水の向こう

@saori19

第1話

私のお肉は美味しくないと思う。

生きていくために、たくさんの薬を飲んでいる。ワクチンも、色々と打っている。生活協同組合では、入荷してくれない肉だと思う。


自律神経がやられていて、少量しか食べられない。食べたいものよりも、栄養最優先の「エサ」だ。

あゝ。日高屋のラーメンを食べたい。トンカツは飲み物とか言ってみたい。


眠るための薬を飲み、起き上がるための薬を飲む。時には、薬を飲んでも起き上がれない。そして、寝すぎた身体は痛くなる。体調がマシな時は、歩いて海を散歩する。すぐそこだけど、なかなか腰が重くて、たまにしか行けない。愚痴ばかり出てくる身体で、私は水の向こうに行く。家の浴槽が入り口の、水の向こうに。


同級生が幼く見える。そんな自分も、生意気な子どもだということもわかっている。生意気な子供の中に埋もれている、1人の生意気な子ども。それに向き合いたくないから、周りを子どもだと思い込んでいるのかな。

彼氏が社会人で、友だちとは行けない場所や世界に連れて行ってくれるのも関係しているのかもしれない。友だちと過ごすのは楽しい。放課後に学校でダラダラ喋り続け、先生に追い出されたり。街中を練り歩いて、ミスドに長居したり。噂話や悩み事や、とにかく、なんでもダラダラと話す。私は、とても欲張り。友だちとも楽しく遊びたいし、彼氏と肌を合わせたい。バイトもしたいし、大学も行きたい。


「あなたは、搾取されていると思う」

ミスドで宿題をしていたら、ヒナコに言われた。

「バイトに来た女子高生と、付き合うなんておかしい」

「あたしから、付き合いたいって言ったんだってば」

「そうだとしても、大人なら断らないとダメだよ。女子高生に告白されて喜ぶ大人なんて、キモい」

「うーん。でも、あたしは断られなくて嬉しかったよ。それに、社会人だけど、そこまで大人でもないし」

「そうだろうけど、、、」

私とヒナコは、いつも意見が合わない。ケンカすることもある。でも、時間が合えばいつもダラダラと過ごす。


10年後、私は今日のことを思い出して自分達の生意気さを懐かしがるのだろう。きっと、毎日が貴重な時間なんだ。

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