Everlasting Garden Online

木㳂 佑也

第1話 プロローグ

20XX年。技術の発達によりいくつものVRゲームが発表される中、一つの弱小企業がノリと勢いと悪巧みの採算度外視で作り上げたVRMMOがある。


一体どうやって作ったんだと思うような、世界初の技術を惜しげもなく、大胆に詰め込んだそのゲームを『Everlasting Garden Online』という。


これは、その古参プレイヤー、『竜姫』と呼ばれる少女の物語。


***


「VRMMO?」


とある高校の教室で、私、東雲しののめそらは目の前の少女に訝しげな目を向けた。


「そう! 今日発売されたこのEverlasting Garden Onlineってやつ。二本買ったから一緒にやろう?」


そう言いながら、こっちに詰め寄ってくる少女の名前は、猫田音夢ねむ。私と同じ学校に通う親友だ。


「音夢? ゲームのしすぎで成績落ちて、怒られたのは誰だっけ?」

「ゔっ」

「試験のこと忘れて遊び呆けて、前日に泣きながら範囲聞いてきたのは誰だっけ?」

「ゔゔっ」

「このままだと、おばさんに報告…」

「ゔああああ!? ごめんなさいお願いしますそれだけは!」


今の会話で分かってもらえただろうか。そう、この子の成績を管理しているのは私なのである。彼女の親は出張で忙しく、おばさんから直々にお願いされた。それはさておき。


ゲームは息抜き程度なら問題ないが、やりすぎは禁物。まあ、でも…


「わかった。一緒にしよう」

「え? ほんと!?」

「ただし! 音夢の補修が終わってからね!」


途端に音夢の顔が不機嫌になった。


「え〜」

「え〜、じゃない」


前回の試験も欠点ギリギリだったでしょうが。


「じゃあ、宙は先にやってて」

「なんでよ」

「こういうゲームはね、初日に始めるのが大きなアドバンテージになるの。キャラクリだけでもいいから」


そうやって、なし崩し的に今日やることになってしまうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る