
最後に何か申すことはあるか。」
「奇襲など、卑怯ではないかっ。」
「ほう、自分が奇襲をしておいて、それを言うか。皆、仇を取れっ。」
バラキ公爵の胸に十数本の槍が突き刺さり、最後にトリアス王子が首を跳ねた。
黒バラ城に突入した魔獣の暴走は、朝が来るとともに次第に治まり、魔獣達は森へと帰って行った。
その夜のうちに、俺は転移魔法でバラキ公爵の首をバカラ帝国の王城の王座へ届けた。
もちろん誰にも知られずに貼り紙を残して。
『この者、罪もないナルト王国の民を殺害した者なり。ナルト王国は、他国を侵略する者を許さない。そのこと忘れるべからず。』
翌朝、王座の見回りに来た侍女が公爵の首と貼り紙を見つけ、悲鳴を上げた。
たちまち、警護の者や宰相が現れて、バラキ公爵本人の首と確認されて大騒ぎとなった。
翌日には、バラキ公爵が黒バラ城において、魔獣の襲撃を受け、その最中、何者かによって殺害されたことがわかった。
黒バラ城の天守閣の最上階に、バラキ公爵の首のない死体が発見されたからだ。
このことが広まると同時に、王弟派の結束は崩れ、次々と降伏が相次いだ。
その後、内乱が終息するとバカラ帝国から、ナルト王国へ使者が遣わされて、侵略の謝罪と賠償の申し出がなされた。
そして、遊牧民のモコウ族が国からの逃亡を余儀なくされ、グランシャリオ領で保護されて領民となった経緯を告げると、敵対した遊牧民であり、各族長は死罪、その系族は遊牧民部族から追放となった。
俺は、バカラ帝国の王城にも罰を課した。
民の暮らしを知らないと、バラキ公爵のような横暴な貴族が生まれるのだと愉し、今後5年間王城の食事を民が食べられる以上のものを食べることを禁じたのだ。もちろん、調味料もだ。
美味しい食事がしたかったら、民が食べられるようにしろとも言った。
拒否するなら、王族を滅ぼして民主主義国家にしようかと思ったけど、受け入れられたので様子を見ることにした。
俺は平和主義者だからね。暴力は嫌いだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます