制裁するヒト
ドサリと体勢を崩した男に近づく。
「あ~ぁ。せっかくあげたのに」
いつかと同じように固いコンクリと熱い抱擁を交わす男の傍にしゃがみ込むと、頬杖をついて男を眺めた。
可哀想な幼少期、それから相変わらず不幸な今。同情するには充分な材料を持っていた男。だから見ていられなくなって手を貸したのに。
「まぁ、人間なんてこんなもんだよね、やっぱり」
男のそばに転がる黒く淀んだ鈴を拾って立ち上がる。
「さて、次は誰で遊ぼ……いや、誰に与えようかな」
すり、と暗い体躯を寄せる『影』を撫でながら呟いた。路地裏の暗闇に溶けるようにしてその場を後にする。
もうしばらくしたらきっと、3人の親子の死体が見つかって大騒ぎになるだろうけど、そんなこと我々には関係のないこと。
「さ、帰ろうか」
物心ついた時には一緒にいた『影』に手を伸ばす。『影』は嬉しそうにすり寄るとスルリと己の影の中に入り込んだ。
我々だけの楽園へ。神にも人にも拒まれた、捨てモノたちの集落へ。
そうして路地裏からも姿を消した。穏やかな顔をして倒れ伏す男だけを残して。
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