ようこそ、バッドエンドルートへ ~今回はバッドエンドまっしぐらなようなので、代わりに俺がハーレムエンドルートです~

酔いどれ悪魔

プロローグ

プロローグ






「なんで……なんで誰も戻って来ないんだッ!!」


 そう叫び声を上げながら、悲痛な表情をする一人の男。


 戻って来ないのは、全部こっちに来たのは、お前がそういう選択を取り続けたからだというのに。


 自分の事は棚に上げ、他人のせいにする。また間違うつもりだろうか?



 ――――弱っている姿を見せる――――


「頼む、戻って来てくれ……」


 男は顔から怒気が抜け、情けない顔となっていた。媚びるように懇願する姿は、今となっては滑稽でしかない。


 残念だがもう遅い。今更どんなに良い選択をしたところで元の道には戻れない、お前に幸せな結末は訪れない。



「もう、遅いよ。いまさら……無理だよ」


 どこか悲しそうな顔をした、可愛らしい女の子がそう言った。


「あたし達、この人の事が好きだから」


 少し厳しい目を男に向けながら、綺麗な女の子がそう続けた。



 ――――メリットを提示する――――


「俺といればいい思いをさせてやれる!」


 ずっと思っていた事がある。


 なぜこんなに、間違った選択を取り続けられるのかと。


 普通にしていれば普通に幸せになれたのに。途中で選択を変えれば、幸せを取り戻す事だって出来たはずなのに。



「そういうの、いらないです」


 嫌悪感を表情に浮かべた女の子が、目を逸らしながら男に言った。


「最低。ほんとつまらない男」


 すでに興味を失った様子の女の子は、吐き捨てるようにそう続けた。



 ――――声を荒げ威圧する――――


「黙って俺の所に来ればいいんだよッ!!」



 そして更に間違いを重ねる。しかしこれ以上悪くなりようがないほどに落ちてしまっているため、もう何も変わらない。


 彼女達との未来はすでに閉ざされてしまっている。変わるとしたら、彼女達の心象が更に悪くなるという事だけ。



「もう行きましょ」

「…………………」

「なんなのアイツ」

「……さようなら」


「お、おいッ!」



 ――――こうなったら力づく――――


「おいッ! 待てって! 待てって言ってるだろ!?」


 背を向け去ろうとする女性たちを、凶悪な表情をした男が追いかける。


 今度はどんな選択をしたのか……まぁ間違いなく、また間違ったのだろう。


 そんな男から女性達を守るかのように、ずっと成り行きを見守っていたもう一人の男が立ちはだかった。



「どけッ!!」

「退ける訳ないだろ」


「お前さえいなけりゃ……お前さえいなけりゃなァッ!!」


 違う。コイツは勘違いをしている。


「俺がここにいるのは、お前が間違った選択をしてきたせいだ」


 恐らく俺はいなかった。お前が選択を誤らなければ、俺はここにはいなかった。お前にも、彼女達に関わる事もなかった。


 表舞台に出る事もなく、お前達の事を外から見るクラスメイトAで終わっていたんだ。



「なに言ってんだお前ッ!! お前が俺の女達を寝取ったんだろうが!!」

「まだ手は出してないんだけどな……」


 しかし俺はここにいる。お前が間違い続けてきた結果、俺はここにいる。



 俺だって未知の経験だ。大抵の奴は逸れずに真っすぐ進むか、道を逸れてもすぐに軌道修正する奴ばかりだったから。


 ここまで辿り着いたのはお前が初めてだ……って俺はさっきから何を言ってるんだ?


 でも言わずにはいられない。初めて言うから、噛まないようにしないとな。



「もうお前の進む道ルートは確定した。お前はもう他のルートに行く事は出来ない」


 お前には沢山の幸せな道ハッピールートがあったのに。まさかこのルートを選ぶなんてな――――



「ようこそ、バッドエンドルートへ」



 ――――ってだから俺はさっきから何を言ってんだ!?


 ……ああ、いつものデジャブか。

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