与えたヒト
「人間ってよくわからない生き物」
涙を流しながら静かに手を会わせる人並み。その先で2つ並んだ棺桶と遺影を眺める。
方や数か月前に余命宣告された壮年の男。『娘の結婚式を見れるだけの寿命』を望んだ、父親。
方や友人が余命宣告を受けた壮年の男。『友人が長生きできるように俺の命をあげてくれ』と頼んで来た、よくわからない男。
死にたいから命を奪ってくれ。
生きていたいから永遠の命をくれ。
そういう願いなら掃いて捨てるほど耳にした。けれど特定の月日だけや、誰かのためにという願いは初めてだった。
「本当に、不思議な生き物だよね」
ふらりと葬式場から離れる。沁みついた命のニオイが、今だけはどうしても不快だった。
「まぁでも、次はもっと楽に生きられたら良いね」
振り返りざまに遺影を一瞥する。遺影の中の両名にもう関わることがないよう、そう願いを込めて。
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