第1話 東京駅18時

 

 ────まもなく時刻は、18時。

 やっとうだるような猛暑の時が通り過ぎた頃である。季節といえば、遠くに哀愁漂う秋が控えていた。


 俺の名前は神崎 浩介かんざき こうすけ

 都心の狭間にある池袋の街の学生である。


「晴天をく」と云われるレンガ造りのコンコースを駆け抜ける。


 東京駅は次から次へと列車ホームが続く。1番・2番・3番………。

出発まであと3分しかない。急ぐのだ。


 この駅舎にはバブルがはじけた世の中というのに、都会の喧騒を感じさせない、一世紀以上の歴史を誇り、一泊10万円以上のオアシスが潜んでいると耳にする。外観は駅と同じ雰囲気だが、中に入ると廊下まで大理石のホテルと噂が飛んでいる。


 そんな戯言は、夢のような話だ。

仕送りとバイト代に頼る自分には縁がない。


 今夜は学友との飲み会を早めに切り上げ、好みの駅弁、缶ビールを手にすると、10番線ホームへと急いでいた。

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