モヤモヤ

 ポテトを買って戻るともう優依たちが待っ

 ていた。

 

「なに楽しそうに話してたのー?」

 と優依が言った。

 

「それがさ和希くんすっごく面白くてね、魔

 法にかかっちゃって。」

「えっ?魔法⁉︎」

「うん。そうなの。だからわたしが魔法をと

 いてあげたんだ」

 

 …

 

「へーっ」

 と言いながら優依は、オレの顔をジーっと

 みた。

 

「えっ、何⁉︎」

「べつにー」

 と言ったかと思うとかき氷を黙々と食べ出

 した。

 

 …

 

 それにしてもオレは本当に奈美さんと赤い

 糸で繋がっているのだろうか…。

 

 もう一度糸を引っ張ってみたかったが、ま

 た奈美さんの手が当たってしまったら…

 

 そうなったらと思うと怖くて糸を引っ張る

 ことができなかった。

 

 

 …

 

 オレはいつか優依を忘れて奈美さんと付き

 合うのだろうか。

 優依を忘れることなんてできるのか?

 …

 

 オレは自分のこぶしをギュッと握りしめて

 いた。

 

 

 

 

「この出店通過するまでに、だれか迷子にな

 りそうだね」

 と陵が言った。

 するとすかさず優依が、

「たしかに!なら、わたし陵くんのバックの

 紐つかんでもいい?」

 なんて言い出した。

 

 …はーっ⁉︎

 なんでオレのバックじゃねーんだよ。

 

 オレはヤケクソになって、

「なら、奈美さんオレのバックつかんで。迷

 子にならないようにきっちりつかんどいた

 方がいいよ」

 と言ってやった。

 

 …あーあ。

 優依のやつ完全に陵に惚れてんじゃん。

 

 オレは陵と優依の後ろ姿をじっとみた。

 

 でも優依…

 陵の好きな人は、奈美さんなんだぞ…

 

 …

 

 あ、そもそも奈美さんは誰か好きな人がい

 るんだろか。

 

 オレは奈美さんに聞いてみた。

「ねー」

「ん?やっぱりヒモつかまれてるの嫌?」

「あ、そうじゃなくて…奈美さんって好きな

 人いるのかなーって」

「あー、うん。一応…でも秘密ね」

 と言われた。

 

 秘密…

 

 

 

 …なるほどな。

 やっぱり好きな人がいるのか。

 

 陵は、もうフラれてるわけだし…

 

 じゃ、優依頑張れば陵の心をつかめるかも

 しれないな。

 

 オレは結果的にフラれるけど、でも優依が

 失恋して泣いてる顔なんて見たくない。

 

 オレは全力で優依を応援しようと誓った。

 

 ⁉︎

 まてよ。

 

 奈美さん好きな人いるって言ってたよな。

 

 まさかオレなわけないし…

 

 やっぱりさっき手があたったのは、偶然だ

 ったんだな。

 

 …じゃオレの赤い糸ってどこでだれと繋が

 ってんだよ。

 

 もしかしてだれとも繋がってなかったりし

 て。

 

 ハハハ…

 

 

 

 

「やっと人混み回避〜‼︎」

 と言いながら陵が伸びをした。

 

「ほんとだねー。おかげさまで迷子にならな

 くてよかった。ヒモつかませてくれてあり

 がと」

 と、優依が陵にお礼を言った。

 

「あ、そろそろ花火の時間だ」

 と奈美さんが言ったとたんに花火がドーン

 となった。

 

 キレイだねー。

 とみんな一斉に空を見上げた。

 

 …でも、オレは花火じゃなくて優依と陵の

 手をしばらく見つめていた。

 

 

 続く。

 

 

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