19 エピローグ

 理科部の噂に、新しいものが追加された。

 それは、「一組の葉っぱコンビは本当に付き合っている」というものだ。

 本当だから、あたしもミレイも否定しない。そして、そんな態度は学年はおろか学校全体を揺るがしたようだが、こちらにとっては何のことも無い。いつものように、部室でダラダラするのみだ。


「アイリ! やっぱり卒業まで待てない、付き合ってよー!」

「やーだね」


 二組のバカップルは、相も変わらず。ヒロミのポニーテールをアイリがぐいぐいひっぱり、虐めていた。これこそが理科部の光景だ。


「ねーシホ、ちょっと肩揉んでくれない?」

「肩こりか? きっとスマホの使いすぎだぞ」


 三組の姫と騎士も、こんな感じで。シホが肩を揉んでいる間、ハイネはスマホに目を落としていた。SNSに投稿でもしているのだろう。

 あたしとミレイはというと……。


「ねえケイカちゃん、冬休みにどこか行こうよ」

「ええ、ダルい……」

「お付き合いしてるんだから、デートくらいいいじゃない。アイリちゃんとは二人で出かけたくせに」

「あれは文化祭準備の買い出しだ!」

「シホちゃんとも二人で会ってたんでしょう?」

「相談を聞いてもらってただけだから!」


 付き合って以後、ミレイはベタベタとあたしにくっつき、動向を見張るようになった。それはとっても……気持ちいい。彼女の独占欲の強さは、あたしにとってはご褒美のようなものだった。


「クリスマスには絶対に会おうね?」

「あーはいはい」


 あたしの「気の無い」返事。それはもちろん本心じゃない。からかってやっているだけだ。

 いつか、アイリが言っていたことを思い出す。付き合ったら、別れるかもしれないと。それでもいい。あたしは、ミレイを愛することを選んだ。この先、どんな試練が訪れようと、全部ぶちのめしてやる。

 そのくらい、あたしは、ミレイに惚れているのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る