結び

どうやら、この時所長は気を失ったようだ。


そして、会話が録音されていたことに、桜井里香という女性は気づいていない。


はっきりは聞き取れないが、一度この場所から離れて再び戻ってきた彼女は、携帯で誰かに連絡している様子が録音されていた。

その後は数分間の無言が続き、足音が近づいてくる。

桜井里香はそこで、会話を再開する。


----


...もう、意識ないね。


(女性と思われる声が答える、内容は聞き取れない)


うん、大丈夫。たいして分かっていないみたいだから。


(女性の声からは、かすかに『なまえ』という単語を確認できた)


名刺?もらったけど、おそらく偽名でしょ。


(短い言葉で答える、『心配』または『失敗』だと思われる)


ううん、知世の判断で、よかったと思う。

また探ってくるかもね、うん、でも何もできないだろうし、キンシ植えつけたから、この量だと半年くらいかな?


(短い言葉、まったく聞き取れない)


分かった、先に帰っていていいよ、あたしは適当に誰か助け呼ぶから...


はいはい、また後でね。


----


この後、彼女が誰か助けを呼んできて、その人と話しているタイミングで所長の意識が戻ったようだ。


所長が、この部分の音声を確認していたのか、それは分からない。


桜井里香の『キンシ植えつけたから、この量だと半年くらいかな?』という言葉が、今回の所長の行方不明に関係があるのだろうか?


謎は深まるばかりだが、わたしは、それを調査する気にはなれなかった。(了)

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東江とーゆ @toyutoe

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