第16話 リザ母さまの『くの一』無双。
8才になりました。一年ぶりにナルト王国に行く日がやって来ました。でも今回は少し大勢で行くことになりました。
ひっ付き虫と化している妹達の悲しそうな顔を見て、母さまが妹達を連れて俺達と一緒に、ナルト王国に行くと言い出したのです。
一番下のミウも2才になり、トットは4才、セルミナは6才になりました。世話をする侍女達が付き添えば、なんら問題がありません。
同行する侍女達の筆頭は、シルバラの侍女のラフィーネだ。ナルト王国の出身だし、ミウの乳母のヨーダを除けば最年長だからだ。
ヨーダは元々、リザ母さまの乳母だった老婆だけど、母さまの母乳も出るし、哺乳瓶のミルクもあるからと、俺達にとっても祖母のような存在で、母さまが放さなかったんだ。
あと、トットの侍女のレア。好奇心旺盛で活発な赤毛の少女だ。セルミナの侍女は女性騎士のサラ。物静かな美女だが、武術は凄腕とか。
自分より弱い男とは付き合わないし結婚もしないと豪語しているので、行き遅れ確定かも。
そんな侍女達を伴い、興奮し騒ぎ立てる妹達とナルト王国へと向かった。
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ナルト王国のナルト港には、俺達の大型船が接岸できる岸壁ができていた。
その埠頭には、英雄ジルの母や妹達をひと目見ようと、予想以上の大群衆が集まっていた。
王城まで続く馬車道も手を振る人々で溢れていた。
始め、シルバラ王女を歓迎しているものと、思っていた母さまや妹達だが、自分達の名を呼ぶ群衆に、いつしか歓迎されているのだと気がつき、笑顔いっぱいで手を振っている。
王城に着くとナルト王を始め、ベクト宰相、トリアス王子、大臣や貴族達の多数の出迎えを受けた。
「これは、これは、よう来られた。余がシルバラの父、ゴードル • ナルト王じゃ。」
「ジラルディの母のリザベル・グランシャリオにございます。連れて参りましたのは、ジルの妹、セルミナ、トット、ミウにございます。」
「セルミナと申します。」
「トットでちゅっ。」
「ミウは、ミウっ。」
「おお、可愛くて元気が良いの。はははっ。」
「ベクト宰相、国の開拓は順調ですか?」
「
「いったいなんですか、トリアス
「実はな。帝国に占領された時に、裏切って帝国についた北部の貴族の残党が、山中に籠もり盗賊となって北部から中部に散り、領民を襲って食糧を強奪しているんだ。
中部から北部の山岳地帯は広大だしな、なかなか捕捉できないで苦慮している。
あ奴らはあ奴らで、捕まれば裏切者として、処罰を受けるから必死なんだろう。」
一種の山賊かぁ、冬はどうするんだろう。
雪も降るし寒さも厳しいはずだ。山賊にだって妻子達もいるだろうし、いつまでも逃亡生活は苦しいだろうなぁ。
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母さまは、ナルト王国をただ観光するのではなく、戦乱で荒れた村々を慰問したいと言いだした。それで少数の護衛達を引き連れ、北部の東海岸の漁村にやって来た。
この村は、帝国軍が侵攻して来て、村の多数の男達が、戦いで亡くなった村だという。
母さまは、妹達や侍女達を引き連れ、村長に案内されて村外れの丘にある亡くなった人達が葬られている墓碑に献花をして弔った。
「英雄様のお母上さま、わざわざお参りくださり、ありがとうございました。亡くなった者達も国を守れて満足したことでしょう。
それに戦後は、この漁村にも新たな漁や加工が始まり、年々豊かになって来ております。」
「ええ、皆さんが困っていなくて安心したわ。
亡くなった方達の遺族の悲しみは消えないでしょうけど、子供達の未来のためにも頑張ってくださいね。」
そこへ、遠くから叫びながら、若者が駆け込んで来た。
「村長〜っ、てえへんだぁ、山賊が、山賊が現れただぁ〜。」
「どうした。詳しく話さんかっ。」
「山の中に鹿猟に行ってたマギタが、山賊達がこちらに向かってるのを見ただっ。
そんで報せに大急ぎで戻って来ただよ。」
「母さま、俺は村長達と村へ戻ります。母さま達は、ここで隠れていてください。」
「わかったわ。ジル、気を付けてね。」
そう言って、俺は護衛の者達20名の半数を連れて、村へと向かった。
俺達が村へ戻るのと、すれ違いに母さま達のいる墓碑のある丘へ、山賊の一隊30人余りがやって来た。村を見下ろせるこの場所に偵察に来たのだ。
【 リザ視点 】
「リザ様っ、山賊がやってきます。我々が戦いますから、お逃げください。」
護衛隊長がそう言って兵を指揮しています。
けれど、護衛の者は10名足らずで、やって来る山賊は30人余りもいます。
「ラフィーネ、シルバラ、私達も戦うわよ。
サラ、ヨーダ、レア。子供達を護って。」
「「「はい、奥さまっ (義母さま)。」」」
そう言うと同時に、ワンピースの裾を捲くり上げて、頭から一気に脱ぐっ。
『ジャジャーン。』花柄のワンピースの下は、黒のモンペに鎖帷子の『くの一装束』なの。
この日が来るのを待っていたわ。手裏剣の技や居合いの抜刀も磨いて。
あらっ、娘たちが見惚れているわ。きっと、この衣装を欲しがるわね。ミウには、赤装束が良いかしら。セルミナは紺、トットは緑ね。
山賊の先頭の者達が、護衛達に斬り掛かって来たわ。私とラフィーネとシルバラは、小型のボウガンを構え後続の山賊達に射掛けた。
そのボウガンには、ランチャーのように火薬が仕掛けてあるの、山賊達の中で爆裂して一辺に落ちた周辺の数人に傷を負わせた。
おまけに、侍女や子供達までが、パチンコという飛び道具で火薬玊を放っているわ。
直接、当たらなくても山賊達を怯ませるには十分です。
そして私はこの時のために修練した忍者刀を振り翳し、左手で『十字手裏剣』を打ちながら次々と山賊達を切り捨てました。
護衛達と、半数以上の山賊に手傷を負わせたところで、残った山賊達は逃げ帰った。
なるべく殺さないように、でも峰打ちはしないで、肘や脛の筋切りよ。(無外流かな?)
「リザさまっ。無茶をしないでください。領主様やジル様になんて言えば良いのですか。」
護衛隊長が情けない顔で、私を見て来ますが勝ったから良いのです。私の『忍びの技』も、試せました。
「母さま、すごいっ。かっこいいでちゅっ。
母たん、ちゅよい、ちゅよい〜っ。」
娘達は、大興奮です。ヨーダだけは、呆れていますが。
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村へと急いだ俺達は、村外れで様子を伺っている100人余りの山賊達を発見した。
ここは、俺の魔法の出番だ。俺は遠慮なく、最大級の雷魔法を放った。その威力は凄まじく山賊達を囲む周囲2kmに、30分余りも落雷を落とし続けた。過剰攻撃だったかも知れない。
あとには、焼け焦げた草木と感電して身動きのできない瀕死の山賊達が横たわっていた。
「とんでもない威力ですなっ。」
「初めて見ましたが、これ程とは。」
「ジル様、いささかやり過ぎでは。」
「うん、ちょっと過剰だったかも。でもこちらに被害を出したくなかったからさ。」
「まあ、それはそうですが。」
王城へ帰り報告すると、俺と母さまのことはさり気なく伝えたのだけど、護衛の者達がばらしてしまい、陛下も宰相達も唖然としていた。
キャプテン ジルを知っているトリアス
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