第7話 突然の来訪者
「あのぅ……。それって」
女は一瞬何か言いかけて黙ってしまう。
彼女はベット脇にある俺の野球帽を見ている。ずっと昔に元カノからプレゼントされたピンバッチが付いている。デザインはピンクのペンギンであった。
「あっ、ペンギン。お揃いやん」
ペンギンが好きな人に悪いひとはいないとも云ってくれる。偶然の旅先での相席とはいえ、もう少し、彼女と2人で話をしていたかった。
けれど、俺は都会育ちの粋なことを言えるシティボーイではない。そんな俺のやぼ天なところを見逃してくれないだろう。
ところが、意外にも女性の反応は逆だった。田舎育ちの素朴な顔に安心したのだろうか。視線を下に向けながら、彼女は自ら名乗ってくれた。
「わたし、
「学生さんなの? 高校生かと思った」
「まさか。これでも働きながら専門学校に通っているの。わたしには
沙織は動物飼育員になりたいと云う。
「すごいなあ。しっかりしていて」
「全然です」
「お世辞じゃないよ」
「良かったぁ、旅の話し相手がお兄ちゃんみたいな人で」
えっ、ビックリ。ハキハキした女の子だ。慌てて自己紹介をする。
「神崎 浩介、21歳、東京の学生です。こちらこそ、よろしく」
「やっぱり、年上なんだ」
その言葉に沙織も安心して、笑顔が漏れてくる。
額から汗が流れてきた。なんとも不思議な気分となる。さっきまでひとりの方が良い云々……。
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